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潮の満ち引きは月の引力のせいだっていうけど、月の反対側がなんで満潮になるの?という疑問と孫正義

潮の満ち引き、干満の差があるのは、月の引力のせいなんだよ、というお話は、かなり小さい子供でも知っている。
とはいえ、最初聞いた時は「へえ、そうなんだ、月がある方向に水が引っ張られて、そちら側の海面の高さが高くなって満潮になるんだ」と考える人が多い。
事実はそうではない。月に近い側が満潮になるところまではいいんだけれども、その反対側、月から遠い側も海面が高く、満潮になる。
これを聞くと結構な割合の人が「え、なんで?」と感じる。直感的には理解ができない。月の反対側の海面は、むしろ海面が低くなる方向に、月の引力は働くんじゃないの?高くなるわけないじゃん、と。
自分の中で、自分の子供に説明するならこう言うかなあというのをまとめたのでよかったら読んでみてほしい。

まずここを飲み込んでほしい

地球も月も、どちらも宇宙空間に浮かんでいる天体だ。どこにも固定はされていない。なので、他の天体の引力の影響を受ければ、そっちに引っ張られる。この「どこにも固定されていないんだから、引っ張られればそっちに動く」というのがとても大事なポイント。
また、一方的に引っ張ることはできず、常にお互いに引き合うことになるということもポイントといえる。重い側の天体が受ける影響が小さいけれども、それでも常にお互いに引き合うのだ。

一旦ここでは地球と月という2つの天体のことだけを考える。太陽も他の惑星も無視して、その2つだけを頭に浮かべてみよう。
この時、地球と月はどういう影響を及ぼし合うか。
答えは簡単で、当然、引力によってお互いに引き合う。お互いの方向に落ちていくと言い換えてもいい。お互いに落ち合っているのにぶつかったりしないのはなぜかといえば、それは「引き合いながら、横に逃げているから」と言える。

地球の周りを月が回っているイメージは浮かべやすい。円形の軌道に対して、月は引力がなければ接線方向にまっすぐ飛んでいくはずだが、地球に向かって落ちているために、結果として円形にぐるぐる回るわけだ。月は地球に向かって落ち続けている。
上では単純化するために、地球を固定して考えたら月が地球に向かって落ち続けているという表現をしたが、逆にも言える。地球は地球で、月に向かって落ち続けている。どちらも相手に向かって落ち続けている。

ここからは、月が地球の周りをぐるぐる回っていることなども一旦捨て去り、地球は月がその時いる方向に向かって、落ちているんだ、ということだけを考えてみてほしい。

落ちる、とは。自由落下、とは。

引力の影響で、何の抵抗も受けずに自由に落ちている状態を自由落下という。月と地球が宇宙にぽっかり浮いているだけ、という状況では、短く区切った時間において地球は月に対して自由落下しているとみなしていい。
引力の方向や強さが一定な場合に、その中で自由落下すれば、その落下している主体は、その落下の原因になっている引力を感じなくなる。月の引力に引っ張られて、地球全体が、その力のままに動いていく結果として、月の引力自体を地球は感じられなくなるはずだ。

月は遠くない

だが、上で書いた「引力の方向や強さが一定な場合」という前提は、地球と月においては全く成り立たない。月が無限と言っていいほどに遠くにあるならば、引力の方向や強さをほぼ一定だとみなすことができる。でも、地球と月くらいの距離では、そうではない。地球上でもその位置によって、月からの距離が変わり引力の強さが変わるし、引力の角度も変わってくる。

でもここでまた話を単純にするために、地球の中心(重心、以下A点と呼ぶ)と、月の中心の2点を通る直線を引いたとして、その線が地球の地表と交わる点を考える。球と線の交点であり、この場合は2点ある。月に近い方をB点、遠い方をC点と呼ぼう。この3点における、月の引力の影響を考える。

さて、核心だ

まず、A点において、月の引力の影響はどうなるかというと、これは全くの0になる。地球全体が月の引力に対して自由落下しているため、その重心ではある種の無重力(月の引力にたいして)となる。なので、このA点においては、月があってもなくても何の影響もない。

次に、B点を見てみよう。先ほど、A点でちょうど月の引力の影響がキャンセルされて0になっていることを説明した。そして、B点は、A点よりも、地球の半径分、月に近い。月に近いから月の引力はより強く働く。自由落下しているから無視できる分を差し引いても、まだ月に向かって引っ張る力が余っている。そのため、B点では、月の方向に向かって力が働く。これが、月に近い側の海が満潮になる理由だ。

最後にC点を考える。C点は、A点に比べて、月から遠い。そのため、月の方向に向けての引力が、C点の方が弱い。C点においても、自由落下している影響で、A点に働く引力と大きさが同じで逆向きの力が引き算される。結果、C点においての、月の引力は差し引きで負の値となり、つまりは、月とは反対方向に向けて引っ張る力として働く。だから、月から見た地球の反対側の海が、満潮になるのだ。

最後に無理なたとえ話

さっきは地球と月だけが宇宙に浮かんでいる状態をイメージしてもらった。
せっかくだから、もう少しビジュアル的に想像しやすいたとえ話を試みる。

宇宙に太陽と、マスクをしている巨大な孫正義の顔だけが浮かんでいると想像してほしい。
孫正義は太陽の方を向いて、太陽に対して落下しているとしよう。
この時、自由落下をしているので、孫正義自身は太陽の重力を感じないはずだ。空気抵抗もないので、スカイダイビングの時のようにほっぺたが「ぶばばば」と揺れる感じもないだろう。
さて、ここでマスクは、孫正義本体の重心よりも、太陽に近い。とすると若干、全体平均よりも強い重力を受けている。であれば、全体にかかってくる加速度でキャンセルできない分の重力が少し太陽方向に向かってマスクにはかかってくる。なので、太陽の方向に、顔から少しマスクはひっぱられ、ゴムが伸びてその張力でバランスされているはずだ。
この時、顔全体は太陽方向にグングン加速していることを忘れないでほしい。
ここで、孫正義の名文句を思い出したい。
かつてTwitterで彼はこう言った。

髪の毛が後退しているのではない。 私が前進しているのである。

https://x.com/masason/status/288641633187147776

と。
つまり、彼の髪の毛は可動式であって、髪の毛を後ろに残して彼だけがより前進することが可能なのだ。
太陽からみて、髪の毛は遠方にあり、孫正義全体平均よりも弱い重力を受けている。そのため、孫正義全体にかかる加速度よりも弱い加速度しかかからない。そのため、グングン加速する孫正義に対し、徐々に生え際が後退していく。だが、おそらくはまだ活力を失っていない毛根が、ある程度の後退で耐えてくれるだろう。頑張れ、毛根。

つまり「生え際が後退しちょっとマスクが前方に浮いている孫正義」、これが潮の満ち引きの正体と言える。

以上、お子様になぜ月と遠い側の海が満潮になるの?と聞かれた時に、「髪の毛が後退しているのではない。 私が前進しているのである」からだよ、と教えてあげてくださいね、というお話でした。

最後に

分かりやすく書ける気がして書き始めたけど、難しいな。
もっと精進します。

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