「これから先、あなたはみんなのいくつものifに答えることになるわ。」
「あなたはこれから先の人生、いくつのifに答えられるかしら?」
カナダで出会った、洗練された生活をしているお母さんがそう言っていたのを、不意に思い出した。
彼女は言っていた。
「あなたの人生は、本当に素晴らしいわ。みんながあなたのことを知りたいと思う。それは、あなたが多くの人と違う歩き方をしているからよ。〝安定〟を捨てた人が、なぜそんなに〝安心〟して生きているのか。みんなが知りたいのはそう言うことなの。きっと長く生きれば生きるほど、みんなは旅の話ではなく、人生の冒険の話を聞きたくなるはず。人生のチャレンジをした話を。」
今日、松本深志高校の生徒が来て、「探求の時間の授業のテーマに、サイクルツーリズムについて聞きたい」と言ってやって来た。
「サイクルツーリズムで地域活性化はできるか?」
いくつか質問されたことを集約したら、こう言うことだった。
「小口さんの口から、この地域は世界にも誇れる魅力的な場所だって言って欲しいんです。」
決して彼らはそうは言っていない。
でも、僕はそう受け取った。
彼らはすでに地元のことが大好きで、サイクリングを通して地域の魅力を知っている。
その魅力に自信を持つためには、外の世界を知る目が必要だった。
もしかしたら、彼らは僕のその言葉を求めるためだけに来たのかもしれない。
まるでどこかの国の神様のように、地域のメッセンジャーとしての活動をこれからも頑張れと言われたようだ。
カナダ人の彼女は言っていた。
「これから先、あなたはみんなのいくつものifに答えることになるわ。」
世界を周った宿命か。
僕は彼女の名前が一発で好きにになったのを思い出す。
「Dawn」
日本語で、「夜明け」だ。
夜明け前は、一番寒いから一番美しい。