僕が好きなのは、“旅”と“自転車”なのではなく、“自転車旅”が好きなんだ。
どちらも欠けることはできないのに、掛けることで重乗になるから不思議。自転車旅は、自転車でも旅でもないんだ。
そう、それを実感させてくれる絶対不可欠要素が“人”だった。
「ちゃりんこくん」
そうあなたが何度も呼びかけてくれたから、僕はデング熱で死にかけた魂をこの世界に呼び戻すことができた。
旅の目的地が“世界遺産”から“会ってみたい人”に変わり始めたのも、旅をして2年目くらいのインドあたりからだったかもしれない。
数日前、初めて弔電を打った。誤解しないで欲しいが、新型コロナウィルスの影響ではない。だからこそ・・・。
訃報はインドでお世話になり過ぎた方のものだった。
まだ、60歳前だったと思う。
なんで僕は帰国してすぐに会いに行かなかったのだろう・・・。
自分を殺したくなる。
アフターコロナで人々は幸せの価値観を変えると言われる。
僕はこう思う。
「“変える”のではなく、“帰る”だと思う」
元いた場所に帰る。そう、還るかな。
明日、生きている保証がない。
−30℃の自転車旅の中や、エボラ出血熱蔓延地帯、テロリストが外国人誘拐がブームと言われるような地帯、サイクリスト狩りが横行する地帯、そんな中での当然のルールだったはず。
後悔する前に、一本のメールでもいい。
改めてこんな時だからこそ、大切な時間を過ごそう。
今夜は、お世話になったあの方と、1杯交えよう。僕とあの方の間には、美しい花よりはきっと大衆じみたインディアンウィスキーだと思うから。
あなたに教えてもらった味で、今日はあなたを送る。