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素数ゼミって実は4n+1ゼミだったんじゃない?という疑問
素数ゼミって聞いたことある?
私は随分昔、十分な若さがあった頃、初めて素数ゼミの話を聞いた。
その時に聞いたのはこんな説明だった。
「北アメリカに、素数ゼミと呼ばれるセミがいる。13年ゼミとか17年ゼミと呼ばれている。そいつらは集団ごとに、土の中に何年間いるかが異なっていて、その期間が13年の連中は13年ゼミ、17年のやつらは17年ゼミと呼称される。もともとは12年ゼミ、14年ゼミやら15年ゼミ、16年ゼミなんてのもいたはずだ。素数ゼミも、昔はいたはずの〇年ゼミも、一定周期で土から出てくるセミという意味で「周期ゼミ」と呼ぶ。周期ゼミは、他の集団と同じ年に生まれてしまうと互いに交配してしまって、その子供が土の中に何年間いるかの期間がバラバラになってしまう。結果、同じ集団を維持できない可能性が増える。だから、他の集団と同時に生まれる可能性が少ない集団が生き残りやすい。他の集団と同時に生まれる可能性が少ないのは、他の周期との最小公倍数ができるだけ大きい組み合わせだった場合だ。自身の周期が素数だったら他の周期との最小公倍数が大きくなる。だから結果として、素数の周期のセミだけが、絶滅せずに生き残ったのだ」
ほほう、なるほど、パッと聞いたらそれっぽい。
それっぽいけど、よくよく考えると・・・
今年はアメリカで、13年ゼミと17年ゼミが同時に大量発生する年であったらしい。この組み合わせは13×17で、221年ぶり。前回の大発生はすげー昔だ。1803年、享保3年だそう。
そんなニュースがテレビから流れてきて、ああそうそう、そんなセミがいるって聞いたことあるなあ、という流れから改めて異国の見知らぬセミに思いを馳せ、そしてカッと開眼した。
いや、素数とセミの組み合わせが面白すぎて、思考停止してなかったか、オレ、と。
他の素数は?
まず、素数ゼミといいながら、13年ゼミと17年ゼミしかいないっておかしくね?
20以下だけでも、素数って、
2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19
がある。(合ってるよね?)
まあ、そもそも北アメリカって比較的寒い地域だったりするから、10年以下とかではまだ幼虫として大きく成長できない、とかはあるかもしれない。いくら素数でも小さい数字だと他の数字との最小公倍数も小さくなるし。
でも、11とか19ってどうよ。いい感じの数字じゃない?17はちょうどいいけど19はだめとかって理由、あるだろうか。
さっそく調べてみると、場当たり的としか思えない説が出てくる。
曰く
・11年だとまだ大きく育たないからだめだった
→13年なら十分育つのに?
・19年も土の中にいると、病原菌にやられたり、他の生物に捕食されたりしやすくなる
→17年なら耐えられるのに?
これがもし、現存する周期ゼミは11年ゼミ・13年ゼミ・17年ゼミ・19年ゼミです、とか言われたら、もうこれは「素数が生き残るんだね、ファイナルアンサー」でいいと思うのよ。
でも、13年と17年しかいなくて「素数だったから」は乱暴すぎない?確かにその二つは素数ではあるけれども。なにか別の理由の可能性もあるんじゃないのか。
もう一個の疑問点
もう一個疑問点がある。
周期ゼミが存在したとした場合にその中でどの周期が生き残るのか、というロジックにおいて、先ほどの最小公倍数が大きいやつが生き残るよね理論はまあまあ納得できるのは確か。
だけど、そもそも周期ゼミというものがまず最初に確立する際のメカニズムがいまいち想像できない。
周期ゼミは、少なくとも現存する周期ゼミである13年ゼミと17年ゼミは、素人目には全く見分けがつかないくらい同じ見た目であり、互いに交配できるのだから、概ね同じ種であると言える。
概ね同じ種であるセミの中に、ある時期に12年周期の連中と13年周期の連中と・・・18年周期の連中と、というように1年違いの周期をもった連中が出てきたとして、それってそれぞれが周期ゼミとしての集団を形成できなくないか?
単にバラバラの幼虫期間を経て成虫になるセミの大集団なのではないか。
いっそそれは単なるセミじゃないか?
仮に12年周期のセミの集団が出てきたとして、ちょっと寒めの時期が続いたら、成長が遅くて13年土の中にいちゃったりしない?そんなにうまいこと12年きっかりにみんな揃って出てくるなんてできる?仮にできるとして、未熟な状態なのに全員12年で出てきて全滅したりしない?
ミーンとか言わなきゃいけないのにみんなでバブーって鳴いちゃわない?
調べたらこんなことらしいです
そんなことを考えながらフラフラとネットを徘徊していたらこんな説明があった。
おお、こ、これだ!と膝を打った。
数年前に右膝蓋骨粉砕骨折をした方の膝を打ったので痛かった。
上記ページ含めあちこち見た結果をまとめると、周期ゼミはおおむねその集団で同時に地上に出てくるが、やっぱり早めに出てきちゃうやつ、出遅れるやつは一定の率でいるのだそうだ。
一桁%とかのレベルで。
ただ、その際に、ほとんどの場合、
・4年前に出てくる
・4年後に出てくる
のどちらかなんだという。
13年ゼミならば、9年目か17年目に、17年ゼミならば13年目か21年目ということになる。
そこから考えると、以下のシナリオが浮上してくる。
・周期ゼミは、進化の過程で「幼虫時代の4年間ごとに自分の体の成長度合いを評価し、成虫になるのに十分成長していればその次の年に地上に出る」という仕組みを身につけた(結果、Nを整数として、4N+1年周期となる)
・この仕組みを身に着けることで、同じような気候条件で暮らす集団は、同じ期間で成虫になる特性、周期ゼミの特性を手に入れた
・北アメリカがもっと暖かい気候の時代には、もしかしたら5年とか9年周期の集団もいたかもしれない
・今の気候では、13年と17年の集団が生き残った
同じ集団の中に、遺伝的に若干成長が早めの個体や遅めの個体はどうしても発生してしまうはずだ。だが、それらは皆が共通して持っている「4年ごとチェック」機構のおかげで、大多数の個体よりも4年前とか4年後に成虫になる。
そういう個体は数が少ないため、はぐれもの同士では次世代に命をつなげられないかもしれない。だが、この機構があるおかげで、多数派集団の特性は一層均質化され、同じ期間で成虫になる傾向を強めるだろう。
この説明、私はすごく納得できた。気持ちいい。
結果言いたいこと
結局のところ、上記の説が正しいとするならば、13年ゼミと17年ゼミの存在と、13,17が素数であることとは何の関係もないということになる。
そうではなく、13も17も4N+1であることがポイントだった。
13は素数だからではなくて4×3+1=13だからであり、
17も素数だからではなくて4×4+1=17だからであったわけだ。
そうであれば今日から私は「素数ゼミ」という言葉は使わないことにする。
「4N+1ゼミ」と呼ぶ。
さあみなさんごいっしょに。
「ヨンエヌプラスイチゼミー!」
語呂悪ッ!
そんじゃまた。