デザイナーとして北欧に海外移住を実現したプロセスとこれから
2024年の夏、僕はフィンランドの永住権を取得した。
手にした新しい在住カードに、永住権(Pysyvä oleskelulupa)を示す「P」の文字が刻まれているのを見た瞬間、胸が高鳴った。ついに、移住が現実となり、これまでの不安が吹き飛んだ感覚があった。フィンランドでの生活は6年目を迎え、ようやくこの国に根を下ろしたと感じられた瞬間だった。
僕のフィンランドでの生活は2018年、アールト大学院の修士課程に留学したのがきっかけだ。当初は2年間の修士課程を終えたら日本に帰国するつもりだった。しかし、フィンランドでの生活を通じて、この国で長く暮らしたいかもという気持ちが徐々に芽生えていった。
2020年に修士課程を修了し、幸いにもすぐに就職先が見つかったものの、常にビザの問題がつきまとった。万が一仕事を失った場合、次の就職先が決まらなければフィンランドに住み続けることができなくなるという不安があったからだ。
就労ビザの期限が切れて仕事がなかったら家にSWATの様な武装隊が来て引きずり出されて出国の飛行機に乗せられるのではと、本気で思っていた。最近の政権下では外国人雇用に関する政策が厳しくなる傾向もあり、その懸念はさらに強まっていた。
そういった状況の中で永住権を取得できたことは、まさに肩の荷が下りたような安堵感をもたらしてくれた。これからはビザの期限に縛られることなく、キャリアやライフプランをより自由に、そして柔軟に考えることができるようになったと思う。
この記事では、修士留学から就職、そして永住権取得までの道のりを振り返りながら、僕の海外移住のプロセスを俯瞰し、今後の展望について考えていきたいと思う。自分自身の棚卸しとしても良い機会だと感じている。
アールト大学デザインスクールの修士プログラムに運良く入れた
全てはここから始まったと言っても過言ではない、アールト大学デザインスクールへの修士プログラム留学。
フィンランドについてはほとんど知らなかったが、プログラムへの期待と、未知の国で生活する好奇心に突き動かされて、思い切ってフィンランドへやってきた。
自由度の高い環境で、プロジェクトベースのプログラムで新しい仲間との出会いも多く、そこで得た経験とコネクションは非常に有意義なものとなった。
フィンランドに住むことのメリットとデメリットも少しずつ分かった。
この修士留学の結果として、フィンランドでのキャリアを考えるようになった。
デザイナーとして現地就職がタイミング良くできた
修士課程を修了後、北欧でのキャリアをスタートさせる決断をした僕は、収入を得る必要に迫られた。学費免除で留学できたものの、生活費は日本から持ってきたものを切り崩していたからだ。
幸運にも卒業直後に大学内の研究助手として働き始めることができ、続いてSchibstedに入社、2年後にはABBへ転職した。これまでのキャリアがスムーズに進んだことは、本当に幸運だった。
特に留学前の東京での7年間の経験が大いに役立ち、即戦力としてのポートフォリオを活用できたことが成功の要因の一つだと思う。また、IT業界においてはフィンランド語が必須ではない組織も多いため、言語の壁も比較的少なかったことも、就職に有利に働いた。
留学時代には味わえなかった、フィンランドで働いて生活をする、ということも実際にスタートできた。
プロセスを振り返ってみて
振り返ってみると、最初からフィンランドに移住するつもりは全くなかった。むしろ、現地での生活を送りながら、さまざまな気づきを得る中で、アジャイル(行き当たりばったり)に移住が実現していったと言える。
とはいえ、フィンランドに留学し、仕事を見つけ、永住権を取得するまでの道のりには、いくつかの重要なタイミングでラッキーが重なっていたことに気づく。
今では、自分のスキルを活かし、フィンランドで充実した日々を送っている。そう考えると、その時の運や出会いもまた重要な要素なのかもしれない。
これから
永住権を取得した今、日本とフィンランドの2拠点での生活を現実的に考えれるようになった。フィンランドでの生活は非常に充実していて、今働いている企業にお世話になっている現状には全く不満はない。
むしろフィンランドの福利厚生や働き方のバランスを考えると、ずっとこのままでいたい気持ちさえある。しかし、より広い視点で自分のキャリアを見つめ直すと、これからの働き方や生き方についても少しずつ考えていきたいと思う。
今後は日本とヨーロッパの2拠点での仕事と生活をもっとやってみたい。現在日本の企業1社とデザインのお手伝いさせていただいているが、自分の経験と地の利をもっと活かし、国境を越えた自分のプロジェクトを増やすことにも挑戦したいと思う。
フィンランドでの生活を基盤にしつつ、日本の文化や市場にも引き続き関わりながら、自分のキャリアを国際的に広げることがこれからのざっくりとした大きな目標だ。
幸運にも多くの人のサポートやチャンスを得てここまで来れたので、他の方がもし留学や海外就職・転職に関して助けられることがあればサポートしたい。
まずはフィンランド・北欧・海外への転職や移住を検討されている方で僕が答えられる範囲であればご質問やご相談がいただければと思う:
写真はこの間訪れたブダペストの子供列車。12歳〜15歳くらいの少年少女達が駅員や車内の切符確認などの業務等を行なっている(学校の単位とかもらえるみたい)。悪い意味ではなく、子供たちがプロ意識をもって働いてるのを見るのはなんだか清々しい気持ちになった。
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