WordPress が好かれる理由、嫌われる理由
先日、プログラミング関連の Twitter コミュニティー界隈で WordPress を非難したツイートがあり書き方がよくなかったのもあってプチ炎上していました。確かに WordPress を嫌う方をよく見かけますので、これを機会に WordPress がなぜこんなにも広く使われるのか、なぜ WordPress を嫌う人がいるのかについてなるべく技術よりの話にならず、かつ中立な形で個人の分析結果を述べたいと思います。WrodPress を批判する記事ではないことを先に強調しておきます。
好かれる、広く使われる理由
WordPress を使う利点はなんと言ってもそのコミュニティーの大きさにあるといえます。設定の仕方や、使い方を細かく教えてくれるウェブサイトが無数にあり、何も知らない状態から始めたとしても、ネット検索が上手な方であればすぐに WordPress でウェブサイトを立ち上げられるでしょう。コミュニティーの中からたくさんのテーマやプラグインが生み出されていて、きれいな見た目に整えたり、SEO 対策をしたり、EC サイトを構築できたりもします。(2020/5/19 日現在で 56,356個のプラグインが公式サイトに上がっているようです。)カスタマイズすれば見た目も申し分ないサイトができます。
加えて、WordPress を自動設定してくれるようなレンタルサーバーサービス(XServer やロリポップ、さくらなど)の存在も大きいです。WordPress サーバーの立ち上げは調べればできるものの、やはり自分で素のサーバーをレンタルして、ゼロからインストールするのは結構手間です。こういったレンタルサーバであれば契約手続きからサイトを公開するまで小一時間で済んでしまいます。これらのサービスは月額 500 ~ 1000円程度から始められるものも多く、費用もほとんどかかりません。
こういった情報の多さ、手軽さ、運営コストの低さから、ユーザーに好まれたくさんのウェブサイトが作りつづけられています。いろいろな人が助けてくれるし、使用できるツールも揃っているし、よい環境ですね。
では、なぜこのようなコミュニティーが形成されたのでしょうか?それはひとえにアフィリエイトサービスを利用したブログ記事が大きな要因であると私は考えます。商品レビュー記事にアフィリエイトリンクを貼るシンプルなものから、「知らないと損する〜の話」のようなキャッチーなタイトルでユーザーを引き付けるものなど多岐にわたりますが、そういった記事を作成する個人や会社が多く存在しています。こういったサイトの大半は WordPress で作られ、そういった方々は何十、何百のサイトを所持しています。また、サイト制作者はそのノウハウを書いたサイトも同時につくり、新規参入者が増え、どんどん広がって行くという現象が 2000 年代後半に起き、一時の盛り上がりよりも少なくなった印象はあるものの、今も続いています。
こういったサイト群が、WordPress 人気を牽引したのは間違いないと思いますが、そのおかげで個人サイトやブログサイト、会社のホームページをつくるための情報が増え、制作がしやすい環境が整い、ウェブサイトが増え、ウェブに関わる人が増え、WordPress はインターネットに貢献し人気が出たということだと思います。
なぜ嫌われるのか ~感情論編~
上記で述べた大きな利点があるのにも関わらず、なぜ一定数 WordPress を嫌う人達がいるのか?嫌いと言っている方々の感情に対する分析を書きます。
WordPress が金儲けの道具になっているという認識からくるところがあると思っています。上記、WordPress のコミュニティー形成を手伝ったアフィリエイトサイトの一部はあからさまな誘導をしたりするものがあり、そういったサイトの作成に関して書いている「WordPress で稼ごう」というような記事なんかもあります。確かにこういった記事の印象は良くないですよね。WordPress のせいではないですが。
次に、WordPress に対するマウントを取りたい人たちから嫌われる。WordPress は高機能ですが、それでもやれることに限りはあります。自分はもっと自由度の高いことができるから簡単に使えるツールに対して(使用者に対して)、嫌いということで優位であることを示したいという感じでしょうか。これはほんと良くないと思いますし、無視でよいと思います。
「そもそも PHP が嫌い」からくる WordPress 嫌いもあると思います。エンジニア界隈の会話でなんの言語が好き?嫌い?という会話はしょっちゅう出ますが、その中で PHP は嫌いな人が多い印象です。確かに PHP は他の言語と比べて独特な書き方があったり、長い歴史がある分古い文法が残っていたり、そのせいで一貫性のない部分があったりもします。(PHP のバージョンアップにともなって改善はされています)そういう部分が嫌いない人からすると、PHP を使ったら WordPress は自然と嫌いになるのもむりはないでしょう。
エンジニアは新しいものが好き。エンジニアは最先端のフレームワークや技術を好む傾向があり、特に Web界隈ではこの傾向が強いと思います。そのなかで長い歴史があって、ちょっと古い匂いのするものには触れたくないという気持ちが出るというのはあるでしょう。
なぜ嫌われるのか ~実質論編~
WordPress とそれを取り巻く環境にはいつくかの実質的な問題があると思っています。そこから発生する悪い印象が嫌いに繋がっていると思います。
レンタルサーバーのセキュリティ管理が十分でないことがある。これはレンタルサーバー会社が全面的に悪いとも言えないと思いますが、詳しくない人に使いやすくするためにセキュリティ設定が甘いこともあります。2013 年頃、とあるレンタルサーバーの WordPress が一斉に乗っ取られた事件がありました。その原因はデータベースのパスワードが全てのサイトで共通の初期設定をされており変更していない人は全て乗っ取られる可能性があるということでした。そいういったニュースがいくつかあり、身の回りでも実際に乗っ取られた人がいることで WordPress = セキュリティが甘いから使えないという認識になっている人は多くいると思います。これは管理上の問題ですね。WordPress は悪くないですね。
悪いプラグインが存在する。これは WordPress のエコシステムの話です。WordPress は基本的に自由にプラグインがインストールでき、プラグインはデータベース書き換える事ができます。それは悪いプラグインがデータを全消しできることを意味します。ハッカーがもともと利用価値のある機能を提供するプラグインをつくり、バージョンアップで悪意のある動作を入れてくれてくるということもあるようで、十分注意が必要です。ここらへんも不安感、悪い印象につながっていると思います。
WordPress 独自のルールが多い。本格的なカスタマイズが難しい。これは1からシステムを作れる人ほどそう思うと思います。WordPress 独自の知識が必要なので、一般的なプログラミングで流用できない知識を勉強しないといけません。プラグインと組み合わせてのカスタマイズなどもそのプラグイン自体が独自の実装方法をとってたりするので、どういった動きをしているかを自分で調査しないと競合する可能性のある機能のカスタマイズが難しいし、時間をかけてできたとしても限界があります。こういったことでハイレベルのプログラマーからは嫌われる傾向があるのではないかと思います。使わなければいいだけの話なんですが、依頼主から WordPress で制作してくださいと言われることもあるので、常に避けられないのも現状です。
個人の意見
WordPress はその使い勝手やそれを取り巻く環境故に、嫌われることがあります。「嫌い」という単語にすると感情論になりがちですが、そのれっきとした理由がある場合もあり、それは WordPress を使うべきでないところに使っていたり、管理がしっかりされていない場合に発生していると思います。
私は Twitter でプログラミング関連の情報を流していますが、1つ、これから Web 制作やウェブアプリケーション開発を学ぶ人、学んでいる人達に覚えておいてほしいのは、WordPress は万能ではなく WordPress でできないこと、WordPress でやるべきではないことがあることです。ぜひ一度、WordPress がなかったらどういった方法をとるか自分自身で考えてみてください。