夏休みの昼めし(1/n)〈2024年7月マガジン〉
子が夏休みに突入する三日ほど前からスーパーマーケットでチルド食品や冷凍食品などに集中して物色していた。給食がないというのはなかなかの負担である。私の子供時代は、まだ近隣中学校では給食がなかったところもあった。
小学校へ迎えに来ている──必然、低学年が多い──保護者たちのあいだでも「夏休み……憂鬱ですわ」という会話がトピックだった。「自身の」子供時代や学生時代の夏休みを羨ましがったりノスタルジーに浸っている場合ではないのである。
とはいえ保育園時代からもう五年ほど経験してきたわけで、何を用意しておいたほうがいいかだとかはある程度は把握しているし、今では子と歩いて商店街やスーパーへ連れ立っていくのも、以前から比べれば精神的な負担が少なくなってきた。
負担が少なくなったのは「叱れる」という要素が大きい。子に語彙が増え、言葉の理解力が増し、「どうしてそういうことをしてはいけないか」「なぜ道のそこを歩いてはいけないか」「それを触ってはいけない理由は何故か」を伝えることができるようになった。未就学児の頃は、それができず、私は問答無用で頭をコツンともできず、子の無軌道な行動を抱え込んだ。店員やまちのひとに何度も何度も頭を下げた。「停まってるひとの車に触っちゃあかんで」「ひとんチが育ててる草花は弄っちゃあかん」。
いまでは家や冷蔵庫のモノが足りなくなれば朝のそれほど暑くない時間に散歩がてら買い物に行ける。夏休みの児童に足りなくなるのは、勉強時間よりもむしろ身体を動かす機会だと感じている。とにかく毎日のようにYahoo!防災速報から熱中症予防に〈日中の外出は控えて〉と防災アラームが鳴るし、あまりにも陽射しが強すぎて公園にも児童たちが減った。だから私は家に戻ったときいくらエアコンが効いてて快適でも「エアコン最高」などとは口にしない。むしろ「夏やからな、暑いのはあたりまえやな。冬に寒いのと一緒や」などと口にする。「おうちがいちばん!」('There is no place like home!' from『オズの魔法使』)などとは決して口にしないと決めている。むしろ「自分が住んでるまちでな、近所でな、知らない道があるなんて、それは格好悪いことなんや」と口を酸っぱくして言う。学校が始まったら、こんなにゆっくりと時間を気にせずまちを歩くことなんでできやしない。休みだからといって、どこぞのリゾート地やテーマパークやらに行くよりも大切なことなのだと。
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