CEOが言語処理学会(NLP2024)に参加する意味と、その価値
はじめに
こんにちは。対話型音声AI SaaS IVRy(アイブリー)のCEO/Founderの奥西です。
IVRyは、電話を切り口に音声AI対話システムを開発・運営している会社で、現在、累積12,000アカウント以上での利用や、1500万着電以上の利用があります。
NLP2024(言語処理学会第30回年次大会)とは
言語処理学会年次大会は、言語処理学会が主催する学会で、国内の言語処理の研究成果発表の場として、国内最大規模のイベントとなっています。
今回の年次大会は神戸の国際会議場で開催され、発表件数が599件・参加者数は2,045人・スポンサーは89社と、大会の規模も過去最大となっており、アカデミア〜大企業までたくさんの人たちが参加しています。
2023年にも参加していたのですが、今年は昨年と違い、LLMを用いた研究の発表や、各種LLMとのLLMに含まれる各種要素技術の精度比較など、LLMに関連した社会応用系の研究も数多く存在し、NLPの専門分野に深く詳しくない私でも、興味深く聞ける発表がたくさんありました。
学会の雰囲気
IVRyは2023年のゴールドスポンサーに続き、2024年はプラチナスポンサーとして、スポンサードさせていただきました。
※地味に、NLPコロキウムというトークイベントにもスポンサードさせていただいております
参加当日については、詳しくは以下のブログに参加した内容を書いています。
なぜ行くのか?ひまなのか?
元々コンピュータサイエンスの専攻ではあるもののNLP関連ではなかった人間が、会社の代表(CEO)が参加していることは大変珍しいと思っていて、行ってきた感想や価値を書いていこうと思います。
※NLPはウェルカムな感じではありますが、学会によってはビジネスサイドの人間が入ってくることを歓迎しないコミュニティもありますし、あまりにも理解がない言動をして、質を下げるような方は無邪気に参加しないほうが良いです。
2024年3月時点では、IVRyは従業員が70名を超え、4〜6月には100名近くになっていく組織拡大まっさかりです。
よく50名の壁と言いますが、まさにその通りで従来のやり方を大幅にアップデートし、コミュニケーションフローや組織構造、Mission, Vison, Valuesのアップデートといった様々な経営アジェンダがたくさんあり、更には事業数値も追いかけながら、プロダクト開発や資金調達なんかもやらないといけない。そんな状況です。(現状、取締役もCxOもぼく以外はIVRyにはいません)
なので、全く暇ではないですし、本当に助けてほしい(全職種・全ロール募集してます)んですが、そんなに多忙な状況でも、AIプロダクトを作るIVRyとしては、行く価値が多分にあると思ってます。
理由1: AIエンジニアの採用やAI関連のネットワークができる
元々顔の広い社内のAIエンジニアの存在も多分にありますが、学会にCEOが来ていること自体がとても珍しく、話をするとわりと話を聞いてくれることが多いです。
また、ビジネスや実プロダクトのリアルな困りごとを解像度高く話ししたり、社会課題とつなげて話せることもアカデミアの方々からは、珍しく感じていただけることが多く、価値の非対称性によって、話を深く聞いてもらえたり、覚えてもらえる印象があります。
理由2: 技術の進化の方向性や要素技術の仕組みが知れる
ここが最も価値だと感じていますが、社内のAIエンジニアに解説をもらいながら様々な研究発表を聞くことによって、LLMに含まれる要素技術の解像度があがり、「どの要素技術はLLMで解きやすく、どの要素技術はLLMでもまだまだ難しい」といったことを深く理解することができます。
※そもそもどういう要素技術の集合体として、LLMを捉えればよいのか?のマッピングがわかるだけでも、ビジネス活用においては、相当LLMに対する理解が深まります
べいえりあさんのこの記事では、Writing/Reading/Chatと書いていますが、これらの要素を更に分解した技術についても知見を得ることができます。
例えば、NLU/NLGとか、話者の状態推定や次に話される内容の推定とか、対話に関する技術だけでも、要素分解すると様々な技術や使い方が存在しています。
また、要素技術の性能や研究段階がわかることによって、技術の進化の方向性がおおよそ掴みやすくなると思っています。
もちろん完璧にはわからない部分もたくさんありますが、進化の大局観を得るだけでもビジネスやプロダクトの未来を思考するうえでは十分に価値があると思っています。
そもそも、テクノロジーの進化とは、アカデミア界隈で基礎研究や応用研究が研究され、その研究が大学発スタートアップや企業のLabでR&Dされ、コモディティ化され実用レベルに数年から10年ほどかけて進んでいくことが多いです。
そんな数年後の未来のテクノロジーの話をしているので、ここを理解することによって、ビジネスやプロダクト開発への活用を考えられる土壌ができる価値は大きいのではないか?と考えています。
理由3: プロダクトの構想が非連続に生まれる
研究には、研究のモチベーション(解決したい課題はなにか?)が必ず存在するのですが、このモチベーション(Why/What)を聞きながら、研究内容(How)を聞くことによって、プロダクトや事業の非連続な角度での登り方のアイデアが生まれます。(ぼくは、実際にいくつかのアイデアを思いつきました)
アイデアの生まれ方は、課題と解決方法のinput量とその掛け算から生まれてくるものだと考えているので、テクノロジーの要素技術を理解したり、今後の方向性を理解することによって、世の中の課題を解決する方法とバチンとつながったり、Howを知るからこそ、今まで課題に見えなかったものが課題に見えてきたりもします。
少しわかりづらい適当な例を出すと、空飛ぶ車の技術が当たり前の世界では、従来の当たり前だった「橋をわたって対岸に行く」ソリューションに価値がなくなり、「なぜ遠回りして対岸に行かないといけないのか?」が問題となってしまいます。
このようにHowのインパクト如何では、従来の当たり前の行動が問題に見えてしまうのですが、それぐらい大きなアップデートが、LLMを中心にAIの業界ではこれから数年で起こると思っており、事業やプロダクトの大局をデザインする人間にとっては、非連続な頭のアップデートと、事業のアップデート機会なのではないか?と思います。
なので、IVRyとしては、来年からはSWEやPdM、他の職種の人たちも参加できると、本当の意味でAIプロダクトカンパニーに近づいていけるのかもなぁと思ったりしています。
最後に
学術学会への参加は、CEOや代表にとって貴重な経験であり、企業の成長と革新に重要な役割を果たしたり、研究者やAIエンジニアとの交流を通じて、最新の技術トレンドや研究成果を把握し、新たなビジネスアイデアを生み出すことができると考えています。
今後も、可能な限り最先端の技術トレンドを追いかけ続け、IVRyのミッションである「最高の技術を、すべての企業に届ける」の実現にコミットメントしていきたいと思いますし、そんな仲間を大募集しています。