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これは、僕が高校を卒業する頃の話です。

当時、母に「これからのためにスーツの1着でも持ってなくちゃダメよ」と言われ、地元のデパートに母とスーツを買いに出かけました。

店に着くと、母が店員さんと話し始め、なにもわからない僕は只々 採寸をする店員さんの言うことに従っていました。

そして、後日スーツが到着。今考えると、オーダーメイドのなかなかの品だったと思います。

それから高校を卒業し、僕はスーツを着るような仕事にはつきませんでした。

しかし、仕事でなくともスーツを着る機会というのは沢山あるもので、冠婚葬祭のすべてを このスーツ1着でまかなっていました。

そして僕が30歳を過ぎた頃、祖父のお葬式で、気がついたのです。

数回ずつあった結婚式、お葬式、ちょうど交互にこのスーツを着ている事に。

その数か月後、地元で行われるという いとこの結婚式の知らせが入り、僕は実家に帰りました。

僕はスーツの不吉な事情を説明し「絶対にこのスーツでは行かない!」と革ジャンで家を出たのですが、母に「恥ずかしい事をするな!」と、激怒され 結局そのスーツを着ることになりました。

そして、その数か月後、仕事でお世話になっている会社の社長が亡くなりました。

その後、そのスーツは お葬式で止めておくためクローゼットの中にしまい、僕は結婚式用のスーツを新たに購入しました。

そこから、新しく購入したスーツでの結婚式は続いたのですが、親族や知り合いのお葬式は、あのスーツをしまって以降数年、今日まで開かれていません。

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