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アイドルファンとライブ

1年ほど前からライブプロ所属の北海道を拠点として活動している”フルーティー”というアイドルをひそかに推している。

キッカケは去年の冬に温泉旅行へ行った際、そこで開かれていた地域のお祭りに出演しており、一緒にいたメンバーとの雰囲気も相まってけっこうノリノリで楽しんでたらそのうち「え~、なに可愛い~、いいなぁ~」となったからだ。

AKBブームの中学時代で総選挙に一喜一憂する輩もいたのだが、おっさんの書いた歌を歌いおっさんの考えた服を着て口パクしているグループに何熱くなってんだよwと一蹴しており、全くアイドルというものに触れてこなかった。そんな僕がはじめて楽しもうと見たグループがそれだった。
分母1に対して分子1、雛がはじめて見たものを親と認識する、まさに”刷り込み”的に推しており、推す理由に「元気で~」「頑張ってて~」「この子はああでこうで~」なんて明確ものなく、かなりふわっとしている。

よくよく考えたら身の回りの物のほとんどにおっさんはなんかしらの介入をしているわけで…、未来の自分のためにも謝っておこう。

ごめん、おっさん

なので、こう推すといっても、ライブに行き尽くして物販交流してという感じではなく、TwitterとYouTubeチャンネルを追っているだけなのだが、外側からワイワイニヤニヤしているのが意外に楽しかったりする。

個人としてはぶどう担当ゆめかちゃんを応援していたのだが、それもつかの間、僕がフルーティーを推してから約5か月後に引退発表をしてしまった。
ペットが死んでからすぐに買いなおす人が本当に嫌いなのだが、グループそのものを応援している手前、個人的な好みも出てくるのはしょうがない。

ぶどう担当ゆめかちゃん無き後、みかん担当さえちゃんを応援し始めた、みかん担当さえちゃんは入れ代わり激しい中、3年間ほど在籍しており、ファンも多い、その為やめないだろうな~と高を括っていたのだが、事もあろうかと5か月後に引退発表をしてしまった。

そうなってしまうとさぁ大変だ。
何らかの能力者なのかもしれない、”運命の5か月間(カウントアップ)”とでも名付けようか、それとも”UN LIKE”という名の否定者なのだろうか、父親の残したゲームをクリアするにしろ、神を殺すにしろ、どうしよう弱すぎる…。
5か月という微妙過ぎるタイムラグ、絶対その間にやられるのが目に見えている。

101回目のプロポーズで武田鉄矢演じる達郎やワンピースのエニエス・ロビー編でニコ・ロビンに対する麦わらのルフィのような「もう、来ないで!私に近づくと不幸になる」的なキャラに対してその呪縛を破ってくれる存在は現れないのか?現れないのだろうなぁ……。


そんな事を考えながらフルーティー第18期のメンバー、プラム担当ゆいなちゃんを応援し始めた。



そんなある日、友人とライブに行った。
お互い時間がある日だったり、2月のキャンペーンで初めてライブに来る人はドリンク代のみで見ることが出来たりと、色々とタイミングが良かったので思い切って行ってみた。

すすきのと中島公園の間あたりのスペースアートスタジオという場所で、3代目HAPPY少女→フルーティー→One of One love →Geek という出演順だった。

学校の教室くらいの大きさのライブ会場の中、50~60人のファンが集まって、今か今かと始まりを待っていた。
僕たちは端っこに陣取ることに成功し、初めて行くアイドルライブの独特な雰囲気を楽しんでいた。

始まる直前、5~6人の女の子たちが、「すみません、すみません」と方合掌しながら観客の中を縫って舞台袖に入って行った。
まさか、その人たちが最初に出演する3代目HAPPY少女だとは思わなかった。

そんな姿個室の居酒屋でトイレ行く時、それかバスを降りかけたものの忘れ物に気づき座ってた席に戻る時のポーズだぞ…。
いいのかアイドル…、そんな事を気にしていたのはおそらく僕たちだけだった。

出てきたな~と思ったら、音響ガンガン、ステージビカビカ、いきなり始まった、『今日はよろしくお願いいたします~』みたいなのはないのか…。
それと同時にファンたちの強烈な声援が始まった、声援というより怒号、咆哮、叫び声に近かった。こんなに大声を全力で出す人は、いつの日か車両を往復しながら「おはようございます!おはようございます!」と座っている人に元気にあいさつする人を南北線真駒内駅で見て以来なのでさすがにびっくりした。

おはようございますおじさん、おはようございますというものの、時間は17時とかで、どちらかというとこんにちは、もしくはこんばんはだ、業界人っぽい挨拶を一般に強いらないで欲しいなぁ。。。

一番盛り上がるところで各々の推しの名前を叫ぶのだが、もう何て言っているのかわからない。いや元々なんて言っているのかわからない合いの手なのだが輪をかけてわからない。進撃の巨人でたまにあるひたすらに”オオォオオォオッ”となっているコマのそれに近い。

オオオオオオ状態なので「帰れー!帰れー!」と言ってもわからないのだろなーと思ったのだが、それに気づかれた瞬間帰るのは僕たち、むしろ無事に帰ることが出来るかすらわからないまである、さすがに巨人のクソになるのは嫌なので言うのを躊躇った。

お目当てのフルーティーの出演が終わった後、人ごみにあてられてしまったので一旦外に出て、物販が始まるタイミングで戻って来た。

物販はグループのグッズや個人のグッズ、1分間お話しできる券など売っており『あぁ、アイドルのライブだぁ』と思った。
なぜかフルーティーではなく、お互い3代目HAPPY少女のtシャツを買う流れになり、オレンジ担当リーダーの藤本やよいちゃん、通称やよたんのtシャツを購入した。

tシャツを買ったらもれなく1分間お話しできる券が付いてきた、2枚。
2枚…、ということは2分間、120秒間お話をしなければならない、
そう考えた瞬間強烈なプレッシャーが襲ってきた。

物販の中盤あたりでお話できる券は20枚ほどはけていたので、単純計算で40枚分、40分間オレンジ担当リーダーの藤本やよいちゃんは知らん奴と話さなければならないということだ。
その中には1秒でも長くはなそう、少しでも覚えてもらおうという客もいるだろうし、緊張のあまりなかなか話せない人もいるだろう。

僕が逆の立場なら無理だ、40分知らん奴と話し続けなければならないことに加え、その人たちはそれを買っている、その分の価値を提供しなければならない、耐えられない…。
強烈なキャラクターの人には引きつった笑顔で「ヘヘヘッ」と言う事しかできないだろうし、話さない人に対しては『うわ~自分ばっか話しているけど大丈夫かー?』と変に焦ってしまうだろう。あげく、「お前は俺のこと知ってるかもしれないけど、俺はお前のことなんて知らないし特に興味もない」と謎の逆ギレを起こしかねない、こんな奴巨人のクソにでもなった方が世界は平和だ。

そんな僕なのであまり自己主張せず、かといって話さなすぎもせず、無味無臭な空気のような存在でいることを心がけてオレンジ担当リーダーの藤本やよいちゃんとお話にはせ参じた。

「いやぁ、今日初めてライブ来て~」
「あ、わだです…、いや、別に覚えないでいいですよw」
「あ~、24ですねー」
「あ、はい、ありがとうございましたー、楽しかったのでまた来ると思いますー…」

・・・・・

もう最悪だ、巨人のクソになりたい……。


童貞っぽく見られたくないが故イキるものの、かえってそれが童貞感に拍車かけちゃっている童貞みたいになった、絶対に話さないタイプに分類されている、それに加えて名前を聞いてくれて覚えますねーって言ってくれているのに「いや、別に覚えないでいいですよ」ってなんだ失礼&意味わからん過ぎる、もう帰りたかった、もう帰るのだが。

そんな事があったと人に話したら「めんどくさい客ですね笑、普通に話したらいいのに」と一蹴された。
『普通に話すってなんだよぉ…』


楽しかったのでライブにはまた行くと思う、グッズも色々持ってたら面白いのでまた買いたいと思った。
ただ、何かしらを買うごとにお話しできる券がついてきたらどうしよう…。
「や、いらないです」と断るのも失礼になるし、お話にいかなくても進行に支障をきたすであろう、人にあげる事も考えたがそれもダメだ。
オンラインショップでの購入も考えたが、割とその場のノリ的なものもあるので、結局買わないだろう。

『どうしたらいいんだ、うぅ』



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