放送大学 グローバル経済史('18) メモ9 開発の進行と人の移動
昨今の人手不足問題や、個人的に海外出張が続いた時期があったので興味のあるテーマ
シラバス
放送大学 授業科目案内 グローバル経済史('18)
https://www.ouj.ac.jp/hp/kamoku/H30/kyouyou/C/syakai/1639609.html
グローバル経済史(’18)
9 開発の進行と人の移動
19世紀後半-20世紀前半の移民輩出数ではヨーロッパ諸国が5割以上で、イタリア10%イギリス17%である。イギリスでは延べ1700万人が移民しており、多くが新大陸へ渡った。移民にはプッシュ要因(飢饉や紛争など)も重要だが、プル要因もある。移民が期待できる新大陸での平均賃金は祖国の1.5-4倍程度という統計がある。プッシュ要因としてはインド大飢饉やアイルランドのジャガイモ飢饉(人口の2割が餓死)が知られる。
インド系移民の移動先は近世以前からスリランカや東南アジアが多く、この地域のヒンズー教や仏教はその影響であり、後のイスラム化にも影響した。日本への移民も僅かにあり、大仏開眼のため来日した菩提僊那(ぼだいせんな)が知られる。黒人奴隷廃止を受けて近代には大量の移民が年季契約労働者として現れた。中米、レユニオン、モーリシャス、アフリカ、西アジアなどへ移動した。スリランカ、ビルマへは100万人を超える人が移住し主に茶農園、都市労働者、商人などで、マレー半島へは鉄道労働、ゴム園など。北米には7千人のシーク教徒がアメリカ西海岸に移動したが、後にアジア人差別問題で消滅する。復活するのは1970年代からで、現在ではシリコンバレーなどに大規模なコミュニティを見ることが出来る。
ナットゥコッタイチェッティヤール(nc)コミュニティの例。インドの同じ地方出身者のコミュニティで東南アジア各地にある。マレー半島、クアラ・カンサルの例では第2次大戦で日本が来るまでは商店街や農地に積極的な融資を行っていたという統計があり、ゴム栽培などグローバル経済に組み込んでいった。
中国系移民は古くから東南アジアに移民していたが、新大陸での奴隷貿易廃止を受けて労働力の供給源となった。
移民には複数のタイプがある事に注意。開発型移民(クーリー)、ネットワーク型移民(商人)、制度共通化型(:軍人/弁護士/官僚/銀行員など)。ガンジーは弁護士として南アフリカで働いていたことが知られる。
杉原薫先生(総合地球環境学研究所特任教授)インタビュー。アジアは第一次産品の欧米への輸出によってグローバル経済に組み込まれ従属経済化したといわれたが、アジア内(中国、日本)にも消費用工業が発生し、一次産品輸出で購買力が向上した市民に販売された。東南アジア-インド-日本-中国間の域内貿易が1880-1930年代にヨーロッパとくらべても急速に発達し国際分業体制ができあがる。特徴は豊富な人口を背景にした労働集約型工業化であるということで、欧州の機械化による資本集約型工業化と異なっている。
杉原薫「アジア間貿易の形成と構造」(1996)
感想
昨今の人手不足問題や、個人的に海外出張が続いた時期があったので興味のあるテーマです。特にインド系や中国系の方々のキャリア感は気になるところ。新大陸とヨーロッパの給与比較、1.5x-4xの差があったとのことで、やはり稼げるというのは大きな動機付けとなるようです。よくエンジニアの日本とシリコンバレーの給与比較が話題になりますが、同じぐらいのレンジじゃないでしょうか。もちろん新天地ではリスクも大きいのでしょうけど。
あと、労働集約型工業化は何回か出てきますが、機械化ばかりに目が行きがちですが経済発展のルートの一つとして重要そう。