リサイクル会社の新規事業開発
こんにちは!従業員50名の古紙リサイクル会社(古紙問屋)の3代目です。
2021年9月、新規事業としてメディア事業部を設立しました。このnoteでは、どなたかの役に立つことがあるやもと思い、そこまでに至る過程を記していきます。
古紙問屋とは何か
古紙問屋の仕事は、日々トラックで段ボールや新聞を集めて回り、選別して圧縮するという、汗と埃にまみれたいわゆる3K現場です。仕事終わりには顔も手も鼻水も真っ黒となります。
DXなど雲の上の話で、いまだに電話・ファックスで現場が回っていますし、そもそも社長をはじめほとんどの社員はPCを使えず、もちろんzoomもできません。昨年、経理を引き継ぐまでは、何と紙の伝票をおこしていました。うちの会社がというより、業界全体がそんな感じです。
減っていくパイを奪い合う未来
当社は今年で創業70年を迎えますが、この業界には100年企業がざらにいます。戦後日本の興盛を大量の紙とともに歩んできた業界でした。
ところが2000年をピークに、国内の紙消費量は減少に転じます。
出典:公益財団法人 古紙再生促進センター
こうなると、これまで右肩上がり・共存共栄を前提でやってきた業界が、減っていくパイを奪い合うことになります。様々な業界で起きた再編は不可避ですし、後継者や人手不足による廃業も増えていくでしょう。
いわゆる衰退フェーズに入った業界で、長期的には資本がモノ言うパワーゲームが待っている可能性が高いです。
事業を成長させて恩返し
自分の話になりますが、家業に入る以前、2004年頃からミュージシャンを10年ほどやり、2020年にビジネススクールでMBAを取得し、NewsPicks NewSchoolでメディアを学ぶという、古紙問屋としてはかなり異色な経歴だと思っています。
そんな自分がなぜ衰退する古紙業界に入ったのかといえば、ミュージシャンで食い詰めたからです。今の音楽業界を見ても、いちプレイヤーとしてやっていくのは非常に厳しい状況ですので、本当に恵まれた境遇です。感謝。だからこそ周りに恩返しをしたい。そのために事業を成長させたい。と言うのが、タイトルの新規事業開発につながる動機です。
なぜ新規事業開発なのか
ここで言う新規事業というのは、いわゆる「多角化戦略」です。アンゾフの成長ベクトルという理論では、製品・市場ともに新しい領域に進出する方向性となります。
ドブ板営業で古紙の回収先を倍にするぞ!と言うのは、この図だと①「市場浸透」に当たります。今の取引先に対して、古紙に加えて新たに廃プラもリサイクルします!という展開は、②「新製品開発」に当たります。また、ミャンマーに拠点をつくって古紙を集めるぞ!というのは③「新市場開拓」です。
一般的に衰退する業界では体力勝負となるため、①で真っ向から戦うのは厳しいでしょう。また、既得権益の業界であるため、海外は海外のシマがあります。国内企業で海外で展開した成功例はほとんどなく、ことごとく撤退しています。ある会社では中国では工場に死体を投げ込まれたという話もあるくらいです。ゆえに③も選択肢から外れ、残る②・④で何か良い手はないか?と考えました。
というのは完全に後付けで、学んだ戦略論に当てはめていっただけなのですが。。。
いずれにせよ、①を目指してこの先普通に営業やってても絶対キツいという感覚はありました。どこの業界も同じだとは思いますが、過去と同じようにやっても得られるリターンが少ないとか、バリバリ営業すると業界でアウトローになってしまうというか。この辺りの内部事情もいつか詳しく解説しようと思います。
次回は、業界に入ってまず取り組んだ「DXもどき」の失敗について書いていきます。
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