【実例付】海外デザイン就職するための英語のカバーレターの書き方
7月も半ばに差し掛かり、ヘルシンキは連日20度前後のちょうど良い気温である。
会社では多くの同僚が7月から丸々1ヶ月間夏期休暇を取っているが、僕は少しズラし、8月に取ることにしたので、まだ働いている。うちの会社で7月に仕事をしている社員は本当に数えられるほどだ。
いつもカレンダーをビッシリ詰めているミーティング等が少ない分、個人的に進めたいリサーチ活動や、figmaでの細かなデザイン作業などが捗っている。社内Slackも静かで他からの邪魔が入らない、こういった集中できる時間があるのも悪くない。
さて、僕は北欧のIT企業でサービスデザイン/UXデザインの仕事をしているのであるが、たまに「海外で仕事したいのだけど、どうやって就職するの?」という質問をもらう。この問いに対する回答はいくつもあるので単純な返答は難しいものの、デザインスクール留学後、就職活動で僕はフィンランド国内で2社に応募し、2社からも面接の案内をいただいている(2023年8月現在、転職活動を経て合計8社応募、8社全部面接ステージへとなっている)。また、現在の会社内で新規にデザイナーを採用するときにも応募書類のチェックや、実際のインタビュー(面接官として)も行い、採用プロセスに参加しているので、当該トピックに関して少しは理解していると思う。
良い機会なので、自分の知見を共有したいと思う。
海外デザイン就職に必要なもの
僕はサービスデザイナー/UXデザイナーとして、IT業界で働いているので、応募時点で必要なものは主に以下になる:
上記を準備し、書類選考を通過すれば後は面接等になるだろう。今回は特に、日本ではあまり馴染みの無いカバーレター(Cover Letter)の書き方に焦点をあて、説明していきたい。他のものについてはまた随時公開していこうと思う。
カバーレター(Cover Letter)とは
簡単に言うと、自己紹介の手紙だ。なんだ、そんなことか、と思うかもしれないが、このカバーレターの重要さを見落として適当なテンプレをコピペし、又は適当な文章を綴って応募書類として送ってないだろうか。実はこのカバーレターの有効な書き方を知っているかいないかで結果が大きく違ってくる。これからポイントを羅列していく。
デジタル化が進み、LinkedInなどで 「簡単応募」みたいな機能が多くなり、カバーレターを要求しない企業もある中、もし要求された場合、あまりにも適当なレターを送るのは避けたい。カバーレターでしっかり自分をアピールし、機会を逃さない様にしたい。
カバーレター(Cover Letter)のポイント5つ
ポイント1 : 宿題をやる
ここでいう「宿題をやる」とは「当たり前のことは事前に調べる」である。募集している職種について調べる。企業について調べる。採用担当者について調べる。etc … 応募することを急くあまり、調査行為を怠ってはいけない。最低限、オンラインでわかることは全て知っておく。
ポイント2 : 宛名と応募したい旨をいきなり冒頭で書く
これはびっくりするのだが、採用担当者の名前を書いていないレターが多い。LinkedInなどで募集要項があると、多くの場合は採用担当者の名前が記載されている。カバーレターは文字通り「レター(=手紙)」なので、宛名をちゃんと書こう。もちろん、レターの左上部分に宛名の企業名、住所等も必要だ。そして募集要項の連絡先/問い合わせ先に the hiring supervisor is Jane Smith of the tech team などという記載があったとしよう。これはJane Smithという方に応募書類を送ることになるので、それを書く。Dear Sir/Madamはどうしても採用担当者の名前が書いて無い場合のみに使う。また、例えば募集職種にInteraction Designerという記載があった場合、それに応募する旨をいきなり冒頭に書こう。「私は〇〇と申します、この職種に応募したいです」という具合だ。
上記2点をまとめると、レターの出だしはこのようになる:
という具合だ。冒頭のステートメントに用件がどストレートにある場合、その後の文章が組み立て易くなるだろう。カバーレターを見る側からしても単刀直入で良い。
ポイント3 : 自分のストーリーを明確にし、簡潔にまとめる
宛名を書き、仕事に応募したい旨を明記したら、いよいよ本当の自己紹介の番である。本記事ではこの部分が最も重要なポイントと言っても過言ではないだろう。
一番大事なポイントは、自分の過去、即ち自分のストーリーを明確にし、それが応募しようとしているポジションに関連しないといけないということだ。単に「自分年表」をまとめるのではなく、コンテクストに沿った形に組み立てる必要がある。別の言い方をすると、自分の過去の点と点を結び、その延長線上にその仕事がある、という枠組みをする必要があるということだ。これは日本における就職活動でも全く同じことである。例えば応募する当人が以下の様な経歴をもっていたとする:
カバーレターは短くないといけないと同時に、自分のアピールポイントをしっかり盛り込み、そしてストーリーとして組み立てなければいけない。
では上記の職歴の点と点をつなぎ合わせてみよう。想像ではあるがこの例を日本語で書いてみるとこんな感じの文になる:
このように組み立てることで、自分の過去の職歴を一つのつながったストーリーとして、レターで語れることに注目していただきたい。
ポイント4 : 学び(=Learning)を必ず入れる
もう1つ重要なポイントに、過去の経験のLearning (=その職・プロジェクトで何を学んだのか)をストーリーの中に組み込むというのがある。学びを明記することで、「この人は自分を振り返ることができ、成長できる人間なんだな」と思ってもらうことができる。全てが完璧にうまくいくプロジェクトなどない(少なくとも自分の経験では全くない)。なにかしらの失敗や、もっとうまくやれたこと等、学びとして得たことがあるはずだ。採用する側もそれをわかっている。それをちゃんと書こう。
「学び」を書くことのメリットはもう1つある。それは、これが次の文章へのスムーズな接続節になり得ることだ。
上記の例の場合、最初の2年間のWebデザイナーとして働いた経験の後に、学びを追加すると、このようになる:
学びの1文をいれたことで、その職歴における経験の伝達に深みが加わり、また、次の職場に転職した理由を語るスムーズなトランジションができる。
自分の経歴をストーリーとして組み、学びをいれた英文は以下になる:
ポイント5 : 募集要項に合わせた文言を使う
最後のポイントは募集要項に書いてあるフレーズや単語を使うことだ。「必須スキル・歓迎するスキル」のようなものが記載されている場合、それらを使った経験や、そのキーワードを用いて文章を構成する。例えば募集要項にこんな文章があったとする:
上記募集要項のキーワードをいくつか抽出してみよう。上から順に、"Cross-functional teams, user flows, sitemaps, wireframes, customer insights, data-driven"となる。これらのキーワードを用いて文章を構成しする。自分の経験を捏造するのは良くないが、文を"調整”する感覚で行うと良い。
以下に例文を3つ記載する:
まとめ
当記事ではカバーレターの書き方のポイントをいくつか解説した。日本ではあまり馴染みのないものかもしれないが、ポイントを押さえることで良いものは作れる。
レターはあくまでも就職活動における様々なアングルの一つにすぎないが、少しでもカバーレターをいうものの理解と改善に役立てていただければ幸いである。
僕が実際に使ったカバーレター
僕が北欧のIT企業に就職するために使ったカバーレターをここに公開する。このレターを使って2社8社に応募し、2社8社とも面接の案内をもらっており(※2023年8月現在、転職活動を経たので2社→8社へ改定した)今後もし必要があれば使う予定である。個人名やプロジェクト名は伏せているが、文章の構成、ストーリーの組み方など、そのままにしてあるので、興味があれば参考にしていただきたい。
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