北陸特急乗り納めの旅⑦七尾線・和倉温泉直通の特急サンダーバード17号
2024年3月16日、北陸新幹線金沢~敦賀間が延伸開業する。延伸開業により北陸本線を走る特急列車の運行体系が再編される。サンダーバード、しらさぎは大阪・名古屋~敦賀間の運行となり、敦賀~金沢間はすべて廃止となる。
シリーズ7回目は1日1本だけ運転される七尾線・和倉温泉直通のサンダーバード17号に乗車した(乗車日:2024年3月13日)。
特急サンダーバード17号和倉温泉行き
大阪駅10:34に11番のりば入線してきた。
この日は9両編成で前6両が和倉温泉行き、後側3両は金沢までの運転となった。七尾線内は7両編成以上の列車は入線できないため、9両編成、12両編成の列車は金沢駅で切り離し作業が行われる。そのため、上りのサンダーバード20号は和倉温泉から金沢駅までを6両編成で運転し、金沢駅で3両編成と併合して大阪へ向かう。
10:42に大阪駅を発車した。
新大阪、京都、敦賀、福井、芦原温泉、加賀温泉、金沢、羽咋、七尾、和倉温泉の順に停車する。停車駅の少ない列車ではあるが、福井から金沢間であ芦原温泉と加賀温泉に停車し、小松を通過する風変わりな列車である。
芦原温泉、加賀温泉には12時台に到着できることもあり、午前中に大阪、京都を出発し、昼過ぎから観光を楽しみ、温泉街のホテル・旅館に夕方にチェックインすることを考えれば、ベストな列車とみることも可能である。芦原温泉、加賀温泉への停車はそんな狙いだろうか。サンダーバード号は1日25往復運転しているが、時間帯により停車駅を自在に変化させている点は大変興味深い。
乗車したのは3月13日であり、廃止直前の平日であったが、惜別乗車を兼ねる乗客が多いように思えた(かくいう筆者もその一員であるが)。1日1本の七尾線直通列車であるが、全区間を乗りとおしたのは惜別乗車を除いて、あまり見られなかった。和倉温泉の温泉街は地震発生後も断水等により営業再開に至っていない場所も多いと聞く。
新大阪、京都からの乗車で指定席は70%程度の乗車率であった。
山科から湖西線に入り、敦賀まで約50分で走行する。これまでもレポートしてきた道のりであり詳細は割愛する。
近江塩津で北陸本線と合流し、新深坂トンネルと鳩原峠を越えると右手に北陸新幹線の敦賀車両基地が見えれば敦賀に到着する。なお、北陸新幹線開業後は敦賀駅手前で進路を右に変え、新幹線高架下に設置される特急専用ホームに発着する。在来線乗り場から離れるが、駅構内は乗り換え通路で結ばれる。
京都発車時点で2分程度の遅れが発生していた。
この先金沢駅まで2分程度の遅れで運転された。
敦賀発車後(12:03)は第3セクター「ハピラインふくい」への経営移管となる区間を走行する。
全長13キロの北陸トンネルを130㎞/hで駆け抜けると、南今庄を通過する。南今庄駅は駅前後が直線であることから撮影スポットとしても有名で、無人駅でありながらホームには多くの撮影客がいた。
今庄駅の前後は緩いカーブが続くため、特急列車は少々速度を落として通過する。北陸道の宿場町としても栄えたこの地は歴史的建造物もいくつか見られた。左手から北陸自動車道と並走して湯尾、南条を通過する。南条付近から越前平野が続き、集落も徐々に増えていくのがわかる。南越地方の拠点でも武生、鯖江をゆっくりとした速度で通過する。鯖江を過ぎるとしばらくは直線区間が続くため、特急列車は高速で運転されることが多い。サンダーバードはもとよりしらさぎもこの辺りではスピードを上げている。
越前花堂の手前で右手から北陸新幹線の高架と並走し、12:33頃に福井駅に到着した。
和倉温泉行きは1日1本であり、駅では最後の雄姿を見納めようとするファンの姿があった。
福井を発車すると芦原温泉、加賀温泉の順に停車する。芦原温泉までは引き続き直線区間が続くため、特急らしい俊足ぶりを見せてくれた。
加賀温泉を発車すると小松を通過し金沢に停車する。
少々遅れていた影響もあったのか小松駅は高速で通過した。
手取川を渡り、美川を通過したのち、切り離し作業の準備のため6号車と7号車の車内通り抜けが不可能となった。金沢まで直線が続くため加賀平野を爆走する。加賀笠間の手前で北陸新幹線と出会い金沢まで並走する。加賀笠間ー松任間には西松任駅が設けられるが、こちらは北陸新幹線延伸後、IRいしかわ鉄道への移管後となるため、JR新駅とはならない。白山総合車両基地が右手に見えると、同車両基地に「トレインパーク白山(白山市立高速鉄道ビジターセンター)」の施設が見える。こちらは3月13日に開業した施設で間近に白山総合車両基地内の様子が見られるほか、学びと体験エリアなどを備え新たなスポットして注目されている。加賀笠間駅から徒歩またはシャトルバスでアクセス可能である。
13:20に金沢駅7番乗り場に到着した。後3両の切り離し作業が行われた。
能登半島地震後の七尾線特急列車
2024年1月1日夕方に発生した能登半島地震は能登地方を中心に北陸地方が強い揺れを観測した。鉄道への被害も大きく、七尾線は羽咋付近から架線中の傾き、路盤損傷など大きな被害を被った。比較的被害の少ない津幡寄りから順次運転を再開し、2月15日までに全線で復旧を完了している。
1月3日 高松駅まで再開
1月15日 羽咋駅まで再開
1月22日 七尾駅まで再開、特急サンダーバード、能登かがり火号の1往復が運転再開
2月3日 能登かがり火号全便再開
2月15日 七尾ー和倉温泉 再開(特急能登かがり火の一部は七尾発着)
七尾線内は一部で徐行運転
切り離し作業を終え、13:27に金沢駅を発車した。
津幡まではIRいしかわ鉄道を走行し、津幡から七尾線に入る。
七尾線に入るとすぐに電源切り替え区間を走行する。交流から直流へと切り替わるデッドセクションを通過する。デッドセクション通過時は一時的に空調が停止する。国鉄時代の485系などではデッドセクション通過時車内照明が一時的に消えていたが、JR発足以降の車両では見られない。
中津幡、本津幡、能瀬を通過し、一部の能登かがり火号が停車する宇野気を13:43通過した。宇野気通過時、上りの能登かがり火6号とすれ違った。横山、高松の順に通過すると、しばらく直線区間が続くため速度を上げていく。
羽咋を14:00に到着する。
七尾線はこの先進路を右に変え進んでいく。金丸~能登部間は徐行運転を行ったほかはほぼ通常通りの運行であった。
少しづつ北へ進むにつれて被害の爪痕が残っている家々が見られた。道路では応急復旧工事もなされているのがわかった。
七尾には14:21、3番のりばに到着した。通常、特急列車は改札口に近い1番乗り場を使用するが、ホームの笠石の損壊がひどく復旧工事が行われていた。列車は2番、3番乗り場を使用している。七尾からのと鉄道の普通列車が発着しており、のと鉄道の普通列車は専用ホームから出発する。
七尾市内も地震発生直後は被害の大きさが報道でも目に見えているが、地震から2か月以上が経過しているため、列車内からは被害の爪痕は確認できなかった。七尾線内でも被害が最も大きかったのが七尾ー和倉温泉間で地震発生当時走行中の681系能登かがり火号は同区間で1か月ほど停車したままで、外見上大きな被害はなかったようであるが、当該車両はまもなく廃止となる見込みである。この区間は速度を落として徐行運転となっている。並行する県道は他県からの給水車やパトロール中の警察車両も見かけた。
徐行運転により凡そ6分で和倉温泉に到着した。大阪から3時間48分の旅であった。和倉温泉駅は2本あるホームの1本が復旧工事のため使用停止となっており、2番ホームに到着した。これも地震の影響ということになる。