見出し画像

飛べない鳥

 皆さんは歌を捧げられたことありますか。おれはあります。カラオケで曲を入れた男が「これ、りょーじのために歌うから。」(←ちゃんと句読点が聞き取れる話し方)と耳打ちしてくるわけですね。バーカウンターの下で、手握られたりなんかしてな。まあそんなん自慢しますわね。そりゃね。でも誰ひとり、その自慢にムカつかなかった。嫉妬する代わり、みんな絶句してたんですよ。日頃、他人の幸福を妬んでやまない奴らが。
 「……その曲目リストさあ、全部『別れの歌』じゃん……」

 実際、別れを告げられるの、早かったなー。HA-HA-HA!

 ゆず「飛べない鳥」とかね。確かに別れの歌だわな。良い歌だけどね。


 それで「飛べない鳥」で思い浮かべる代表格ってペンギンだったりするわけですけど、おれペンギンを「飛べない鳥」と語ることには抵抗があって。彼らは水のなかを自在に「飛んでいる」わけでしょう。そりゃあ見事に。「どこを飛ぶか」、空か海かの違いであって、彼らは自由に飛ぶ。

 そんなことを今日思い出してたのはさ、――待ってそっちじゃねえ、「一生大切にする」って言ってくれたのに2ヶ月で終わって「おれの一生、2ヶ月だったんだ」と自暴自棄になってスピードマスター買った話はいいのよ。これ確かに鉄板ネタだけど、今はその話じゃない。大体、超円高でオメガ安かったのなんて何十年前の話だよ。いやだからその話じゃなくて、「さよならバス」も確かに捧げられたけど、今はいいじゃん。また次回、ね? ――ええと、思い出してたのは「ペンギンはちゃんと飛んでいる。空を飛ばないだけで」ってことを、あらためて今日、考えてたって話さ。


 相互フォローして下さっている「月のしずく」さんが「日々樹」さんの記事を紹介しておられた。カッコいいPVを作って、あとは文章の魅力に浸って下さいといざなう、テキストでは内容についてあえて触れない大人距離感スタイルで。――おれに真似できないやつだな、ってうるせえですよ。

 雄弁な動画と共に紹介されていた、その「日々樹」さんの記事はこちら。

 それでこの記事を読み始めたんだけど、話題の中心にあるのは(犬のテツとマフオが話題にしているのは)ペンギンのカップルが、オス同士で育児放棄されたひな鳥を育てたという話なのだ。やばい途中まで犬のかわいさにやられて性的多様性みたいな話だと思ってなかった。……というより、最近のおれはこうした話を「同性カップルの話ではなく」育児放棄の結果、家と保護者を失う子らを社会がどのように養育するのかという「養育社会モデル」と捉えていたから、一瞬「ゲイカップルの話」という要素が入って来なかったんだよね。おれズレてんな。

 ともあれ、これは野生のペンギンで観察された、ゲイ・ファーザーによる育児のニュース。もっと有名なのは、動物園で「ロイ」と「シロ」のゲイカップルのペンギンに他のペンギンが温めるのをやめてしまった卵を与えたら2羽は卵を孵し、生まれたひな鳥は「タンゴ」と名付けられた、という話の方かもしれない。絵本もありましたしね。このロイ&シロ&タンゴのエピソードはもちろん知っていたんだけど、日々樹さんが御紹介されていたケースは知らなかった。過酷な環境下で、父親になろうとしたペンギンたちがいたのか……キュートなお話、感謝してます、日々樹さん、月のしずくさんに。


 東京の新宿歌舞伎町には、動物園のゲイファーザーたちの名を店名にした「ロイトシロ」という「夜パフェ」の店がある。店を切り盛りするのはゲイカップルだ。トップ画像はその店のパフェ「ロイ」のハロウィン版。

家族の名を冠したパフェは、左から「タンゴ」、「ロイ」、「シロ」
「ロイトシロ」を経営するカップル

 もう少し世界に浸りたい方はこちらとかどうぞ。音は大きめです。

 この動画を制作/アップした方はハヤ公ちゃんねるさん。なのだが、最初にオリジナルの動画に日本語詞をつけてアップしていたのは歌川たいじ氏で、この動画も歌川たいじ氏の訳をそのまま使用している。その歌川たいじさんと言えば、映画「母さんがどんなに僕を嫌いでも」の原作者です。

【閲覧注意】母から子への暴力描写があります

 「親に変わって欲しいなら自分が変われ」、また「理解は気づいた方からすべし」というセリフが批判されることがあった映画でしたが、それはとてもよく分かるし「なんで子どもに努力させるんよ」とおれも同意するけど、これは「お母さんが好きであきらめられなかった子ども」の話であり、「被虐待児には親を嫌いになれない強い思いがある」というケース。その子に親を憎ませることなどできないし、すべきじゃないのも本当。だと思います。
 
 この男の子(原作者自身)が大きくなって混ぜご飯を作るとさ、どうしてもこのお母さんが昔作ってくれた混ぜご飯の味になっちゃうの。その味が大好きだったからね。おれは、もし友達にひどい親がいたら「あきらめろ」って言う。でもそいつの人生の目的が親との関係修復なら、それをサポートしたい。被虐待児に役割を押し付ける映画じゃない点は、付け加えておきたいです。一点お詫びしたいのは、おれ原作は買ったけど映画は観られなくて。いつか観ようとは思うんですが。


 「あ、お前の例の暗いやつ久しぶりに読みたい」という方はどうぞ。

 やべえ寝る。

いいなと思ったら応援しよう!