欲望は甘い夢に
うは。「憐れみの3章」観てえ。
と、予告編だけで思いました。9月27日公開。あれ。何年もずーっと好きだった人の誕生日がそうだった気がするぞ。10代からずーっと片思い10年くらい。おや長持ち。長持ちする片思いって若い頃しかできないものかもしれない。だって51歳だと10年片思いしてる余裕ありませんし。ヘタしたら死ぬっての。ともかく10年も経てばさすがに恋心も忘れて記憶のどこかに片づけまして、とっくに心を引っかく存在じゃなくなった頃ですね。その片思い君がおれの夢に出て来て。あれ、おれが片思い君だったのか。とにかくそいつに夢の中でいきなりディープキスされて、「やばこいつキス上手い」って動揺したんですけど、そこは理性で。
「おれ、もう大事な人いるから(法的には認められてないケド)」って。
この話、パートナーには話してありまして。自分がいかに誠実な夫たりうるかって、恩着せたんですけどね。でも実んトコ目が覚めて思ったのは、「おれバカじゃねえのヤっとけよ」でした。夢なんだよアレコレしとけ。思い出もらっとけ。どうせ全部てめえの脳内で作り出した幻影なんだよ!
よく主題と関係ない話を長々書けますよね。鉄面皮なんすよ。よく皆さん読みますよね。我慢強いんですか?
「憐れみの3章」、ジェシー・プレモンス(36)。グイグイ来てますね。来てるの? 来ててほしい。来てるといいな。
実は感性爆発してる系の映画はそれほど好きじゃない。アメ車びゅんびゅんで銃バンバンでゾンビに隕石にサメに恐竜にパニックに地球滅亡、みたいのが大好物。そしてそこにヒーローが! でも予告に Eurythmics の Sweet Dreams が流れて、ダッジ・チャレンジャーの「監獄破り」をエマ・ストーンがぶっ飛ばしてるなら、それでジェシー・プレモンスとウィレム・デフォーが出てるなら、ありがとうしか言えない。もうカッコいいもんな。そしてこのサムネイルなんだけどさ。最高。
ジェシー・プレモンスを画面に置いたら、もうその役は他の役者じゃ考えられなくなる。三人共なんていい顔してんの、という顔ぶれですけどね。前情報を一切入れてないのでこの状況は全く理解できないのですが、ああ絶対この映画、好きだ。どこで観るかな。日比谷にしようかな。でもディスクを買ってこっそり観たいかも。
まあ、とりわけジェシーのことを書くのは、彼が私生活ではライミ版「スパイダーマン」のヒロインである「MJ」役を演じた、キルスティン・ダンストの夫でもあるから、という理由もあるんです。いい夫婦だな、と思うんです。ジェシー側が長く好きだったらしいけど、両方に「見る目あるなあ!」と言いたい。
ただ、ここからは唐突に(いや唐突でもなく)、いやったらしく、ルッキズム方面の話になる。あ臭かった? ごめんね。
ついついこの俳優ふたりについて、日本社会でどう言われるか、と考えてしまっている。キルスティン・ダンストが「スパイダーマン」でヒロインを演じたとき、彼女が決して良く言われなかったことを思い出すんですね。
20歳になったばかりみたいな子に、なんてひどいことを言うんだろうと、思ったんです。ジェシー・プレモンスもきっと良く言われないんだろうなあ、と寂しい予感。でも二人ともおれには外見的にも魅力的に感じられて。
「美」を型にはめることが狭量なのかは考え続けているところだけど、ひどいことをネットに書いてしまうのは明らかにダメ。残酷すぎる。それは分かり切ったこととして、「美」を小さな型にはめることも、いいのかな、って思うんです。それ全部、あなた自分にも言ってしまうでしょ、って。誰のための監獄なのかな、って。世の中がつまらなくなきゃ許せないみたい。みんなびくびくしてなきゃ嫌みたい。他人が自分を呪ってなければ、あなたが報われないみたいだ。まるで、まるで、まるで。
「40歳を過ぎてから、初恋相手にキスされた夢をみた。正直めちゃくちゃときめいてた」なんて話を書くのも、自分の「顔面偏差値」(って言うんだっけ?)とか年齢とか考えて、どなたかがご不快な思いをしないよう「わきまえて」「配慮していたら」無理だ。実際そんなことを書いている中熟年の方はまずいないんだけど、でもだからこそ、おれは、たまに書いてる。
だってこれは「寝床でむせび泣くくらい好きだったのに封印した10代のときの恋が40歳を過ぎて胸に蘇ることもあります。50歳も過ぎて納得してる真理だよ。これが人生だ」という話だからだ。世界中の人が「いやいや、君の人生にBGMもスポットライトもないだろ」と言ったとして、人生はちゃんとある。おれにだって、おれじゃない誰かにだって。
海外の動画なんかで、体重が120kg の女性がかわいい服を着たときに、コメント欄に賛辞が並ぶでしょう。そういうのが好きだし、そういう空気を作っていくことは、不可能じゃないと思っている。誰かが人生を楽しもうとしているときに「いいえあなたには資格がない」なんて言うことに意味ある?
これはな、ねえっつってんだよ。生きるのに資格なんか要らねえのよ。
こういうことを書くと、まるでいい人みたいだけど、「いい人を気取っているみたいに見えると感じ悪いと思われちゃうかもしれないからヤだ」という心の動きも含めて、疑問ですっていうオピニオンです。「オピニオン」だってよ。恐れ入るね。実際のおれはそこそこいい奴だと思うけど、そこまでいい奴ではない。他人の顔を笑って気持ちよくなってる人間は大嫌いだし、どうぞカスみたいな人生を短めに全うして下さいねというのが正直な思い。
みんな何かを探してる。顔を上げて進みなさい。――「SWEET DREAMS」の歌詞だって、しかし美しい世界を歌ってはいない。あざむいて利用しようとする人も、あざむかれたまま利用されていたい人もいる、他人を虐げたいと思う者がいれば、虐げられる人生を唯々諾々と生きていく者もいる、甘い夢はそんなもので出来上がっていてどこでもそうだった、でも/だからこそ――自分が欲しいものくらい分かっておけ、という歌だと思うんだよね。
みんなが下らない世の中にしたいんだったら、それもOK。おれ容赦ない悪口もイケるし。むしろ得意だし。でもそんな社会になりますと決まるまでは、愛についてばっかり語っていたい。あんとき優しくしたかったんだ、だからいま優しくしていいかって、初恋のやり直しするみたいな気持ちでね。