瀬戸の釉下彩のカップについて
先日多治見の骨董店で、釉下彩(吹き付け)によって菖蒲が描かれた美しいカップを見つけました。
西浦焼風の意匠、白磁は薄造りで非常に上質なもので、竹をモチーフにしたハンドルもバランスよく仕上がっていますが、裏印は見たことのないものでした。
その後に訪れた名古屋の横山美術館で入手した『瀬戸 美濃の美』展の図録に掲載されていた情報によると、どうやら1900年前後頃の瀬戸・加藤勘四郎による品であることがわかりました。
勘四郎は「菱勘」と号し、染付を中心とする磁器を生産しました。染付に使用する西洋コバルトを入手したのは勘四郎が最初とされています。額や衝立などの板状磁器の製作を得意とし、明治時代に国内外で開催された博覧会に出品し、数々の受賞歴があるとのことです。
アール・ヌーヴォー流行期には、型紙を用いて顔料を吹き付け、下絵付けする西浦焼風の釉下彩による作品も手がけました。
型紙と吹き付けによる装飾は、筆による絵付けほど個性が出にくいですが、白磁の質やシェイプの傾向の違いによって、瀬戸らしさを感じることができると思います。
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