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緑閃光vol.1 相互評 3

こんばんは。はやいもので、あっという間に7月になりました。なんだかぼけーっとしていても時間はすぎるのだな…と当たり前のことにびっくりしています。

さて、前回までの2回はわたくし桃生から岡本、瑞坂への評をお届けしました。歌会で流れてしまう批評の言葉をじっくり練ることは楽しく厳しい作業でしたが、そのぶん私の脳内がこうなってるということも自分でわかって面白かったです。

そんなわけで、相互評は今回から言い出しっぺの岡本にバトンを渡したいと思います。今回は岡本から、瑞坂への評をお届けします。


瑞坂菜「まさに咲く」評/岡本はな


 子どもらの〈コロナ休暇〉と呼ぶ弥生佳き日に河津桜満開 

作者は、教師など教育関係の仕事であろうか。この春は、新型コロナウイルス感染に伴い、政府が自治体に要請した休校措置で子供たちも翻弄されたが、降ってわいた休みとうけとめた子もいたようだ。2月~3月上旬に咲く河津桜にはそんな人間界の騒動は関係ないが、ソメイヨシノより早咲きの華やかな色濃い紅に、筆者などはウィルスの到来を告げるある種の禍々しさも感じ取ってしまった。いつもの年のように満開となるその日は、本来卒業式などが行われる「佳き日」だったかもしれない。

ととのった詩形に屈託のあとはみえない。まだコロナ感染が後々何をもたらすか、当然未知の段階に詠まれた歌である。

向日葵の色の鞄で出かけたい風花の舞う試験日ならば

風花が舞うのであるから、寒空に雪のちらつく春を待つこころが縮こまるような日。コロナによる休校の最中でも、入学試験などは対策をしつつ予定どおり行われたのであろう。その試験に(監督のためであろうか?)主体は、夏の花の代表である向日葵の色の鞄で出かけるという。早春に季節を先取りしすぎるとも思える夏の黄色の、風花の舞う無彩色の風景との対比が目に染みるようだ。作者の心身は、向日葵のように元気で明るい。

一連は、早春の花の香りが漂ってくるような向日性のある仕上がりとなっている。その中でも、三首目の〈味噌汁と連続テレビ小説の主題歌のある銀婚式の日〉はさりげなく生活の中の節目が詠われていて、一首目の「佳き日」と呼応している。これから花開く明日への期待に満ちた一連である。


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