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ロマンのかたまり―【競馬漂流記 では、また、世界のどこかの観客席で】

7/9、7/10の二日間の間に、北海道苫小牧市で約180億円の金額が動いた---これは日本最大級のサラブレットセリ市の購買金額だ。
まだ産まれて間もないサラブレットに1千万~1億以上の値段がつき、それを購入する馬主さんがいる。
お金持ちの道楽と言ってしまえばそれまでだが、なぜそんな大金を出してまでサラブレットを買うのか。
また馬主さんだけでなく、多くの人々が(かくいう私もその一人)競馬に夢中になるのはなぜなのか。
その答えの一端がこの本には描かれていると思う。

「競馬漂流記 では、また、世界のどこかの観客席で」 
高橋源一郎 著 集英社

競馬関連本を数多く読んできたが、この本が私の中で一番だと思う競馬エッセイだ。

著者の高橋源一郎さんも競馬の魅力に憑りつかれ、大金を水の泡にしてきた人である。
(小説の三島賞の賞金全額を日本ダービーに突っ込んで使い果たすというエピソードの持ち主)

本書には、高橋さんが世界各地の競馬場で体験した現地の競馬ファンとの触れ合い、名レース・名馬の振り返り、そしてそれにつながる血統のエピソードなどが記されている。
競馬をきっかけに現地のファンと仲良くなり、交流を深めていく描写が多々あり、読めば読むほど自分も体験したいとの思いが強くなっていく。(英語をはじめ、外国語はからっきしダメですが、、、)

またブラッドスポーツと呼ばれるだけあって、血統の深さ、つながりがとてもおもしろい。
英国で全く活躍馬を出せずにいた種牡馬の子供が、たまたま日本に輸入されG1である菊花賞を勝ったり。その馬が日本で種牡馬として、血を残していったり。
一つの国で失格の烙印を押された血統が、場所を変えて活躍馬を出すことがよくあるのがまた楽しい。

本書でも高橋さんが体験しているとおり、この血の巡りが各地のファンとの話のタネになり、血統だけでなく人もつながっていくということも競馬の魅力の一つではないだろうか。。

一般的に競馬はギャンブルとして認識されているかもしれない。もちろん(外れることが大半ですが)馬券を当てることは嬉しいし魅力の一つでもある。
ただ馬券だけがすべてではない。

そういったイメージを持っている人は、高橋さんのように世界各地の競馬場を巡ってとまでは言わないが、どこでもいいから一度競馬場に行ってライブで体験してほしいと思う。

競走馬が間近を走る迫力、観客の盛り上がり、血統の面白さ、それに加えて馬券まで当たったならすぐにハマっていくだろう。

観客席で競馬バカと会えることを楽しみに、また私は競馬場に向かうのでした。


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