リサイクルをIT化しようとして失敗した話
2014年にリサイクル業界に入り、自社の中で改善できそうだなと思ったのがIT化です。
前回記事でも触れたとおり、電話・ファックスで日々の業務を回している状態だったので、何か自動化ないしは効率化できるんじゃないかと考えました。
古紙回収はアナログ現場
古紙の回収には、写真のような鉄カゴや台車が使われます。フォークリフトでかごごと交換するか、段ボールの場合は中身を手作業で積み込みます。
回収するタイミングは、量が多いところは毎日、そうでなければ予め回収曜日や時間を決めるか、カゴがいっぱいになった時点で連絡をもらいます。
「自動化」という観点では、決まった時間に回収するのが顧客(排出側)にとってベストといえます。ごみの回収に関して一切考える必要がないからです。
流行りのIoTに乗っかる
一方、回収側からすると、作業にかかる人件費や車両費が最も大きなコストなので、なるべく効率化したいと考えます。理想は、毎回カゴが満載になっている状態ですが、日によって量にバラつきがある場合、積載効率が悪くなる課題がありました。
そこで、先方に溜まった古紙の量を把握できれば、常に最適なタイミングで回収できるのではないか?その実現には、回収容器にセンサーを取り付け管理すればいい、つまりIoTだ!その時全てが繋がった感覚を持ちました。
最近はあまり見かけませんが、2017年当時、世の中は猫も杓子も「IoT」で、メディアには毎日IoT関連の情報が踊っていました。
当時たいへん勢いのあったSORACOMのカンファレンスにも参加し、古紙のようなアナログ業界の事例を懸命に探しました。光センサーや重量センサーでそういった機器を販売するベンダーもありました。しかし、wifi環境や外での使用に対する耐久性など、現実的にまだ古紙の回収カゴに設置できるようなコスト感ではありませんでした。
そもそも誰も困っていなかった
そういった事情を考慮していった結果、できたのはアマゾンダッシュボタンを模した「IKURU」というサービスでした。
これは、排出側の担当者がカゴがいっぱいになったタイミングでボタンを押すと、スマホアプリ経由で当社にメールが入るというサービスです。
これまで手書きで「カゴ4つお願いします」と書いてファックスしたり、電話をかけたりするのを、ボタンを押すだけで解決します、というわけです。
タイトル通り結果は失敗。
理由は、顧客のことを考えなかったことに尽きます。
まず、そもそも使う側が困っていなかったことがわかりました。電話ファックスで全然いいし、そんな些細な変化に時間を割きたくないのです。積極的にご協力いただいた方には本当に感謝ですが、見当違いの実験に付き合わせてしまった形となり、申し訳ない気持ちになりました。
リーン・スタートアップは難しい
また、現場でスマホを持っている人が少なかったことも要因の一つです。当時、まだまだ日本の現場は大手企業でもガラケーで、スマホがあっても会社携帯に変なアプリは入れられないなどの事情がありました。
しかし現在では少し事情も変わってきているようで、同業者がまさに同じことをやろうとしている話も聞きます。粘り強く続けていればまた違った形が見えていたのかもしれません。
まさに浅い考察でIT化を目指し、誰もいらないモノを作ってしまったのに加え、すぐにやめてしまったのも含めて、教科書通りの失敗例でした。
スモールスタートだったので財務的なダメージは限定的だったのは救いです。「リーン・スタートアップ」を片手にやっていたつもりですが、やはり顧客のどんな困りごとを解決するか、とにかくこれを常に頭に入れておかないとダメということを学びました。
リサイクルのIT化は遠い
リサイクルの現場は、工場のような管理された環境でないことや、形状が一定でないため、IT化というのはまだ時間がかかるのではないかと思います。または、自治体レベルなどある程度の規模で実験する領域でしょう。
また、電話やファックスがなくならないのは、今現場にいる人たちにとって、メールやチャットを使うより確実で早いからです。このあたりは、世代が変われば自然と変わっていくのではないでしょうか。
次回は、Facebookでなんとなく発信していた時の話をします。
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