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反射鏡④

そんな中で、最後のチャンスと考えていたのが、就職活動だった。

私は、大学院に進んだ関係で、彼(=Y)、九重さんより、一年遅い時期での就職。(と、その時は思っていた。実際は、そうでない人もいた。)
そこで、彼らの結果を知ってしまえば、勝てない以上、やる気までなくしてしまうのではないか。そう考えたのも、情報を遮断していた理由だった。

学歴ならまだしも、就職に「勝ち・負け」の視点を持ち込んでるのは、甚だ馬鹿げているし、愚かしい思考なのも、十分に解っています。

勿論、動機も、そのための行動も、全てが彼らへのコンプレックス起源ではありません。
(ここだけは、プライドをもって書きたいのだけれども、飛び級も、私の就職先も、たぶん、それだけのコンプレックスで突破できるほど、低い壁ではない。)
けれど、たぶんこの想いがなければ、今の立ち位置はなかったと、思います。

就職活動は、びっくりするほど上手くいった。
面接は、受けたところ全てに通ったし、第一志望に、人生で初めて、合格した。

こうして、やっと、彼らと向き合う準備ができた。

…向き合う、とはいっても、やったのは、彼のブログと、九重さんのツイッターを、覗いただけなのだけれども。

「…彼らは大学に進んだ後も、一流企業に就職したり、大学院で自分の興味ある分野を究めようとしている。かと思ったら、有名Vtuberになったり、劇団の座長になったり、学生団体の代表としてビジネスコンテストで優勝したり、日本なのに大学で飛び級したり、Webメディアを運営したり、本を出版したり、大学お笑いコンテストで前人未到の成績を出したり……活躍の形は様々だ。」

「…そんな夢も、中学の頃には弁護士に変わっていた。理由は簡単、逆転裁判にどハマりしたのがちょうどこの頃。いやいやいや、なんて可愛いんだY(注:置き換えています)は。影響されやす過ぎる。実際、冤罪の人を助けたいな、と黒川拓のようなことを願っていたので、私は実質坂口健太郎ということになる。

だが、人生で唯一嫌いになった人間が法曹界を目指していると知った私は、絶対に進路が被らないようにしたい、と弁護士を諦めた。」


その時に、この文章を見つけたのだ。

「日本なのに大学で飛び級したり」。恐らく、同期の中で、飛び級したのは、私だけだ。
「人生で唯一嫌いになった人間が法曹界を目指している」。この時期彼と話していて、かつ法曹志望は、私だけだ。

嬉しかった。

彼から見えていたことに。コンプレックスが主題の文で、華々しい、同期の業績に並べてもらえるほどに。進路を変える理由になるほど、痛烈に意識されていたことに。

私の中で、あなたは、畏怖に近い存在だった。ずっと、見えていないと思っていたし、今は、すっかり忘れられている(飲み会のネタにされるくらい?)とまで、思っていた。

文章は、誰かに見られるために存在する。
その意味で、もう5年以上も話をしていない、旧友(と言っていいのだろうか)を、わざわざ、公開のブログに載せるのは、どんな意図があるのか、わからない。

けれど、この文章は、彼から見ても、同じくらい(それ以上に)滑稽だろう。

書きたいことは多分全部書けました。
関係者3人しか出していないけれど、事実誤認や、書かれたくないことがあれば、いつでも言ってください。


いつか、何年後になるかわからないけれど、彼と、お酒が飲みたいなと思います。





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