晩秋の香り
私の事業所は、事務室の扉を開けると玄関です。その玄関に、臭ってはいけない臭いが充満していました。私は、あわてて玄関のすみずみ、げた箱の靴、一足一足の裏側を見て回りました。10月の終わりのできごとです。
私は、障がいのある人たちが利用する事業所の経営をしています。社会福祉法人の理事長です。しかし、もともとは直接支援をおこなう支援者でした。また、今でも相談業務を中心に直接支援にもかかわっています。障がいのある人たちの支援を仕事にするようになり、35年以上が経ちました。
私が主に在中する法人本部は、日中活動を提供する事業所の中にあります。今日のnoteは、10月の終わりのそこでのできごとです。
玄関に充満する臭い
その日、私は朝からZoom会議で事務室にこもっていました。会議が終わり、事務室を出たときのことです。事務室を出るとそこは、事業所の玄関です。その玄関一面に臭ってはいけない臭いが漂っていました。私たちの仕事には「臭ってはいけない臭い」があります。私は、あわてて臭いの元を探しました。
長いことこの仕事をしていると、さまざまな場面に遭遇します。その中には、臭いにまつわるできごともたくさんあります。それらは、思い出したくない思い出ばかりです。
鼻を効かせて「元」を捜索
私は、玄関に何かいけない物が落ちていないか、鼻を効かせながら探してまわりました。しかし、何も落ちていません。それなのに、臭ってはいけない臭いが充満しています。また、落ちていないからといって、この臭いを放置することはできません。ここで見逃すと大きな惨事に発展します。私は、今までに多くの惨事に遭遇してきました。そこで私は、げた箱の靴を一つひとつ確かめることにしました。
私は、げた箱の端から、靴を一足づつひっくり返して底に何かが付着していないか調べました。げた箱から靴を取り出す瞬間は「黒ひげ危機一髪」に剣を刺すときの心境です。ところがいくら靴をひっくり返しても臭いの元は見つかりません。私が困っていると、玄関の扉が開きました。そのとき、一気に強烈な臭ってはいけない臭いが襲って来ました。それは、目がしばしばするような臭いでした。
玄関の外に出てみると、利用者数名と支援者が座り込んで活動をしていました。それが下の写真です。
晩秋の香りでした
利用者の皆さんが、いただいた銀杏の皮むきをしてくれていました。臭いの元はこれでした。安心しました。晩秋の香りです。あとから、作業してくれていた利用者に話を聞くと、「臭い、もうやらないからね」と言っていました。たいへんな作業をありがとうございました。
今日から11月です。駆け足で冬が近づいて来ています。