読書メモ:専門学校の教育とキャリア形成: 進学・学び・卒業後(植上 一希, 2011)

読んだ文献

専門学校の教育とキャリア形成: 進学・学び・卒業後(植上 一希, 2011)

要約

この書籍は、専門学校が多くの若者を職業世界に送り出してきた一方で、その社会的評価が表面的である点に着目し、教員や学生への聞き取り調査を通じて、教育の実態と現代的な意義を探るものです。
専門学校の発展過程や教育内容、進学者の背景、学びと成長、卒業生のキャリア形成に対する影響が分析されています。特に、専門知識・技能、教員の指導、職業の「現実」が学生に与える影響を掘り下げ、専門学校の役割を再評価することを目的としています。

特に関心を持った箇所

周知のように、現在、青年のキャリア形成の困難が問題化しており、その支援やそのための研究の重要性が高まっている。このような状況において、非常に多くの青年がキャリア形成を行っている専門学校は、実践的にも研究的にも注目されるべきだと思われる。しかし、専門学校の教育やキャリア形成の実態についてはほとんど明らかにされておらず、その意義についての検討もなされていない。このため、ともすれば、「大学に進学できないから専門学校に進学しているのだろう」とか「専門学校は就職のための狭い教育しかしていないのでは」といったステレオタイプな理解によって、現場における教員や学生の懸命な営みさえも、まっとうに評価されないことも少なくない。
こうした研究動向に対し、本書は、教員や学生への聞き取り調査を中心に、専門学校におけるキャリア形成やそれを支える専門学校教育の実態を検討することを通して、とりわけ専門学校の現代的な存在意義について明らかにすることを目的とする。

p.3

編成担当者の認識レベルでの養成施設指定制度の規定力の強さ
教育内容編成における養成施設指定制度の規定力について、資格教育分野の編成担当者たちは全員、その規定力の強さを強調している。その中心が、授業時数や科目の規定という点であり、カリキュラム基準が質的にも量的にも厳しいゆえに、それどおりの授業時数や科目を設定せざるをえず、カリキュラムの基準以上・以外の設定は難しいというものである。

p.79

そして第三に、専門学校段階における学び・成長に対する学生たちの肯定的な受けとめである。第3章でみたように、専門学校生は一般的に「学力」定期資源は豊かではなく、「学校的知識」に対する親和性も高くないという特徴をもつが、本章第2節や第5節でみえてきたのは、専門的知識・技能についての学びや、友人との交流を「楽しい」や「すごい」と積極的にとらえる学生の語りであり、この積極的肯定をより詳しくみると、そこには彼らの進路決定過程や進学要求が関係しており、進路要求の目的的側面が具体的で積極的な者に顕著であったことである。これらをふまえると、好きなことを学びたい、興味のあることを学びたいという学生の要求に専門学校が一定程度応えているといえるだろう。

p.224

自分にとっての学び

本書では、専門学校の教員や学生など、さまざまな立場の関係者に対して丁寧な質的調査が行われており、専門学校関係者が専門学校をどのように捉えているかを知ることができました。
私自身の専門学校に対する捉え方は、高校時代に進路指導の授業で聞いた説明から変わっておらず、今回の読書が実態や課題を改めて考えるきっかけとなりました。専門学校と資格との関係性を語る上で重要な「養成施設指定制度」にも触れられており、この制度の中で専門学校を運営することの難しさを知れたことは、専門学校を取り巻く環境を理解する上で重要だと感じました。
また、専門学校は学生に自分の興味や関心を学ぶ場を提供しており、他の教育機関にはない独自の価値を提供しているとも感じました。資格取得という外部からの需要と、個人の興味・関心という内部からの需要の両方を満たしている点は、専門学校の特徴的な側面だと思います。

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