見知らぬ土地や海外であっても、初めて食べた料理でも
名古屋で入った定食屋で「ころきし」と書かれていて、「ころってなんですか」と訊いたら「温ではなく冷たいの」という意味である、と。近年、冷やしきしめんが増えているらしい。まったく知らなんだ。
ミニころきしとミニ味噌カツ丼のセットを頼む──きしめんの冷やって始めて食べたけれど、もしかしてきしめんってこの暑い季節だというのを勘定に入れずとも、冷やのほうがうまいんでないのかな。好みだ。これまで透明な大阪のうどんみたいな汁の温かいのしか食べたことがなかった。温かいのも勿論うまいけれど、冷やのうまさには驚いた。この店の「ころ」はツユも白醤油ではなく赤みがかったぶっかけに似たスタイル、麺も柔らかホワホワではなくコシがある。
子はエビフライ定食を注文したが、こちらにもミニひやころがついていて、まずはエビフライの大きさに驚く。これまできしめんを見た目で敬遠して食べず嫌いでいた子もひやころはよく食べた。うどんもそばも冷やし中華も冷たい麺類が苦手だというのに不思議だ。旅先という高揚感もあったのか。なお、夜は手羽先を食べに出て、名古屋コーチンをつかっている三本880円もするのをあっという間に完食した。
しかし味噌カツ丼。この店のはきっと平均よりうまいんだと感じるんだが(見知らぬ土地や海外であっても、初めて食べた料理でも、こういうのはなんとなく雰囲気でわかるものだ)、たとえば自分は一般的な卵でとじたカツ丼は週一または二でも食べられるのだけれど、味噌カツ丼は月一がたぶん限度である。三切れ目まではとてもおいしく食べられたが、それ以降は急激に満腹感が押し寄せて、食べ終えたあとは翌日夜まであっさりしたモノしか食べられなくなってしまった。名古屋のひとにとってはどんなだろう。食べ慣れてゆくものなのかしら。
翌日の帰りの駅弁も、子はエビフライと味噌カツのセットを選ぶ。私からすると少し甘過ぎに感じるそれをたいらげて、「名古屋のごはんはおいしいな、住みたいくらいや」とまでいう。食べられるものが多ければ多いほど何処に行っても嬉しい出来事が増える確率が上がるんやで、でもあくまで確率やでと私は心のなかで思う。