ヤマサキさんと不思議な挨拶

私のよく行くコンビニに特徴的な店員さんがいる。
その名はヤマサキさん。カタカナの名札なので確実にヤマサキさんである。
ベテランの店員さんなのか、名札が金色の縁で覆われている。そんなヤマサキさんは私がバイト帰りに行く水曜の23時前にいつもコンビニにいる。

この人の何が特徴的かと言うと、挨拶である。
私の行く時間は遅いので、ヤマサキさん含め店員さんは品出しをしている。その状態の時にレジに商品を持って行くのが少し気まずいという話はさておき、私がレジに行くと必ず小走りでやってきてくれる、とっても良い店員さんだ。スムーズに会計を済まし、最後に一言、

「はい、アザスー」

このクセしかない、短いアザスーを使いこなすのがヤマサキさんなのだ。
最初は何も思わなかったのだが、毎週行くにつれて気になり始めた。

この日も、いつも通りコンビニに行った。半分、あのアザスーを聴きにいっているような気がした。入店すると、いつもはヤマサキさんのみだが、今日はいつもと違い、もう1人店員さんがいた。顔がチラッと見えた。東南アジア系、外国人の店員さんだった。
私はいつも通り品出し中への申し訳なさを心の中で謝罪しながらレジへ。
対応してくれたのはその外国人ニキだった。
私はこの日に限って晩御飯の弁当を買ったため、
色んな会話のラリーをすることに。

「ククロ、ククロ」指で四角をつくるニキ
ん、何それ
「ククロ、イル?」同じジェスチャー
あ、袋ね、「大丈夫です!」軽く手を振る
「ベント、アタメマスカ」
それは言えるんだ、「大丈夫です!」手を振る

そのままお会計、スマホ決済なのでスムーズに対応。
心配そうに後ろを見守るヤマサキさん。
今日はアザスーは聞けなさそうだ。
袋に入れられた弁当を受け取ったその時、
ニキから一言、

「ハイ、アザスー」

聞き間違いかと思った。ただ声色が確実にニキ。
援護射撃のように後ろから本家のアザスーも聞こえてきた。
確信、ニキはアザスーと言った。
いや、お前もアザスーなのかい。ここの店員は全員アザスーがルールなのか。
マニュアルどうなってんだよ。
そんなことを考えながら、退店しようとした時、
後ろからヤマサキさんがニキに話しかける声が。

「◯◯くん(おそらくニキの名前)、最後の挨拶はね、
ありがとうございます、って言うんだよ。」

いやどの口が言うとんねん。絶対あんたのせいやわ。
心の中で思わず突っ込んだ。ニキ可哀想。

一所懸命先輩の挨拶を聞いて真似しただけなのに、
理不尽な注意を受けている。
でもニキよ、これが日本だ。先輩の発言は時にオセロのように180°変化するだ。
諦めた方がいいよ。

そんなことを今日、久しぶりにこのコンビニで思い出した。
バイトのシフトが変わり、あの時間に行かなくなったため、
長らくヤマサキさんを見ていなかった。
でも今日、散歩の途中に寄ると、ヤマサキさんがいた。なんか嬉しい。
ただ、1人ではなかった。背の高い店員さんと2人。
レジにお茶を持って行くとその人が対応してくれた。
「ヤン」名札に書かれた文字を見て、外国人ニキ2号であると察した。
今回はお茶なので、会話はなし。
気になる最後の挨拶は、
「アリガトゴザイマシタ」
まだ染まっていない。がんばれ、2号。
またこのコンビニに通いたくなった。

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