うまいランチを食べた

午前中仕事をして昼休みになったので外に出た。
予算1000円くらいでランチをしたい気分だった。
そしてその気分は天下一品に向いていたため、体も自然と天下一品へと流れていった。
しかしその日は定休日だった。

午前中から天下一品で頭がいっぱいだった僕は突然見せつけられた定休日の文字の前で立ち尽くして呆然としてしまった。
なんとか天下一品の頭をラーメンの頭に切り替えて次なるお店を探すことに。そういえば近くにまぜそば屋があったなあと向かった先のまぜそば屋はすでに閉店していた。

ラーメンの頭に切り替えたのにまぜそばもダメなのか・・・・。次候補となるラーメン屋・・・、この際ラーメンならなんでも良い、王将のラーメンでもよかった。なか卯のうどんでもよかった。新しいお店を探すか・・・とスマホを覗こうと思ったときに天の声が聞こえた。

目の前にあるまぜそば屋の跡地のとんかつ屋はどうだろうか。

確かに。そういわれたらとんかつもいいかもしれない。なんだかオープン記念の花輪もいっぱい立っていて雰囲気よさそうだ。
ラーメンより値段高いかもしれないがまあとんかつだし。カツ丼でも食べようか。思いがけないとんかつ屋との巡り合わせに、僕は神に感謝と天を仰ぎ、そのままとんかつ屋へと向かっていった。

店内に入るといい感じの雰囲気で、短髪で髭面の若そうなお兄さんが出迎えてくれた。
注文は食券らしいのでお金を入れる準備をしつつ、並んでいるボタンを眺めてみた。

熟成ロースカツ定食1900円
熟成ロースカツとヒレカツ定食1900円
ヒレカツとメンチカツ定食1700円

あれ？値段高くない？そしてカツ丼がない？
目が悪くなったかと思った。思わずボタンに書かれた値段を何度見かしたし、お金を入れながら安いメニューがないかいくつか並んでいるボタンを凝視したが、どのメニューもおおむねこの値段らしかった。
とりあえず熟成ロースカツとヒレカツ定食を注文して席に着いた。
これは失敗したと思った。とりあえず落ち着こうと思い、料理が届くまでスマホをずっと触っていた。

20分ほどして、料理が届いた。体感では結構遅く感じた。はやく会社に戻らないといけないのに・・・。
次の瞬間、僕は店を出るまで、いやそこから数時間くらい驚きと余韻に浸り続けることになった。

目の前にあるのはご飯とサラダとカツ(量少ない)と豚汁、そして薬味たち。
ご飯はなんと客の一人一人に釜炊きでふるまっているではないか。横を見ると確かに来客に合わせて釜に火をかけているのを確認できた。だから提供時間が遅めなのか・・・、

釜からお椀によそって食べてみる。粒が立っていて柔らかくもなく、硬くもなく、めちゃくちゃうまい。

そして豚汁も啜ってみる。いやめちゃくちゃうまいやんけ。

サラダも食べる。なんかクルトンとかサクサクするやつ入ってるしうまい。なにこれ。

そしてメインとなるカツである。熟成ロースカツ、肉が柔らかく、脂が甘くてとろとろしている。うまいんかい。
ヒレカツも食べる。柔らかくて肉がみっちりしていてうまいんかい。

薬味も山椒とからし、岩塩にソースとしょうゆが並んでいた。どれもちょんとつけて口にはこぶとうまくて仕方なかった。口に運んで驚くたびに周りを見てしまうほどに。

うまいんかい・・・。

浸りながら午後の仕事があるため席を立ってご馳走様と店員に言った。
あ！まだデザートあるんで！待ってください！！

デザートあるんかい。

少し待つといちごのシャーベットが机に置かれた。仕事のことを考え始めていて浮き足立ちながら急いで一口食べたとき、僕の浮き足は床につき、体はどっしりと椅子にあずけるのだった。
デザートもうまいんかい。

デザートを食べた後に店主と思しき人にご馳走様でしたと伝えて急いで会社に向かった。

結局、午後の仕事に間に合ったがあのとんかつの余韻がずっしりと心に残り続けて同僚にチャットを送って妻にはLINEで長文の感想を述べてしまった。

結論、1900円は妥当だった。