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【アドラー心理学ゼミナール(ふりかえりと予習)】ライフタスク

10月19日から早稲田大学エクステンションセンター中野校で「アドラー心理学ゼミナール」の秋講座が開講されます。私は10年前から中野校でアドラー心理学を学び始め、最近はそこでの学びを自分の実践に重ねて記事を書いています。
今日は今年の春に開講された「アドラー心理学ゼミナール」を思い出し、秋講座に備えます。

春講座のふりかえり

春講座は全部で4回開講されました。

 4月「アドラー心理学の理論、概念、技法」
 5月「早期回想とその読み取り:所属とライフスタイル」
 6月「感情とそのしくみ:私的感覚と共通感覚」
 7月「アドラー心理学の実践と応用」

また、そこでの学びを3回に分けてnoteに書きました。
【アドラー心理学ゼミナール1】5つの基本前提
【アドラー心理学ゼミナール2】ライフスタイルをどのように使うか
【アドラー心理学ゼミナール3】感情/支援が支配におちいるとき

この3つの記事を通して私が書いてきたことは「対人援助職にはアドラー心理学が必要である」ということです。私は、障がいのある人たちが利用する社会福祉法人の理事長兼相談支援事業所の相談支援専門員をしています。私の仕事、相談支援業務にアドラー心理学が役立っています

さて、秋講座の講義内容は以下のようにアナウンスされています。

アドラー心理学ゼミナール より良い人生のための理解と実践
 10/19「職場、仕事における問題」
 11/16「交友、遊びにおける問題」
 12/14「パートナー、家族における問題」
 01/18「アイデンティティ、人生の意味の問題」

この内容を見ると、10月、11月、12月の内容は、アドラー心理学の「ライフタスク」という考え方に基づいているといえます。そこで、今日は「ライフタスクを意識した相談支援」について記事を書きます。

ライフタスク(Life Tasks)

アドラー心理学ゼミナールの講師、向後千春先生の著書「幸せな劣等感」では、ライフタスクを次のように説明しています。

この世に生まれてくる限り、この3つのライフタスクから逃れることはできません。それは、まるで「人生から与えられた宿題」のようなものです。

幸せな劣等感

ここでいう3つのライフタスクとは、仕事のタスク (The Work Task)、交友のタスク (The Social Task)、愛のタスク (The Love Task)です。それを向後先生の著書の中では次のように説明されています。

仕事のタスク:職場の上司や同僚との付き合い
交友のタスク:友人たちとの付き合い
愛のタスク:パートナーとの付き合い

アドラーは「人生上のほとんどの悩みは対人関係である」と言っているといわれています。この人生の悩み、それを解決するためにはライフタスクに取り組まなければいけないということです。

さて、このライフタスクが障がいのある方の相談支援とどのように関係するかということについてです。

ライフタスクを意識したサービス等利用計画計画

相談支援業務の一つに「計画相談」というのがあり、サービス等利用計画(以下、計画)を作成します。イメージとしては介護保険におけるケアプランの作成だと思ってください。そこでは、障がいのあるご本人と一緒にその方の人生を組み立てます。しかし、私が担当する方たちのほとんどは、自分で自分の将来を自分で思い描くことが難しい方々ばかりです。そのような方たちの場合、ご本人のライフスタイルを見立てながら、かつご家族の希望を聴きながら計画を立てます。その際、ご家族の希望が強く打ちだされてしまうことがあります。ご家族が希望してくるのは次の3つを探して欲しいというものです。①日中活動先 ②ガイドヘルパー ③グループホーム

私の仕事は、障がいのある方ご本人と福祉サービスを結びつけることだけではありません。ご本人の豊かな暮らし、将来を一緒に設計することが本来の仕事です。しかし、現実問題として、日中の居場所、生活の場(グループホーム)、移動手段(ガイドヘルパー)がなければ、日々の暮らしが成り立ちません。最近は両親共働きという家庭が増えました。そのため、障がいのあるご本人を一人にできないから福祉サービスを使いたいという依頼が多くあります。この依頼に応えるとき、「サービスにつなげる」ことに重点をおきすぎると後から問題が出てきます。そこで、計画を作るときは3つのライフタスクを意識して計画を立てます。

ライフタスクを考えないと…

①仕事のタスク

日中活動先を探して欲しいという依頼、そのときの条件で求められるのは「送迎サービス」と「長時間のサービス提供」がほとんどです。その次に「活動内容」が来ます。日中活動先での人間関係は重視されません。その結果、1ヶ月ほど経つと利用者同士の相性、支援者との相性が原因で活動先に行きたくないという人が出てきます。
日中活動先を決めるにあたり、あらかじめ体験や実習を行います。しかし、それは数日のことであり、それだけでは人間関係に気づくことはできません。1ヶ月が経ち職場での相性が悪いことに気づく、仕事のタスクにつまづいたということです。

②交友のタスク

日中活動に行ったり休日に余暇をすごすためには一緒に行ってくれるガイドヘルパーを探さなければいけません。ここでもサービスにつなげることが優先され、一緒に出掛けるガイドヘルパーとの相性は考慮されません。残念ながら好みでガイドヘルパーを選べるとほど人材は足りていません。気が合わなくても我慢するしかないのが現状です。
また、障がいのあるご本人・利用者とガイドヘルパーでタスクのとらえ方の違いによるトラブルもあります。利用者は一緒に遊びに行ってくれるガイドヘルパーを友達だと思います。そこでガイドヘルパーに個人的なお願いや約束をします。しかし、ガイドヘルパーは仕事です。所属する事業所の許可なく利用者と約束をすることはできません。一方は交友のタスクで、一方は仕事のタスクです。このタスクの違いをじょうずにうめないと信頼関係が崩れます

③愛のタスク

ここでは「家族愛」を考えます。障がいのある方の生活の場、家族と離れて暮らす場としてグループホームがあります。共同生活です。最初は、シェアハウスのような感覚かもしれません。もしくはサードプレイスなのかもしれません。平日はグループホームで暮らし、週末になると実家に帰る方が多くいます。しかし、やがて家族の高齢化に伴い実家に帰れなくなります。また両親が他界します。そうするとグループホームが家族にかわる愛のすみかに変わります。しかし、そこに「家族愛」はありません。入居者同士、おおめにみるということがないということです。
制度上は、いつどこで誰と暮らす、それを選ぶ権利がある、それを保障しなければいけないとされています。しかし、現実には選ぶほど資源がありません。グループホームの中、入居者同士で人間関係が悪くなるときまずいままそこで生活をしなければいけなくなります。グループホームを選ぶときや決めるときは、なにより愛のタスクがだいじです。グループホームは選択肢の少ない愛のタスクです

ライフタスクで見立てる

私が担当させていただいている方の多くに共通することは、自分の人生を予測することが苦手だということです。そのために支援者が見立てをします。それが計画です。その際に、希望や要望だけで見立てることなく、ライフスタイルを尊重する、ライフタスクに取り組むことを予測するといった見立てが必要になります。
福祉サービスはまだまだ充足していません。利用者の皆さんに満足していただく、もしくは後悔させない、そんなサービスを提供するためにアドラー心理学を学ぶことは有効だと思います。

明日、10月19日からアドラー心理学ゼミナールが始まります。


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