【夫婦別姓】兄弟姉妹との「一体感」
世に「きょうだい」と言えば総じて兄弟姉妹のことなんだけど、おれ慣例的に「兄弟」は「きょうだい」と読めても「姉妹」を「きょうだい」と読むことに抵抗がある。おれの感覚で姉妹はあくまでも「しまい」である。悪魔でも姉妹である。でも、
……ということがグイグイ押し付けられるので困る。「ご兄弟は?」って訊かれるでしょう。うち異母兄はいるけど戸籍上は姉妹のみ存在したことになっているので「いません」って言いたくなるんすよねえ。どうしても「姉妹」は「しまい」なのだ。そもそもの話、おれにきょうだいがいるかって世間にとって重要? 別に知りたくなくない? おれも奴らについて話したくもねえし一生思い出すことなく生きられたら嬉しいくらいのもんよ。
どうしても訊く必要があるとして「ご兄弟ご姉妹は」と訊けばいいだけだと思うんですね。でも「ゴキョウダイは」と訊かれるから、「ああこれは兄か弟のどちらかがいるかどうか訊かれているのではなく親を同じくする他の子ども【全般】についての話だな」と頭の中で都度バグを修正する。おれ日本社会で育ったんだけど不思議よね。でも。
面倒くせえのよ。なあ兄弟。あ、このときは「親を同じくする他の子」を指すのではなく親しみ表現として血縁関係なく友愛を含んで言っておりまして、その性別も問わないカンジです。いまおれは女性を除外しているつもりはないんだぜ、分かるだろなあブラザー。いやこれも男性のみに限定したつもりはないんだよガイズ……いやメン……
ぎゃああああああああああああああああああああああああ
で、なるべく「書くときは」さ、おれ平仮名で「きょうだい」って書いているんだけど、つくば市みたいじゃん。ピチピチでナウなヤングは「筑波」って字面が浮かばないよねもう。「筑波市」が「つくば市」になった瞬間の、胸に去来した絶望感って分かってもらえるかな。心に兆した不安が分かってもらえるかな。「日本人の知的レベルを下げる気か?」と思ったよね。「障がい者」表記は「障り」を残していてそれはそれで引っかかりを覚えるが、これはそもそも「未整備な社会こそが国民にとっての障害である」という「障害(であり続ける)社会」という視点を欠いたクソみたいな始まりがあったという別問題なんだけどさ、とにかくだ、兎も角だ、兄弟も姉妹も姉弟も兄妹も「きょうだい」と読みますっていうのに抵抗がある。「きょうだい」要らない。それだけですね。
でね。皆さんお忘れでしょうけど、おれのせいなんですけど、思い出していただきたいのは「この記事は【夫婦別姓】関連の話なんです。どう、覚えてた? こんなに関係ない前置きが長々あってさ、そもそも関係ないマクラってどうなの、どう生きるの、全部殺しちゃうんじゃないのって話でさ、実際のとこ、おれもどうしたら着地できんのかわかんないよね。でもどうにかするんじゃない、他人事みたいでアレですけど、お代は見てのお帰り。
あ無料記事ですよもちろん。「お代は見てのお帰り」って昔の人は誰でもちゃんと文意を理解できたんだからすごいよな。日本語としても難しい言い回しだろ。……分かったよ「夫婦別姓」の話でしたよね、りょーかい。
まずポジショニングの話をすると、おれ「夫婦別姓」の賛成派。政治的に賛成する立場なのね。思想としてね。おれ世に嫌われるリベラルの、かなりゴリゴリなリベラルだからさ多分。でもどんなイシューでもそうだけど、自分の思想にサイド固めて相手の話は聞かない、対話をする気がない人々ってどっち側にもいて、対話じゃなく対立をしている。でもそれは本意ではなかったはずなの。初志ではなかったはずなのね。おれは「これは対話である」という点は忘れずにいたいよね。だから――「リベラルのことは嫌いになってもおれのことだけは嫌いにならないで下さいっ!」……って最低か。
(パートナーが「それまだ通じる? AKB48 の」って心配してます)
(そこじゃなくて日頃のおれの暴走の数々を心配しようね)
でもリベラルってなんで嫌われるようになったんだっけ。反知性主義? あ不況か。不況だな(← 雑なのに大体合ってるパターン)。
おれはいざとなれば対立上等だけどバカじゃあるまいし可能な限り対話を続けるタイプ。でさ、小学校のときに「相手の気持ちを考えましょう」って教わったよね、心理的発達段階からは「ときに自分と相手の立場を置き換えもして相手の心情や立場を推し量る」って小学生には無理ですって話もあったと思うんだけど、これ読んで下さってるの小学生じゃないと思うし、いいよね。皆さん童心を忘れないアダルトですよね。大丈夫おれもっす。だからおれちゃんも夫婦別姓「反対派」のキモチになって、夫婦別姓「賛成派」を分断させるような妙案をさ、考えてあげたりもするわけ。たはむれにな。やだなお礼なんていいってば。おれたちの仲じゃん。動物園のゴリラみたいにウンコ拾って投げ合う仲じゃん?(そのうちマジでどこからか叱られそう)
おれちゃん曰く――「賛成派を分断させ賛成派下層を引き込む妙案は」、
夫婦同氏。「ただし夫婦は婚姻により新姓を選択してよい」だ。
リョージ・アズナブルとかいいな。いやリョージ・ダイクンかやっぱり。あ、同性婚できねーのか。てへ。結局蚊帳の外かよふざけんなそれでね。
どっちかが自分の姓を捨てて相手の姓を名乗らなければならない夫婦「同姓」の不平等感ってあるでしょう。嬉しいような気持ちはあっても、そうしたい気持ちもあってさえ、どう転んでも自分のルーツを捨てることよ。互いに相手に属しているとカタチになること自体は嫌じゃないかもしれないけど、相手の家に「入る」みたいなのは嫌だ。改姓は事務処理的にも大変だし当たり前みたいに決めないで。――そういう実感はさ、動かしにくいよ。
でもそれなら、お互い姓を捨てて、新姓をチョイスできるようにすれば?
すれば! よくない? よくなくなくない! どっちだどうなんだ。
夫婦同氏新姓取得制度――何より、これ、楽しさがあるだろう。ちょっとワクワクするだろう。結婚してみたくならないか。「そんな風に簡単に姓を捨てるものではない。それは家を捨てるようなことだ」って言う? 笑えるねえ、夫婦同氏の原則は、それを必ず一方にさせて来ただろ? 「家族の一体感」なんて幻想だとおれは言うしそのココロは後述するけれども、必ず一方に子どもの頃からその名で呼ばれた姓を捨てさせ、親とのつながりを捨てさせて来ただろ? それを忘れたように今さら「一体感が」って言い出すのはムリスジすぎるって。それは言っても無理だって。
おれが提案するのは「夫婦同氏で」「一体感を守る」の新しいカタチだ。
夫婦同氏新姓取得制度。これさ、ちょっとだけ「夫婦別姓賛成派」も揺らぐよ。もちろん揺らがない人もいる、それは「夫婦同氏の原則」で引っかかり続ける。しかし強いニーズがあって「夫婦同氏の原則がそもそも封建的だから」夫婦別姓にという思想の人たちに、あくまでも夫婦同氏の原則を守るように求めるなら、せめてこんな「少なくとも封建的と感じにくい」提案もできなきゃならないだろ? 夫婦は社会の最小単位、結婚は新戸籍を作り新しい「イエ」を作ること。むしろ実家にあった一体感、古巣を捨てるのが結婚なんだ、ずっとそうなんだ。だったら真新しく送り出してやれ。
そういう提案を出した/主張している人たちもいるのかもしれないけど、おれは知らない。いるなら教えてほしい。少なくともおれの知る限り、これまで政治の俎上にはあがってないと思う。
え、「名字を捨てるなんて」ってまだ言ってんの。よりによってりょーじとか名乗ってるアホに? あのなあ、今までも一方に「必ず」捨てさせただろ。何度言わせんの。――まあ、分からなくはないよ。「代々の」とか「〇〇家」とか大事なんじゃないかって思うのは分かる。名字をもてるようになってたかだか数百年でも特別なんだろ? 家族もひとつだと思いたい――その気持ちを笑うことができる奴なんていない。おれだって家族ってものに思いはあったさ。昔話に定型の「何やかんやあったけど正直者の家族はずっと幸せに暮らしましたとさ」という未来があるはずだと、泣きながら信じてたようなガキだったんだ。ああ誰かあのガキひっぱたいて来てくんないかな。
家族はずっとチームじゃないんだよ。そう在りたくてもな、色々なことが起きるんだ。オーケー、オーケー、「それはお前んちの家族がクソだったからだろ一緒にすんな」って言いたいのは分かる。でもおれはそれでも「家族の一体感なんて幻想だ」と言うよ。だって思い出してもみてくれよ。
「結婚」は「新戸籍になること」
「家族の一体感なんて幻想だ」と感じる理由に目新しいものはない。兄弟姉妹が結婚すると、あなたにとって彼らは「とても遠い」存在になる。他家になるし他人にさえなるだろう。現行の婚姻制度では、結婚すると新戸籍が作成される。しかし例えばそのことで起きるのは「ケイテイシマイについて足跡を辿れなくなる」という事態だ。あ、ソクセキな、アシアトじゃない。だから可愛い絵文字にすんな。
一度でも結婚したことがある兄弟姉妹の「本籍地」「現住所」「婚姻状況」(つまり戸籍や住民票に記載される個人情報)は、親あるいは祖父母のような「直系家族」なら辿れるけれども、兄弟姉妹や叔父叔母などの「傍系家族」が役所に行っても教えてもらえない。つまり、親が死んだら、あなたは役場で兄弟姉妹の連絡先や生活状況を調べることができない。役場の窓口でどれほど懇願しようと、哀訴しようと、脅そうとスカそうとケンカしようと、教えてもらえない。弁護士? 「無理だ」って言われますよ。
「プライバシー」ってやつですね。おれも言葉は知ってる。大事なやつ。
もともと結婚って新しい戸籍を作り別世帯になるので、行政上もそういう「これで家族なのかなあ。これでも家族と言えるのか?」と疑わしくなる事態って起きてくるんですね。それが結婚なのだと言える。別世帯になることが、他家となり、何なら他人になることがね。そもそもそうなんだ。
だったら、新しい姓を選択してもいいじゃない。「夫婦同氏新姓取得制度」なら「夫婦同氏」も継承できる、ちょっと楽し気だから数の上では結婚も増えるかもしれない。それさえ嫌なら、もう「夫婦別姓」しかないと思うよ。もし尚も「夫婦別姓の家の子はいじめられる」とか言うなら、おれの次の質問に答えてくれない限り、これ以上、反対派の話は聞かない。
おれの質問はシンプルだ――「イジメを行なうのは夫婦同姓の家の子らだということですか?」。
「片親の家の子はいじめられる」「障がい者家庭の子はいじめられる」「同性婚家庭の子はいじめられる」……何でもいいけどさ、あんたら何でもそれ言うけどさ、それって保守に都合の悪い真実を暴くだけじゃない?
おれはしつこいから、絶対にこの質問をする――「それなら問題行動を起こしているのは、どんな家庭に育った子なのでしょうか、ご回答を」。
「両親が揃っている」「どちらも健常者で」「どちらもシス‐ヘテロで」「大和民族で」「被差別部落出身でもなくて」「もちろん在日でもなく」「両親は夫婦同氏である」――という家庭の子が問題行動をしている。おれじゃなくて保守派がそう言っているわけだ。そんな家庭の親か子に問題があるという指摘を彼らは繰り返している。
何やってんだよ。
子どもたちに、「人生は型どおりじゃない」と教えてやれ。「お前も進む道がないときは、自分で作れ」と教えてやれ。「みんなそうしているんだ」と語って聞かせてやれ。多様性ってそういうことだ。どう転ぼうが所詮お気に召さないのは分かってる――でも、転落恐怖を植え付けて加害者を育てるよりは、いいんじゃないかな。もし「道ってどうやって作るの?」って子どもから訊かれて困ったら、後はおれが話して聞かせるよ。そういうことこそ、引き受けて行きたいんだ。そういう大人は、いっぱいいるんだ。
そっか、おれがなぜ「夫婦別姓」賛成派かちゃんと書いてなかったよね。「リベラルだから」なんて、そんな単純な位置決めでもない。自分が本当にリベラルなのかも知らねえよ。ただ「夫婦別姓反対派」の矛盾した主張――「家族」を守ると言いながら、夫婦の一方にはそれをさせないバカさ加減にうんざりするんだよね。別の理屈を探して来い、聞くにたえないから。でもそれだけでもない。さらに別の理由もあるんだよ。「家族を守る」って本気で言ってるなら、ちゃんと考えて、ちゃんと動けと言いたいんだ。
無事で無風のとき「家族を守る」って、割と誰でもできるんだよ。ただし有事の際はちがう。家だろうが家族だろうが「姓」であろうが、守ることは大変だ。「ロンダリング」と「乗っ取り」の事例をここに書いておきたい。
はい、特異な事例だと思ってるよね。でも「男と男が結婚したら結婚詐欺が増えるから同性婚に反対しなければ」と想像する人たちよりは、おれ想像力豊かじゃねえよ。おれにある想像力ってクリエイティブ方向だけなのよ。
おれは傍系でもケイテイシマイなら結婚後のきょうだいが戸籍をどこにおいているのか、現住所はどこか、誰と婚姻しているのか知ることができるべきだと思う。「きょうだい」なら、不正や犯罪が行なわれたことも察知できるかもしれないのだから。「離婚したと聞くけど一緒に暮らしているようだ」「離婚期間中に夫が生活保護を受給申請したかもしれない」「どうして常に軽自動車を選ぶのか」「迷惑をかけられたと怒鳴り込んで来た人がいた」「世帯別支給の給付金を目当てに離婚するのではないか」――きょうだいなら、異常に気づけることがある。でも現行の窓口業務対応ではそうした「家族の機能」は閉じられている。「きょうだいは家族の現住所さえ知る必要はない」としているみたいだ。ただ突然「家族」が破壊される時を待てと、そういうことみたいだ。「傍系」家族に「本籍をどこに置いているか」「現住所はどこか」「誰と婚姻状態にあるか」明かさない理由をちゃんと説明できる誰かがいるのだろうか。
こんな話、他人事なのかな。もちろん安心して。あなたの「イエ」を乗っ取るためにあなたのケイテイシマイと結婚する奴なんて「いないことになっている」んだから、あなたが心配することなんかないの。ほらいい天気だよ。いよいよ冬っぽくなってきたねえ。スマホゲームでもやってなよ。
もちろん論を立てる上で、こうした一部の(現実を見たくない人用にそう語られる)事例を持ち出すのは悪手だけど、これが現行の「結婚(制度)」であることは、そうなんですね。――さて、家族の一体感って何だっけ。それを守るってどうやるんだっけ。
夫婦別姓くらい、どうってことないように思えて来ませんか?
結局、まともな伴侶と一緒にいてくれることが一番で、すべてですよ。
ケースによっては「別姓にしておいてくれれば」とさえ思うかもしれません。きょうだいがどんな人物と結婚しているのか家族が20年間知らなかった事例もあります。その目的は戸籍ロンダリングかもしれないし乗っ取りかも。「むしろ夫婦別姓が世間の常識になれば」意外な犯罪抑止効果もあるかもしれない――少なくとも偽装離婚の意味は薄まる――し、「きょうだいが結婚した相手が逮捕されてニュースになったが別姓だったのでこちらには累が及ばず済んだ」という結果にもなるかもしれないですよ、会場の皆様!
うち? おれは「しまい」が逮捕されようが死刑になろうが何の痛痒もないけどね。おしまい、なんつて。でも皆さんには守るべきものがたくさんあるんじゃないですか? 以上、リョージ・ダイクンがお送り致しました。