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季節変動という魔物
日本には四季に応じて、その地域独特の自然や文化、そしてその時期にもっとも適した生活様式があります。
温泉旅館は、そんな季節や地域の自然や文化そしてその地域の食材を楽しむサービスを提供しています。
しかし、経済の発展スピードが急激に増して、生活様式やカルチャーも非常に短いサイクルで変化しているにも関わらず、四季を動かしている暦は全く変わっていません。
自治体を始め多くの学校や会社などは、月金で稼働して土日で休む。盆と正月はには休暇があって、国が定めた祝日による連休など、多くの人がほぼ同じサイクルで今でも動いています。
そんな中、温泉旅館は、源泉に含まれる様々な鉱物によって体の血行を良くすることで、疲労回復や食欲増進、胃腸病などの効能が掲げられており、地域ロケーションによる影響、海水浴場の近くや山の中にある避暑地など夏に賑わう温泉地も一部あるが、「温泉に浸かってあったまる」という特性上、自ずとその需要は冬場に偏っているところが多い。
それに加えて、日本人のソウルフードでもある「刺身」は、脂が乗っている冬場の方が、断然美味しい。
そうして、多くの人が休む土日祝には疲労回復やレジャーのため多くの需要があるので、月金の低い需要を補うためにも、高い価格を設定をしなければ採算がとれない施設も多い。
その結果、多くのお客様を送り込んで来る旅行会社には大幅値引きやオプションサービスをし、個人客には定価で販売する。
そして時代が変わって、団体需要が無くなり、温泉に行きたい人は高額な温泉旅館の利用から離れて近場の日帰り温泉にシフトする。
温泉旅館には、団体客の利用も少なくなり、土日も高い価格で売れなくなり、借金だけが残る・・・・
日本の温泉旅館の経営が厳しくなった要因は多くあるけれど、多くの経営者を悩ますのは、季節の変動による高需要と低需要があることでのオペレーションの変化への対応、ということです。
という事で、すべてとは言いませんが、温泉旅館を経営不振に誘導するトリガーとなっているのが、この季節変動です。ということになる。
しかし、言うまでもないのですが、この季節変動は一年営業をしていれば概ねわかる事なので、それに応じたサービス設計や人員計画、プロモーションや価格設定など、手を打てる事は山ほどあります。
予め見えている需要に対しての手段を十分に講じていれば、大きく失敗する事はない。当り前の経営判断をしていけば、恐るるに足らず、なのです。
とはいえ、温泉旅館の経営は、家族経営や親族経営がまだまだ多いうえに、温泉地という小さな共同体の中で、風評や評判などにも配慮が必要になることも非常に多いため、自分のところだけ好き勝手に振舞うわけにはいかない、という事情もあります。
いまや、10年ひと昔という言葉も色あせるほど変化が激しい世の中なので、「何に軸を置いて経営をしていくのか最適か」を常に考えていくのが必要なのかと思うところです。