【アイテム解説】ALL about "T-SHIRT"
世界中で、最も着られている洋服。
それはTシャツでまず間違いないのではないでしょうか?
普段何気なくきているTシャツについて今日は深掘りしていこうと思います。
【Tシャツの変遷】
その起源は明確ではないですが、アメリカ抜きにTシャツの歴史を語ることはできません。
合理的な国民性と広告マーケティングが早くから盛んだったアメリカだったからこそ、当時肌着だったTシャツにデザインを施すという発想が生まれ、今日のTシャツという存在が確立されました。
19世紀後半〜20世紀初頭には、すでにアスレチックウェア(運動着)や下着としてT字型のシャツの存在が確認されています。
それから時代を経て、30〜40年代頃はミリタリーウェアとして採用されるようになり、Tシャツを1枚で着るという文化が誕生します。
戦後50年代頃から大学の運動着として貸し出す為に、学校名や番号など管理用としてのプリントが施されるようになり、大衆に浸透していきます。
そして70年代以降は、プリント技術の発展により、バンドTシャツや企業ロゴなど様々なTシャツが作られるようになり、販促グッズとしても一般的となっていきます。
【袖・ボディの種類】
最も基本的なデザインであるボディの形状。
昔は化学繊維が発達していなかったことから伸縮性に乏しかった。その為、袖の付け方などを工夫することで動きやすさ実現させていました。それが今ではデザインの1つとして大衆に浸透しています。
①セットインスリーブ
”ザ Tシャツ”という一般的な袖付けの仕様。
身頃に対して縫製が垂直に施されているのが特徴です。
②ラグランスリーブ
首から脇下にかけて斜めに縫製する袖付方法。
肩周りの可動域が広く動きやすいので、スポーツウェアなどによく見られます。
1815年のナポレオン戦争の際、イギリスの司令官・ラグラン男爵によって負傷者が衣服を脱ぎ着しやすいようにと考案されたそうです。
③フットボール
袖付はセットイン仕様で、胸部分で生地が切り替えられているのが特徴。
通称ナンバリングTと呼ばれ、アイビーファッションの影響もあり、1960年代頃に人気を博します。
名前の通り、アメフト選手が着用していたユニフォームが元になったデザイン。袖の長さも5部袖や7部袖のアイテムが多いです。
④ベースボール
フットボールT同様、野球のアンダーウェアが元になった形状。ラグランスリーブで、裾がラウンドしているものを指します。
⑤フリーダムスリーブ
ラグランと似てますが、S字に曲線を描いて縫製されているのが特徴。
元々、球技でスローイングがしやすいようにと開発され、1940年〜50年代ごろの旧いアスレチックウェアに見られるディテールです。その手間のかかる縫製方法により、その後ラグランスリーブが主流になっていきます。
⑥セットインフリーダムスリーブ
肩部分はセットインと同じですが、脇下付近からカーブを描きながら縫製された袖付。フリーダムスリーブ同様、旧い時代ならではの縫製仕様です。
番外編 -丸胴(まるどう)-
現代では、前身頃と後身頃を脇下で縫い合わせる"横割り"と呼ばれる縫製仕様が一般的です。しかし、ヴィンテージTに見られる丸胴は吊り編み機などで筒状に編まれた生地をそのまま使い、脇下縫い目がありません。
サイズによって筒の大きさを変えなければならない生産効率の悪い方法ですが、空気をたっぷり含みながら編み上げられた生地はふんわりと仕上がり、縫い目もないため肌あたりが良いのが特徴です。
【ネックラインの種類】
Tシャツの顔とも呼べるネックライン。
その形状で着用した印象がガラりと変わるので面白いですね。
実は意外と知られてない由来や歴史があります。
①クルーネック
丸首とも呼ばれる一般的なTシャツの首周りの形状。
CREW(乗組員)の名の通り、船乗りが着ていたセーターからその名が付きました。
一般的とは言えど、奥が深い。
年代ごとに工夫を凝らしたリブの縫い付け方があり、年代判別の手がかりになります。
後ほど詳しく解説します。
②Vネック
その名の通り首周りがV字になっている形状。
③Uネック
クルーネックよりもU字が深い形状。
④ボートネック
クルーネックを左右に引き伸ばしたような楕円形で襟ぐりが浅い形状。
船底の形に似ていることからこの名前で呼ばれています。バスクシャツに使われることで有名です。
⑤ヘンリーネック
クルーネックに2〜3個縦にボタンが付いた形状。ヴィンテージの肌着に多い見られ、クラシカルな印象が特徴です。
⑥モックネック
クルーネックの首リブを高くした形状。
モックネック➡︎ハイネック➡︎タートルネックの順に高さが増していきます。
番外編-チョコチン-
首元に別生地が縫い付けられたカレッジTシャツの愛称。基本的には学校を表すスクールカラーで構成されています。
【ネック縫製】
①一般的な縫製(NOW)
50年代以降から多くなる一般的なネックの縫製。表にステッチが出ず、裏側はロック縫製となります。
②バインダーネック2本針(30s後半〜NOW)
30年代後半から現在まで存在する2本針の縫製仕様。リブ生地をボディ側の生地に挟み込み縫い付けるバインダーネックは一般的なネックに比べるとヨレにくく耐久性に優れています。
③2本針縫製(30〜40s)
バインダーネックのように挟み込まず、襟部分とボディ部分を跨いで2本針ミシンで縫製された仕様。30〜40年代のヴィンテージに見られるディテールです。
④3本針1本外し(50s)
2本針のバインダーネックと似ていますが、こちらは3本針ミシンで縫われています。そして、一番外側のステッチがバインダーから外れている仕様。これにより伸びを防止し、バインダーネックよりもさらに耐久性は高くなります。
50年代頃に見られるこのディテールは、高度な縫製技術が必要です。
⑤両面ロック(40s前半)
襟ぐりにリブ生地を挟み込み、両面ロック縫製を施した仕様。工程が2倍になる手間のかかる方法で、40年代前半のヴィンテージウェアによく見られます。
おわりに
ご覧いただきありがとうございました。
いかがでしたか?
洋服はパーツとパーツが縫い合わされ出来ています。そこの縫製仕様1つにも歴史があるのですね。
なかなかマニアックな内容になってしまいましたが、こういった細部にもこだわりを持って洋服を作っているブランドも多いです。
縫製仕様は、消費者には伝わりにくいですが、デザイナーの服に対する熱量が垣間見える一番のポイントなのかもしれません。
今後も歴史を切り口にファッションが何倍も面白くなる記事を執筆していきますので、よかったらスキ・フォローお願いします。
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