お好み焼きの味 for here, or to go
「やれやれ・・・こんなものをありがたがるなんて、所詮は俗物と言われてもしかたがないな」
「なんだとォ!!貴様!」
「凸岡さん!なんてことを!」
「俺が本物のお好み焼きを食べさせてやりますよ」
「ほう、いつだ、来週か、どこへ行けばいい」
「いまから俺の家に来てください」
「・・・いまから? 全米でステーキハウスの大チェーンを経営するワシの焼いたお好み焼きを超えることが貴様には、出来らあっ! えっ!? 同じ値段でお好み焼きを!? というわけか!おもしろい」
「粟田さん、俺は少し寄っていくところがある、家の鍵はわたすから先に行っていてくれ」
「(お好み焼きの材料は近所のスーパーでも手に入りそうだけれど、凸岡さんにあれほど本格的な焼き方ができるのかしら・・・)」
「これです」
凸岡は手に小さなビニール袋を下げていた。
「ハーッハッハッ! これは笑止千万! どうやら個人宅にしてはキッチンは立派なようだが、そんな小さな袋に粉や具が入っているというのかね! バカバカしい!」
「280円です。豚玉を用意しました。同じ値段でイカも選べます。300円だせばエビ入りもあります」
「ええっ、こんなに大きなエビが3つも!」
「大阪の人に、お好み焼きのいい店を教えてくれと尋ねたらこう答えるでしょう。ウチの近くならここやな、と」
「近所の店が名店、というわけですな」
「そのとおり。もちろん、観光客が列をなす人気店も数多くあります。俺も入ってみたことがあるが、たしかに美味しい(んぼ)。関西の外から短期で滞在しにきた人に薦めるのはそういう店であってもいいでしょう。しかし大阪の、特に下町に住む人間にとっては、お好み焼きというのは土日の昼に家族の人数分を買ってきて家で食べる軽食という側面もあるのです」
「京獄さん!?」
「どうしました!?」
「・・・いま流れとる『You Are What You Eat』のサントラ・・・この音圧」
「お気づきになられましたか。UKオリジナル盤、68年のファーストプレスです」
「なんちゅうもんを聴かせてくれたんや・・・なんちゅうもんを・・・」
ちいさいだるまちゃんはにこにこしました。ちいさいてんぐちゃんもにこにこしてなかよくあそびましたとさ。