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「バスケの街と車窓の眺め」”ソロの細道”Vol.4「秋田」~47都道府県一人旅エッセイ~

むかしな、秋田のくにに、八郎って山男が住んでいたっけもの。

小学校の国語の教科書に載っていた、「八郎潟」の由来を描いた「八郎」という話は、今でも記憶に残っていて、地図で八郎潟を見るたびにそのことを思い出す。

全編にわたって秋田弁で書かれたその話は、沖縄方言を日常的に使っていた私にとって不思議なリズムに思え、何度も音読をして読み返した。

そこから秋田といえば八郎潟、という印象となり、そこから「あきたこまちというお米が美味しい」という知識が増え、「きりたんぽっていう料理があるらしい」という知識も増え・・・。徐々に秋田のイメージが豊かになっていった。

小学校の高学年になった頃にミニバスケットの部活動に精を出すようになり、そこから中学高校と、腰の怪我をするまでの間の6年間はバスケットに夢中だった私は、例のごとく「スラムダンク」にもハマり、その作中に出て来る最強チームのモデルとなった高校の事を畏怖の目で見るようになっていた。

それが、バスケットファンなら知らない人は居ない、「バスケット王国・能代」だったのだ。


高校スポーツには各競技で名門と呼ばれる高校が存在する。

例えば野球で有れば、一昔前だとPL学園や桐蔭学園、中京大中京に智辯和歌山&智弁学園が居るし、サッカーなら帝京に国見、東福岡や市立船橋、今なら青森山田などだろうか。

バスケットにおいて、一時代を築いた最強の名門が、秋田県代表の能代工業高校。もう圧倒的だった。

象徴的なのが、高校バスケにおいての主要大会の一つに「能代カップ」という大会があったのだ。これは文字通り能代市で行われる大会で、高校野球のセンバツのように、各地方で優勝するなど強いチームが招待され、能代工業を交えてカップ戦を行うというもの。

その大会がバスケットの専門誌の表紙を飾ったりもするくらい、「能代カップ」、そして能代工業の存在感が大きかったのだ。

そんな能代工業が生んだスーパースターが、田臥雄太。

田臥は中学生の頃には既にベネッセのCMに出るくらいに注目されていて、そして当然のごとく最強の能代工業に入学。

1年生の頃からスタメンで出場し、そこから3年生まで全ての大会で優勝。史上初の9冠を達成。大学はアメリカに進学して活躍した後、日本でプロ選手となり、そして2004年には日本人初のNBA選手となった。

その後は怪我などもあってNBAでは満足な結果は残せなかったものの、大リーグでの野茂英雄、セリエAでのキングカズと同じく、最高峰のリーグでのパイオニアとして今後も記憶にも記録にも残ると思う。

ちなみに田臥はその後は日本のバスケットリーグの栃木で活躍し、リーグ優勝などにも貢献。チーム名が宇都宮に変わった今でも、10年以上に亘ってチームの中心選手となっている。


「バスケの街・能代」


前段が長くなってしまったが、ここからが本題。

5年ほど前に初めて秋田を訪れた。目的は鉄道ファンの間で大人気のJR五能線を楽しむためだ。

JR五能線は、東能代駅から五所川原駅を通って弘前駅や青森駅までを繋ぐ路線で、線路が日本海の海岸線を走ることから車窓からの絶景が見所。

(一応補足しておくと、”五”所川原~東”能”代で五能線。そして区間も正式には東能代~川部間)

そんな五能線には「リゾートしらかみ」という観光列車が運行していて、それがまた素晴らしい列車なのだ。

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「リゾートしらかみ」自体は秋田駅を出発する。

そして八郎潟駅を通過して東能代駅から五能線へと入り、能代駅では一時停車。なんと乗客によるバスケットボールのフリースロー体験が出来るのだ。


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私はというと、フリースロー体験よりも能代工業の展示物に夢中になってしまい、気付いたらチャレンジできるタイミングを逸してしまった。

停車時間も限りがあるので、フリースローにチャレンジできる人数が決まっていたのだ。これはちょっと心残り。

フリースローを見事に決めるとプレゼントももらえたのだから、若い頃にバスケをしていた身としてはチャレンジしたかったのだけれど。

まあチャレンジはまた次の機会のお楽しみ、だろうか。


五能線の車窓が素晴らしい


さて五能線(リゾートしらかみ)は能代駅を出た後も楽しみが多い。

日本海の海岸線に近い区間ではゆっくりと走行してくれて景色も楽しめるし、津軽三味線の生演奏や、語り部による津軽弁での昔話の朗読もある。

売店では地酒におつまみ、銘菓も楽しめるのだから、飲み鉄には最高だ。

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車窓からは、のどかな水田だったり、海岸線では雄大な日本海が楽しめる。

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もちろん秋田には他にも多くの観光資源はあるし、見所も多いのだけれど、この五能線の楽しみ方というものは、列車好きには最高の観光であり、誰でも一度は体験してほしいものだ。

その際には是非、能代駅でのフリースローにもチャレンジを!


【補足】

ちなみに五能線のハイライトとしては、十二湖観光が挙げられる。住所的には青森県なのでこのエッセイでは補足としたが、素晴らしい景色を堪能できるので合わせてどうぞ。

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ちなみに秋田県内という意味だと、角館の桜や田沢湖がオススメ。

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