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YES 海洋地形学の物語      Tales From Topographic Ocean(1973)               創作の秘密その2

はじめに
イエスの2024年9月の来日公演ふたつ(19日の東京、23日の名古屋)に行ってきました。名古屋はバンド演奏を聴くのもするのもちょうどいい大きさで息が合った演奏をしてました。ちょっとテンポを早くしたためかミスもありましたけれど。「究極」からの2曲はよかった。
かつて「究極」が出された当時の日本での評判は熱く、高いものがありましたー当時の音楽専科を読んだ限りです、唯一、今も現役のメタル評論家は冷めた見方をしていましたー。私は小躍りしましたけれど会場の周囲の方々はちょっと冷めていました。
スティーヴ・ハウは2時間のライヴのうち、着席演奏もあり、膝をやすめるシーンもありで、もしかしたらスティーヴ・ハウ最後の日本公演かもしれません。

来日公演プログラム
コンサート会場で手に取って読んでみました。写真の見栄えがいいですね。私が前回お示した内容をカヴァーする「海洋地形学の物語」の創作から21世紀にライブ演奏するまでの顛末が最新のインタビューを交えて事細かに記されていました。ただしあちらは有料です。

「危機」が古びないわけ
「海洋地形学」が「危機」以上の作品になる自負がジョン・アンダーソンにはありました。
 イエスのファンにもクリムゾンのファンにも心外でしょうが、キング・クリムゾンが「21世紀の精神異常者」を出した後、海を舞台にした「ポセイドンのめざめ」を出したように、イエスも「危機」のあと大海を相手にした作品をめざしたのかもしれません。
「危機」は何の危機か、抽象的というか象徴的なため一概にいえませんが、クリムゾンは狂気、ピンクフロイドも狂気、ELPは悪、怪物をテーマにして単に演奏が複雑で難しそうなだけでない人気を博したのでした(ジェネシスは私にはわかりません)。それは狂気を内包し、悪をはらむ芸術の魅惑、反復して聴くことに堪える面白さといえるでしょう。

「海洋地形学」の立ちなおりに時間がかかったわけ
作品そのものが長大で緩慢だからといってしまえばそれまでですが、批評家に酷評されファンにさほど見向きもされなかったことも一因でしょうか。
批評家が評価しえなかった作品が後年再評価されることはたくさん事例があります。酷評から立ち直るのはしんどい。
例えばルーリードのメタルマシーンミュージック、ルーリード&メタリカのLULUがそうです。
海洋地形学についてはスティーヴ・ウィルソンの功績は大きいと思います。こちらも賛否はあるでしょうけれど、作品に新たな聴き方を提供したことに違いはありません。

今回の来日公演では、スティーヴ・ハウがどうしてもライブで演奏したかった曲を聴いた感じがしました。いわば拾遺曲特集。
それゆえ今回がイエス来日公演の見納めかもしれないと思ったわけです。




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