反射鏡①
「…そんな夢も、中学の頃には弁護士に変わっていた。理由は簡単、逆転裁判にどハマりしたのがちょうどこの頃。いやいやいや、なんて可愛いんだY(注:置き換えています)は。影響されやす過ぎる。実際、冤罪の人を助けたいな、と黒川拓のようなことを願っていたので、私は実質坂口健太郎ということになる。
だが、人生で唯一嫌いになった人間が法曹界を目指していると知った私は、絶対に進路が被らないようにしたい、と弁護士を諦めた。」
私の通った中高は、以前も書いた通り、超進学校でした。
容姿端麗、勉強も・部活も・恋愛だって一流でこなせてしまう。きっとこの先、何度も新聞やテレビで見るんだろうなぁ、というエリートたち。
もっとも、そんな超進学校の中でも、全員が天才、というわけではありません。1番もいれば、最下位もいます。
この話は、その中で、真ん中より下にいた、私たちの話です。
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今から10年前(!)、中学一年生のクラスで、彼は既に目立つ存在でした。
一番最初の学級委員に、私と共に名乗りをあげた、彼の名は、Y。
上記に引用したブログの、作者です。
彼と私は、同じ文芸部に所属します。
夢は同じ弁護士、本好き、アニメ好き。共通の友人も多く、友人となるのに時間はかかりませんでした。
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中学一年生も後半になると、徐々に学校にも慣れ、人間関係もできてきます。
その中でも、クラスの中心にいたのが、彼でした。
喧嘩っ早く、斜に構え、こもりがちだった私と対照的に、人懐っこい笑顔、会話の引き出しの多さ、打てば響くリアクションを取れる彼。とりたてて容姿端麗でも、勉強ができるわけでもなかった彼ですが、いつもその周りには、人がいました。
そして迎えた二学期。
学級委員は交代制で、彼は立候補を募る前に、誰ともなくの推薦で、指名されました。
私は、「もともとする気は無かったから(笑)」みたいな顔をしながら、誰からも声がかからない現状に、彼に、悔しい気持ちでいっぱいでした。
…こうして書いていると、悔しいというより、もはや当然ですね、、
ともあれ、これで私と彼との立ち位置、性格は書けたと思います。
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中学生男子のしたいこと、ナンバーワンは何でしょう?
…
はい正解。女の子と仲良くなることです。
思い返すと、私の周りで、「カップル」という存在になったのも、彼が初めてでした。
運動部や、その周辺の、華やかなグループならまだしものこと、オタクと小学生から抜け切れていない私の中では、女の子、という存在は、どこまでも遠いものでした。
相手は部活の先輩。
話は勿論するけれど、恋愛どころか、個人的な会話もしたことがない。
女の子と仲良くなる、という過程すら(アニメの中でしか)知らない私にとって、同じ部活内で、しかも友人が付き合っているという事実は、すごく衝撃的でした。
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中学生の間、彼に感じたことは、嫉妬ではなく、畏怖の念でした。
同じ空間でバカ騒ぎするグループでは同じはずなのに、自分にないものを全部持っており、全く知らない異性の世界まで、踏み込んでしまう。
もはや羨ましかったことを覚えています。
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続く。