
フランスでお店をオープンするまで①
フランスに着いたのが2019年8月なので、もうここにきて5年半経つことになる。本当にあっという間で、これまでいろいろなことがあった。noteを始めたのはコロナの影響でレストランが約1年間、休業していたからだった。レストラン再オープンしてから今までものすごく忙しくなかなか時間がとれずnoteを長い間放置してしまいました。でも2025年、相変わらず日々の仕事で忙しいけど、これまでの経験、自分が感じたことを整理する必要があると思うようになってきた。少しずつでいいからnoteを再開して自分なりのペースで続けられたらいいなと思う。言葉を綴る作業は、自分の中にぼんやりとある想いやとっちらかった思考をカタチにするという意味でとても大切だ。異国に住んでその地の言語で過ごしていると余計にそう思う。普段感じる違和感や、感動を日本語で記録しないと忘れてしまう気がする。
2019年
僕は2019年8月にフランス、リールに移住しました。きっかけは、ロンドンでワーホリしていた時に出会った奥さんでした。奥さんはリール出身で、当時まだこちらで学生をしていたので、自由がきく僕がフランスに移住するのは自然なことだった。ただ、こちらにフランス語ゼロ貯金ゼロで来てしまったので最初は相当苦労した。若さ故の勢い、行動力に任せて何も考えずにここに来てしまった。銀行口座を開かないといけない、アパートを見つけないといけない、仕事を見つけないといけない、最初は今後の見通しが立たずどうなるかと思った。でもどうにかなった。奥さんと義家族の助けもあってアパートも見つけ口座も開けた。アパートはRoubaixというリール郊外にある小さい学生寮だった。
こちらに来て二週間後にはリールの伝統的なブラッセリーでcommis de cuisine(一番下っ端のポジション)として雇ってくれることにもなった。想像していたより早く生活のベースとなる衣食住は整い、僕のフランス生活が始まった。
最初に苦労したのはやはり言語だった。同僚とコミュニケーションがうまくとれず仕事がうまくいかないこともあって何度も悔しい思いをした。仕事に慣れるも何もフランス語が喋れないと次何やるべきかもわからない。フライパンで野菜を焼くのか、オーブンでお肉を仕上げるのか、周りに全くついていけない。見よう見まねでは限界がある。初日からフランスでフランス語を喋る必要性をひしひしと感じて、そこから猛勉強した。朝は毎日7時に起きてフランス語の文法を勉強。9−15時のシフトをこなし休憩時間にラジオを聞きひたすらシャドーウィング。そして18時から夜のサービスに戻る。夜の仕事が終わったら夜中0時から1時まで寝る前は単語を覚える。こんな生活を続けて3ヶ月が経った時、同僚の言ってることがなんとなくわかるようになって来た。自分の言いたいことも同僚が理解してくれるようになってきた。自分が彼らの言っていることを理解してる分、彼らも僕のことを理解しているみたいだ。そこからフランス生活が一気に楽しくなってきた。子供が言語を習得し覚えた言葉を繰り返し発するように、僕も自分の知っている単語を紡いでみんなと会話がしたいと思うようになってきた。最初の3ヶ月は苦労ばっかりで、こんな生活いつまで続くのだろうかと毎日辛い思いをしていたけどようやくトンネルの出口が見えてきた。というか、何をするべきががわかってきた。そこからは要領よくフランス語の勉強も続け、仕事も順調にいき昇級を勝ち取りchef de partie(部門シェフ)のポジションで仕事をさせてもらえることになった。
フランス生活のリズムもようやく掴めた頃に、コロナが世界中で流行することに。もちろんレストランも休業せざるを得ず、僕は多くの時間を家で過ごすことになる。今までの努力も水の泡になったような気がして最初はとても落ち込んでいた。
2020年
仕事ができないし家でやることもないしと、この休業期間を使ってフランス語を猛勉強しようと決心する。オンライン会話に、シャドーウィング、文法、自宅でできる勉強法は全て試した。このコロナ休業期間をうまく利用し集中的に勉強したおかげで僕のフランス語は一気に上達したと思う。コロナが収束して仕事に戻る頃にはフランス語で困ることはほぼなくなった。
2021年
2020年終わり頃から2021年に入って、コロナも落ち着いてきてようやく仕事にも復帰できるようになる。このころから職場を変えて他のスタイルのレストランで働いて見たいと思うようになってくる。いくつかのレストランで試しに働いてみて、どこが一番自分の勉強になるのかを考えてBleu canardというレストランで働くことに決める。Bleu canardは季節の野菜や果物を使いフレンチをベースにメニューを創作するこちらでも新しいスタイルを貫いたレストランだった。一度お客さんとしてここで食事をして、その後試しに働かせてくれとオーナーに直談してその後採用してもらえる形になった。ここで一番いいなと思ったのは毎週メニューを変えるので常に新しいアイディア、新しい食材を取り扱えることだった。メニューを変えるという仕事は、頭の中にある抽象的なアイディアを色や味の組み合わせ、盛り付け、食感といった具体的な形あるものにうまく落とし込み、最後にお客さんに食べてもらって美味しいと思ってもらわなければならない。もちろん良い食材がなければ良いものは作れない。この作業はものすごい労力を使う。僕はセコンドシェフとして二番手として仕事を始めたのだけれども、最初からメニュー創作に携わることができて本当にラッキーだった。最初は、技術も知識も全く足りてなかったけど、毎週メニューを変えていくうちに味付けや盛り付けが上達していき、もっと色々な食材を触りたいと思うようになってきた。







いいなと思ったら応援しよう!
