嬉野温泉が生んだ究極のゆるキャラ「お茶っティー」誕生秘話
嬉野温泉 旅館大村屋がお届けする「嬉野温泉 暮らし観光案内所」にようこそ。嬉野温泉に月1で泊まっている、ライターの大塚たくま(@ZuleTakuma)です。4回目となりました。
本日のテーマはこちら。
お茶っティー
嬉野温泉でじわじわと人気を拡大している、ゆるキャラ(?)「お茶っティー」です。前回の滞在時、すでに存在は教えてもらっていました。
嬉野温泉街にある洋服店「アサヒヤ」さんで、グッズが販売されているのを教えてもらったからです。
アサヒヤ店主・赤澤宏さん
最初に教えてもらったときから「なんか気になる」と思っていました。
不揃いなサイズのつぶらな瞳。安定しない線。その割に湯呑みにデカデカと書かれた「茶」という字の安定感。急須から飛び出す熱そうなお茶。危機的な状況の割に穏やかな表情。
見れば見るほど気になってくる「お茶っティー」。ツッコミどころの多さに心がザワつきます。この子はいったいどうやって生まれて、嬉野に根付いているのでしょうか。
「お茶っティー」について、詳しくお話をうかがうため、ぼくは旅館大村屋の北川さんと一緒に、改めて「アサヒヤ」さんへうかがいました。
嬉野温泉街の洋服店「アサヒヤ」
「アサヒヤ」(旭屋)は、1936年に呉服店として創業した、歴史の長い老舗です。現在では婦人服のセレクトショップとなって、営業しています。
有名なブランド品や、手ごろな価格でありながらもトレンドをおさえた洋服、ちょっと大人っぽいおしゃれな子ども服など、充実のラインナップです。
洋服を購入される方には観光客の方も多いとのこと。旅行に行くと、女性は現地で洋服を買うことが多いのだとか。知らなかった。そうなんですね……。
美肌の湯でつるつるになった自分を着飾って、もっと可愛く、もっとオシャレになっちゃいましょう。嬉野温泉に足を運んだ際にはぜひ立ち寄ってみてください。
お茶っティーはどうやって生まれた?
赤澤宏・侑子さんご夫妻とお子さん(妹)
アサヒヤさんの赤澤さんご夫妻に、お茶っティーについて、詳しくお話をうかがいました。
――そもそもお茶っティーはどうやって生まれたんですか?
娘たちと「嬉野のキャラクターをつくるとしたら、どんなのがいいかな?」って、お絵かきしながら話してて。日曜日だったかな。私はお客さんが来たら店に出るって感じで、過ごしていたんですけど。
――そんなことをお子さんと話すんですね。
子どもたちに嬉野を好きになってほしい、興味を持ってほしい、という想いもあったので。
――へー、なんかいいですね。そういうの。
じつは私も考えたことがあって。それがまあ、ひどい絵なんですけど。笑
へえ、どんな絵ですか?
コレなんですけど……。
――ああ、もう、けっこうできてる。笑
これがいわゆる「原画」なわけですね。
わたしがこの絵を娘に見せて、お店に出たんですよ。ちょっとしばらく時間がかかったと思います。で、戻ってきたら、これができあがってたんですよ。
――おお。
お茶っティーだ!
わたしの絵をマネして書いてたんです。でも、こうホラ、私の絵と比べてもこう、なんか……。
うん、たしかに。
――ちょっと、並べてみてもらってもいいですか。
侑子さんの「原画」(左)と娘さん(長女)の「お茶っティー」
なんとも言えない、哀愁が。
――そうですね……。
お子さんが描いたもののほうが、やっぱり、なんかイイですね。
なんかこの、ほのぼのとした感じというか。純粋さというか……。
曖昧なもので圧倒的な差をつけている
こうやって比べると、やっぱり「原画」の方は「キャラクターを生み出してやろう」という感じが見えますね……
――オトナの邪念が透けて見えますね。
お茶っティーは、表情があるんですよね。この表情、いろんな見方ができるんです。物憂げな感じにも見えますしね。
――たしかにお茶っティー、喜怒哀楽のどれにも見える。
どうして「お茶っティー」っていうの?
――「お茶っティー」っていうのも、イイ名前ですよね。
最初は「チャチャマンボ」でいこう、と思ってて……。
チャチャマンボ。
そしたら娘が「いや、お茶っティーがイイ」と。
――おお。
じゃあ、もうこれは「お茶っティー」にしようと思いました。
いやあ、娘さん冴えてますね!
お茶っティーの不思議な魅力を解剖
これ、画材は何を使っているんでしょうか?ペン?
筆ペンのような筆先がやわらかいペンで書いていたと思います。
――それでこの、なんとも言えない線の味が出ているんですね。
湯呑みの「茶」という漢字も娘さんが書かれたんですか?
私が書いたのをマネした書いたんだと思います。
娘さんが書いた「茶」の方が上手ですよね。
娘さん「茶」(左)と侑子さん「茶」(右)
字は得意で、自信を持っていますね。これも1年前に書いた字で……。
お茶っティー、まだ1年でしたか!けっこう皆、「お茶っティー」「お茶っティー」言ってるので、そんな気がしないですね。ぼくら界隈だけかもしれませんけど。
じわじわと広がるお茶っティー人気
――そんなにお茶っティーは人気でしたか。
そうですよ!今や、お茶っティー単独のSNSアカウントもできてますし。
お茶っティーのインスタアカウントも更新中
なんか知らないうちにジワジワ、フォロワーさんも増えているんですよね。最初は身内が気を遣ってフォローしてくださってたんですけど、今は身内以外の方もフォローしてくださってるみたいで……。
――つまり、ピュアなお茶っティーファンが生まれているわけですね。
そうなんです。たとえば、陶芸作家の宮崎さんが気に入ってくださって。素焼きをつくってくれたことがありました。
――うわあ、すごい。めちゃめちゃいいじゃないですかこれ。
可愛い素焼き
――あれ、これは黄色いんですね。お茶っティーは赤いはず……。
そう、これは「そ茶っティー」なので。
――え???「そ茶っティー」???
「お茶っティー」と「そ茶っティー」
――「そ茶っティー」という子もいるんですね。急須が黄色くて、目がキラキラしてる。「粗茶ですが」の「粗茶」が由来ですか?
いや、じつは違って……。「お茶っティー」も「そ茶っティー」も娘たちの名前からとってるんです。
――え!???そうなんですか?
「お茶っティー」は長女の名前から「お」をとりました。「そ茶っティー」は次女が描いたものなので、次女の名前から「そ」をとったんです。
輝く瞳のそ茶っティー
――たまたま「お茶」と「そ茶」だったのか。うーん、奇跡だ……。
ちなみに「お茶っティー」には「うれしの温泉」という記載があるのに、「そ茶っティー」にはないのはどうしてですか?
そ茶っティーには「うれしの温泉」の文字がない
やっぱりどうしても名前が「粗茶」につながってしまうじゃないですか。「うれしの」というと「嬉野茶は粗茶」と誤解されると思って。それで、「そ茶っティー」には文字を抜かしています。全国で一番の嬉野茶が粗茶なわけはないので。
そうそう。だから、そ茶っティーは隠してるんですよね。嬉野を。
姉を立てているんです。そ茶っティーは。
――そ茶っティー……!!健気だ……。でもその奥には確かなプライドがある。
こんなところに姉妹の上下関係が出ているんですね。笑 子どもがつくったキャラクターでこんなに話題が出てくることないですよ。
――たしかに。「かわいいね」で終わりますよね、普通。深い!!
嬉野内でじわじわ広がる人気
最初にできたお茶っティーグッズはバッジでしたっけ。
バッジを最初につくって、サコッシュをつくって。
「だれかこの子をつれていってくれませんか」。笑
サコッシュは、残りあと2個になりました。
――おお~。すごい。
残りわずか
別のお店にも、グッズを納品していますよね。
そうですね。嬉野交流センターと、末廣屋菓子舗さんが「すごくかわいいね~!置くよ~!!」って言ってくださって。で、見に行ったら、レジの横のいい場所に置いてくださってて。
お客さんの目が行くところに、置いてくれてましたね。
――そうなると、もうお客さんと「お茶っティー」のことで、会話が生まれていそうですね。
そうですね。「かわいいね~、って言われたよ」って教えてもらいました。
――ちゃんとキャラの魅力でコミュニケーションを生んでいる。
なにか営業をかけたわけでもないですもんね。
はい、そうですね。あちらから置きたいと言ってくださったので。
自身の魅力で人を動かすお茶っティー
普通、こんなことあります?だいたいのゆるキャラは自治体主導で「置いて、置いて」となんとか盛り上げようとするわけじゃないですか。でも、お茶っティーは自然発生的に広がってきているんです。予算ゼロのキャラクターですよ。
――たしかに。稀有だな、お茶っティー。
そんなお茶っティーにも、嬉野市の公認キャラクターというお話をいただいたことがありまして……。
――ん!??なんですか、その話は。ホント、いろいろ出てくるな、お茶っティー。
行政になびかないお茶っティー
お茶っティーをですね、嬉野市長から「嬉野市公認にしてもいいかなあ、と思うんですけど……」と言っていただいたことがあるんです。
――ええ~!!すごい。
市長の方から!
でも、やっぱりお茶っティーは非公認がいいと思って。非公認のままにしました。非公認ですが、今は市長もあたたかく見守ってくれています。
――なるほど。……なびかなかったんだ、お茶っティー。長いものに巻かれなかったんだ。貫いたんだ。
ロックンロール魂があるんですよ、お茶っティーには。反体制。勲章を返したジョン・レノンみたい。
こんなおだやかな顔してるけど。内に秘めるものがあるんですよ。
「ダレノモノデモナイ……ワタシハワタシ……」
けっこうアツいんですよ、頭の中は。
――そうですね。なにせお茶入ってますしね。
アツい想いが急須からあふれ出しちゃってますもんね。
裸っぽく見えるし、寒そうなんですけど、頭はアツいので。アツいものがあふれてて、火傷しそうな状況ですが、ほほえみは崩さない。
――腹くくってるなぁ。覚悟決まってんだろうな、お茶っティ。なんかぼくもグッズほしくなってきました。
SUZURIでグッズショップをつくりましたので、ぜひそちらの方でお買い求めいただければと思います。
SUZURIにはたくさんのグッズがある
――すごい!!そ茶っティーグッズも!!これはチェックします!!本日は貴重なお話をたくさんお聞かせいただき、ありがとうございました!!
嬉野温泉に行ったらお茶っティーに会いに行こう
嬉野温泉から誕生し、自然に広がりを見せている「お茶っティー」。
一度見ると、なんだか頭に残るふしぎな魅力。ひとの想像力を刺激します。
嬉野温泉へ行ったときには、ぜひお茶っティーに会いに「アサヒヤ」さんに足を運んでみてくださいね。「嬉野温泉 暮らし観光案内所」次回もご期待ください。