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「グンマー帝国はグルメ王国」”ソロの細道”Vol.10「群馬」~47都道府県一人旅エッセイ~
群馬がネット上で「グンマー帝国」だったり「未開の地グンマー」などと言われるようになったのは果たしていつからだっただろうか。
記憶を紐解けば、2ちゃんねるのスレッドに投稿された文章からだった気がする。
警察官から職質を受けたという日本人離れした風貌を持つ人が、出身を聞かれて「群馬」と答えたところ「ミャンマー」と聞き間違えられた話というところから「グンマー」と呼ぶようになった。
そこからネット上では群馬いじりが始まって、様々なコラ画像が作られ、それらの画像はネット上で事あるごとに利用された。
とはいえ本心から群馬を馬鹿にしているというよりも「愛あるいじり」といった感じだろうか。
私と言えば、数年前に二年ほど毎月高崎に出張をしていた時期があったため、こと高崎については結構マニアックなお店も含めて食べ歩いていた気がする。
高崎市の企画だった「絶メシリスト」というローカルグルメサイトは、「絶やしてしまうには惜しすぎる絶品グルメ「絶メシ」を紹介する高崎市ローカルグルメサイト。食えなくなっても知らねえよ~!」というコンセプトが受け、地元の市民だけではなく観光客やグルメ好きの間で人気となり、ついにはそれを原案にして「絶メシロード」なるTVドラマにもなってしまった。
私もその「絶メシリスト」に掲載されていたお店を複数店舗回ったが、どれも美味しいし雰囲気が良い(古き良き、という感じ)しで気に入っていたのだけれど、今考えてみればあの頃から「群馬って美味しいお店が多いな」なんてことを感じていたのかもしれない。
絶メシリストの掲載店より。かつ丼にカレー。どちらも昭和を感じさせるけれど、美味しかった。
何より食後の”ヨーク”のサービスが嬉しい。
また高崎は「パスタの街」としても知られ、大ボリュームでソースが大量という”高崎パスタ”も独自の進化を遂げている。
このほかにも「とりめし」だったりもあるけれど、キリが無いので高崎の話は以上とするが、これまでの「群馬って美味しいお店多いよね」という漠然としたイメージを確実にする旅があった。
それが、群馬県の西の端の一つである、下仁田町への旅だったのだ。
下仁田町といえば、「下仁田ねぎ」や「下仁田こんにゃく」で有名な街。そんな下仁田町が全国のグルメ好きの注目を集めたのは、あの有名なグルメドラマに登場したからである。
そのドラマこそ、もう10年ほど放送が続く人気となっているテレビ東京「孤独のグルメ」。
私は原作の漫画から好きだったので、もちろんドラマもずっと見続けている。
その大人気ドラマに取り上げられた回が「群馬県甘楽郡下仁田町のタンメンと豚すき焼き」。3年前に放映されたシリーズ。
というわけで、登場したお店の一つである「コロムビア」に到着。
先客は三人組のスーツ姿の方々が一組だが、宴もたけなわのご様子でそろそろ帰り支度のタイミングだろうか。
広い店内の中で僕が案内された席は、ドラマの中で五郎が座った席。
これは偶然ではなく、一人で訪れるもの好きな客は”孤独のグルメファン”に違いない、という配慮だろう。
それは正しいわけだけれど(笑)
単純に五郎と同じ席に座れてご満悦な僕が頼んだのはもちろん、名物の豚すき焼きの一人前コース。そして最初から追加で豚肉&葱に〆のうどんを注文しておく。
もちろんお酒も注文。ビールがいいなと思ったら、なんとオリオンビールの生が!
群馬の西の端まで来てオリオンビールの生を飲めるなんて感激。おつまみの冷奴と共にいただく。あ~、美味しい。
その頃には先客のご一行は既に帰っていて、広い店内を独り占め。
店内は宴会場のような雰囲気で、実際にカラオケが出来そうなミニステージもある。ここで貸し切って宴会したら楽しそう。
そうこうしているうちに運ばれてきたお皿には、すき焼きでお馴染みの豆腐屋ら野菜やらが乗っているわけだが、違うのは豚肉。名産の”下仁田ポーク”を使用しているようだ。
お店の方の説明通り(そしてドラマの五郎と同じように)、まずは葱を全面に敷いて焼く。
冬だとこの葱が名産の下仁田葱になり、物凄く美味しいのだとか。でもこの普通の葱もとても甘くて激ウマだった。
下仁田葱だとどれだけ美味しいんだ?
葱に焦げ目がついたところで豚肉を投入し、そして野菜が続く。良い具合のところで割り下を投入すると、グツグツと香ばしい匂いがしてくる。
いやあ、すき焼きで一番好きな瞬間。
早速豚肉を葱と共に一口。
うまっ!
豚肉の甘みと葱の甘みが割り下と卵にベストマッチ。
なるほど、豚すき焼きはこうなるわけか~。
群馬では上州豚の畜産が盛んということもあって、こうして豚すき焼きが良く食べられるとのことだが、確かに牛肉のすき焼きとはまた違った味わいで、どちらも甲乙つけがたし。
でも葱とのマッチ度だと豚の方がいいかもしれない。
ということは、次回必ず下仁田葱が食べられる時期に再訪しなければ。
こうして美味しく食べてたわけだけれど、追加注文した豚肉と葱を食べるころにはかなり満腹。
そもそも普通のコースでもだいぶボリュームがある。
そして忘れた頃にうどんが運ばれてきて、最後は一人罰ゲームのような様相を呈してしまい、ここ数年で最もお腹が苦しくなったのだった。
でもそれでも心から満足できていたんで、美味しさは間違いなし。
最後にお会計する際、店主に「なんでオリオンビールを置いてるんですか?」と聞いてみたところ、新宿で修業をしていた際に仲の良かった沖縄の知人が居て、その人と飲んでるうちにオリオンビールが大のお気に入りとなり、お店に置くことになったとのこと。
いやあ、そういう気持ちも沖縄人としては嬉しくなるね。
お店から駅までの道すがら、夜風に当たりながら満腹の体を引きずりつつ歩きながら、次は下仁田葱の時期に、必ず再訪しようと心に強く誓ったのだった。
さて、大満足の下仁田だが、この日は残念にも宿泊先を下仁田で取ることができず、わざわざ上信電鉄に乗って富岡市まで戻って宿泊。
下仁田には老舗旅館の常盤館もあり、ここはいつか泊まってみたいところ。
下仁田町に魅せられた私は、翌日のお昼にまた下仁田駅へとやってきた。そして二つのお店をハシゴしたのだ。どれだけ好きなんだ、下仁田!
下仁田町のご当地グルメというのが昨晩食べた下仁田すき焼きと、これから食べる下仁田カツ丼。
かつ丼のご当地グルメは全国色々なところで楽しめるが、下仁田のかつ丼は醤油たれ。方向性としては新潟のかつ丼に近い。というわけで早速食べてみる。
下仁田駅周辺の街並みはそこまで大きいわけではないのだが、飲食店が点在していて、その中で「下仁田カツ丼スタンプラリー」を行っていたりする。
その実施店の中から選んだのが「和洋食堂なべや(鍋屋)」。
お昼11時に開店というのも嬉しいところ。
このお店の名物は、「鍋屋」なのに鍋で出てこないすき焼きのようだが、すき焼きは昨晩も食べたので下仁田カツ丼をいただく。
平日11時過ぎの最初の客になったのだけれど、心地良い接客と、座席近くで携帯電話や電気カミソリ(!)の充電をしているというアットホームさが気に入った(笑)
カツ丼はかなり薄いカツだが、運ばれてきた器のふたを取った瞬間にふわっと香ばしい醤油の香りが。この瞬間にココロオドルわけ。
その感情からの期待に違わずとてもとても美味しいカツだった。
カツのジューシーさは無いけど、美味しいハムカツを味わったときのような幸福感というか。
美味しかった、下仁田カツ丼。若かったら食べ比べのハシゴをするんだけど。
さてその後は温泉に入りたいと思っていたのだが、下仁田駅から歩いていける唯一の温泉が日帰り温泉は休止中ということで断念。
車があれば他にも色々行けるけれど、温泉よりお酒なのでしょうがない。
なのでジオパークに認定されている下仁田ジオパークの構成要素である青岩公園で少しのんびりしつつ、下仁田を後にする前にもう一店舗に立ち寄る。
それが昨晩行ったコロムビアのすぐ隣にある中華料理店で、同じく「孤独のグルメ」に登場したお店、「餃子・タンメン 一番」。
このお店はいわゆる昔ながらの町中華なのだけれど、ドラマ内の餃子とタンメンが美味しそうで。
かつ丼を食べた後にもかかわらず餃子だけでも食べようと寄ったわけ。
孤独のグルメではドラマパート後のミニコーナーで原作者の久住昌之さんが実際にお店へ伺って、本物の店主に話を聞くというのがあるけれど、その時に登場していた修行中の若者が、今は立派にお店を継いでいたのが面白い。
しかもその若者というのが、下仁田町が募集したIターン「地域おこし協力隊」の応募者で、”食の伝承”がテーマのその募集に惹かれて応募し、修業期間を経て今や立派な二代目大将になったということで。
その辺が下仁田町のホームページにも掲載されていた。
13時過ぎの来訪だが、店内はほぼ満席。地元の人たちが多く活気がある。
そんな中で注文した焼き餃子と瓶ビール、最高だ。
二代目の若大将は何と元々は池袋の餃子スタジアムでお店を任されていたという経験の持ち主で、そんな若大将がこの町のソウルフードである「一番の餃子」を受け継いで出してくれる餃子は、ニラ中心に野菜の旨味たっぷりの餡を食べるととろけるような手作りの皮が包んでいる。
必ず注文を受けてから餃子を包むというのは先代からの教え。
皮も多くを保管せず、調理の合間合間に少しずつ皮を作っているのを見ることができる。こういうところが良いのかもしれない。
本当はもう一つの名物であるタンメンも食べたいところだが、さすがにお腹いっぱいで、昨晩のすき焼きで食べ過ぎた反省を活かしたのだった。
そんな下仁田町のグルメ、何と小さな町なのに食べログで3.4前後のお店が多いこと多いこと!
食べログをよく使う人ならわかると思うが、レビュー数がそんなに多くない地方のお店でその点数を取る凄さが分かると思う。
そんなお店がゴロゴロあるというグルメの街、下仁田。
そう、グンマー帝国は正に”グルメ王国”だったのだ!
次は下仁田ネギの時期に、常盤館に泊りがけで何軒もハシゴしたいなあと心に誓い、下仁田を後にした。