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Gentle Bloom in Solitude

作曲家・石川泰昭さんの新作
『Gentle Bloom in Solitude』

ジャケットを制作させていただきました。
各種ストリーミングサービスにて配信されています。



ピアノ、弦楽器、電子音が混ざったポストクラシカル系のアーティスト活動を軸に、映像作家とのコラボレーション作品、ミュージカル制作、CM、ゲーム音楽制作などにも携わっている石川さん。

フェルトピアノの優しい響きと抑制された抒情性を帯びた旋律のピアノソロ作品の今作。


石川さんは昨年、「突発性難聴」に罹り、耳鳴りが止まらなくなった苦しみの中からこの作品を生んだとのことでした。



以下石川さんのnoteです。


石川さんに初めてお会いしたのは、昨年名古屋のシネマ・スコーレで、白石晃士監督の『愛してる!』を上映していた時のことでした。


舞台挨拶終わりにロビーに出ていたときに声をかけてくださり、映画音楽の作曲をしているのだと話してくださいました。

ちょうどその時、スコーレのロビー棚には、映画のチラシと一緒にDOKUSOマガジンが置かれていたので、私も名刺がわりに、連載している記事をお渡ししました。映画「さかなのこ」の沖田修一監督と、のんさんが表紙の冊子でした。

私がちょうどそこで紹介していたのは、ロウ・イエ監督の『ブラインド・マッサージ』でした。南京の盲人マッサージ院で巻き起こる人間模様を描いた名作です。

石川さんはこのときの文章を気に入ってくださり、きっと何かのシンパシーを感じて、楽曲のジャケットのご依頼をくださったのだと思います。


文章からイラストの依頼が来るのは初めてのことでした。映画館のロビーでのはじまりだというのもなんだか縁を感じます。
とっても嬉しく、有り難いことです。



石川さんは、ご病気の事は私に一切伝えずに、「思うように自由に描いて欲しい」とご依頼くださいました。

本人の口から聞くまで、聞き手はその作品に込められた本当のことは知り得ません。


耳だけの情報を頼りに世界を作り上げていき、
どんな場所でこの音楽を聞きたいか。

どういう気持ちの時にこの音楽に慰められるか。

そこにある音楽を、素直に楽しみ、イメージを組み立てていきました。


静かなところ
誰も踏み入れていない草原だろうか、
はたまた湖の中なのか

耳を澄ませると何処かから生命の気配が聞こえてきて、自分の足もとには言葉はなくとも語りかけてくる無数の時間が揺れている。

生まれては消えてまた生まれる渦巻きの中に自分もいる。こわくない。


あまり賑やかな色にしなかったのは、目に見えているもののさらに奥の下の方にある物語を感じたかったからで、過去と現在の関係を絵の中に落とし込もうとしたのでした。

岩中で途方もない時間をかけて形成される水晶のように
種子が葉を伸ばし花となり土に戻り
また次の種子の栄養になるように

物事の根本にある膨大で静かな時間に耳を傾ける気持ちで、この絵を完成させて石川さんにお渡ししました。


ご病気のことを伺ってから、再びこの曲を聞いてみると、音楽に肉体が伴って全く違う聴こえ方がしてきます。


石川さんが感じていた
孤独な苦しみ、悲しみ、諦念。
今でも闘いは続いていて、そんな中でも、自分自身の心の形にそうように音楽を紡いでいく。

もがきながらも自分にとって光のある方へ、空気のある方へ、確かなものを掴みに行っているように、そう感じるのです。


大切な作品に、絵という形で加わらせていただけて、またそれを構築していく作業というのも、とても意義のある時間でした。音楽を始めとするすべての芸術の持つ力をこれからも信じていきたいと改めて感じました。
お誘いくださった石川さん、本当にありがとうございました。

この音楽を聴いた誰かにとって、その人の悲しみや不安を温め得る、一筋の光となってほしい。少しでも、石川さんの症状が和らぎますように。

祈りを込めて、ここに記します。


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