2024年のベンチャーキャピタリスト奨励賞を受賞しました
このたび、第24回 Japan Venture Awards(以下JVA)にて「ベンチャーキャピタリスト奨励賞」をいただきました。2016年にファンドを立ち上げてから8年、この業界に入ってから13年が経ちました。このような形で評価していただけたことに、心から感謝しています。そして、いつも支えられている家族、FVメンバー、LPの皆様、TORYUMON関係者、全ての関係者の皆様に感謝申し上げます。この場を借りて、これまでを振り返り、私がなぜVCをやっているのか、なぜU25起業家を支援しているのか、などの想いを綴りたいと思います。
起業しやすい環境への進化と感謝
私がこの業界に足を踏み入れたのは2011年でした。シードで投資するVCも数えるほどしかなく、リスクマネーを投じるプレイヤーが少ないゆえに起業がしづらい環境で、当時に比べると、現在の日本は比べ物にならないほど起業しやすい環境になりました。政府の取り組み、スタートアップの成功事例、そしてVC、CVCの組成数の増加など、多くの方々が長年にわたり尽力された成果だと思っています。このような環境が整っていることに、改めて感謝の気持ちを抱いてます。
起業支援の道に進みたいと思った理由
サムライインキュベートとの出会い
私がVCに入りたいと思ったきっかけは、大学時代に出会ったサムライインキュベートの榊原健太郎さんでした。当時、Twitterを眺めていると「できるかできないかではなく、やるかやらないかで世の中を変える!」と熱い言葉を恥ずかしげもなく発信する榊原さんのツイートが目に留まりました。日本にこれほど「起業」を推進する人がいるのかと驚きつつ、その行動力に引き込まれ、注目していました。
当時の私は、起業家インタビューメディアを立ち上げ、多くの起業家の方々からお話を伺い、その魅力を記事として発信する活動をしていました。直接お話を聞く中で、起業家の挑戦や価値観に強く惹かれ、「起業家のカッコよさをもっと多くの人に伝えたい」という気持ちが膨らんでいきました。一方で、GAFAの台頭により、世界の企業ランキングから日本企業が次々と姿を消していく現実に衝撃を受け、日本の将来に危機感を抱くようになりました。
東日本大震災
そんな中、2011年3月11日に発生した東日本大震災を目の当たりにします。「これからの日本はどうなってしまうのか」と不安がさらに募りました。しかし、学生なりの低い解像度ではあれど、希望があるとすれば、日本を良くしていくには日本でベンチャーが増えることだ、という想いが強くなりました。
その後「日本にシリコンバレーを作るんや!」という榊原さんのツイートを見つけ、それが後に天王洲アイルに設立される日本初の起業家向けコワーキングスペース「Samurai Startup Island」となるのですが、まさに関わりたいと思っていたプロジェクトでした。ちょうどその頃発売された『起業のファイナンス』を読み、起業家を取り巻く生態系の重要性を実感していた私は、このプロジェクトに深く共感しました。
サムライでの経験
その後、サムライインキュベートに入社し、4年半にわたって数多くの経験を積ませていただきました。年間200回以上のスタートアップイベントを企画・運営し、広報業務ではWEBメディア、マスメディアとのメディアリレーションを担当。Samurai Venture Summit(SVS)という1,000-2,000人規模のイベントも運営し、スポンサー営業も担当。また、コワーキングスペースの責任者として入居起業家の支援、イスラエル拠点や日本初大企業向けアクセラレーションプログラム事業のゼロからの立ち上げなど、幅広い業務に挑戦しました。この経験を通じて、「できるできないでなく、やるかやらないか」精神のもと、ビジネスをしていく上で自信をつけることができました。
独立した経緯
独立→ファンド設立
サムライインキュベートでの経験を経て、今度はサムライインキュベートの看板でではなく、自分自身が起業家たちの背中を押す存在になりたいという想いが強まりました。ファンドという手段で共にリスクをとり、少しでも起業家を増やす活動がしたい。そうして2016年、F Venturesを設立しました。
なお、独立当初は資金面で苦労しました。LP出資者の会社でアルバイトをさせていただきながら、ファンドを準備をしていた時期もありました。1号ファンドの規模は1.85億円と小さく、管理報酬も限られていたため、生活は決して楽ではなく、ファンド以外の事業でどうにか収入を捻出していました。
両角ならではの支援
私が東京ではなく、地元福岡を拠点に選んだのは、自分ならではの支援がしたい、という思いからでした。いまはシード投資を行う独立系VCが4つもありますが、当時の福岡にはシードに特化したVCがほとんどなく、地方のスタートアップシーンも未成熟でした。また、オンラインMTGツールも浸透していない状態でした。こういった背景の中で、前職での経験を活かし、起業家を増やし、地元に貢献できると確信していました。
キャピタリストに起業経験は必要か
今でもよくSNS上で議論になることがありますが、独立当初も「起業経験がないVCはダメだ」という声がありました。私は必ずしもそうは思いません。
もちろん、起業家を事業面で支援するということは必要だと思います。営業面、資金調達面、広報面、我々にできることは動いていきたいです。そしてメンタルが苦しいときに支えることはできるかと思います。
その他にも、起業経験がなくともできる支援の方法は様々です。一つは、起業家が横同士が相談できる環境を作ること。今では起業家コミュニティもたくさん存在していますが、我々はとくに近い世代が集う場を意識しています。TORYUMONの周りには起業家が育ち、先輩として後輩に指南する場面を多く見ます。タイミー小川さんをはじめ、後輩たちにアドバイスをくれる機会がとても増えています。とくに、イベントなど公式な場ではさすがに言えない、飲み会のような非公式な場でしか聞けない話など、スタートアップを経営するための一次情報を取得することが非常に重要だと思っています。TORYUMONがあるからこそ構築できた関係性で、起業家仲間や先輩がおり、相談ができる。そういった環境づくりをすることも、VCの役目の一つだと思っています。
これが唯一解だとも思っていないですし、我々の特徴の一部ですが、幸いVCやエンジェル投資家の数も顕著に増え、支援のあり方も多様化し、様々な投資家がいる中で、起業家が投資家もコミュニティも選ぶことができるという環境自体がとても恵まれている時代だ、と改めて思います。
タイミーへの投資:ゼロからの挑戦
8年間のファンド運営の中で、たくさんの起業家との出会いがありました。2024年に大型IPOを果たしたタイミー小川さんからは、私が学ばせて頂く機会の方が多く、彼との出会いによってベンチャーキャピタリストとして成長の機会を頂けたと思っています。タイミーへの投資の振り返りは過去のnoteを読んで頂けますと幸いです。
名もなき起業家がスターになっていく過程を間近で見ることができるのは、ベンチャーキャピタリストならではの醍醐味です。この喜びを体験してしまうと、この仕事はやめられません。
一般的に、プロダクトがPMFして会社が急成長していくと、起業家の成長が追いつかなければ、会社としての成長もストップしてしまう。資金調達を重ねる度に別人のように経営者になっていく小川さんを間近に、いつも刺激を受け、身が引き締まる想いでした。
U25起業家支援の背景
私が若い起業家を支援したい理由は、まさに私自身の原体験にあります。
2011年、映画『ソーシャル・ネットワーク』が公開され、若い起業家が世界を変えるという現象が話題になっていました。学生でも起業できる、デジタルネイティブならではの世の中の変え方があるんだ、ということを知りました。
時を同じくして、ベンチャーキャピタルという存在にも、学生時代に初めて触れます。前職のサムライインキュベートの存在を知ったときでした。学生で起業できるということはわかったが、じゃあお金はどうするんだ?と疑問に思っていた矢先に、VCという存在があるんだ、ということを理解しました。
その後、たまたま機会があり、サムライインキュベート榊原さんに拾っていただきました。自分がまさに、榊原さんにインキュベーションされた起業家の1人だと思っています。若い頃からこの世界に入り、こういった経験ができたのは非常に幸運でした。当時の自分のように、TORYUMONをきっかけに、これからの若い人たちにもぜひこの世界に飛び込んでほしいと思っています。
ちなみに、F Venturesの出身者たちは起業家、投資家として注目されている方々が多い、と定評がありますが、インターンの採用・育成もこのような考えのもと行っています。いつも、当時の自分を育てるような感覚でいて、自分は育てるのが好きなんだなと感じています。当時の自分も、エクセルすらまともに使えないような学生でした。挑戦を許容でき、チャンスを提供しやすい場を作っています。この機会に、FV出身者を以下のようにまとめていただきました。(調べるおさんありがとうございます!)
この世界に飛び込むためのチャンスを拡大するために、U25向けスタートアップカンファレンスTORYUMONを日頃開催しており、この世界に入るキッカケを作りたい。そう思って活動しております。(次回は10日後の2024年12月21日(土)に開催予定です。)
最後に
最後に、JVAの受賞は、これまで応援してくださった方々、そして一緒に挑戦してきた起業家の皆さまのおかげです。この賞に恥じないよう、これからも尽力していきます。そして、我々の活動が少しでも日本社会に貢献できれば幸いです。引き続き、起業という選択肢をより多くの人たちに知ってもらいたいと思います。これからもどうぞよろしくお願いいたします。
メンバーの募集
最後の最後に、コミュニティマネージャーを採用しています。単にコミュマネではなく、ゆくゆくはベンチャーキャピタリストとして投資支援業務にも関わりたいという方を積極採用したいと考えていますので、ぜひご興味持っていただいた方は、私のTwitter@ryokadoよりDM頂けますと幸いです!カジュアルに話したい、などでも歓迎です。