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読書メモ:私のウォルマート商法 すべて小さく考えよ

読んだ文献

知人にすすめられた書籍を手に取りました。
ウォルマートやその創業者サム・ウォルトンの名前は知っていたものの、具体的な経営手法や人柄についてはほとんど知りませんでした。本書を通じて、小売業界で世界一位となり一時代を築いたウォルマートの実態について深く知ることができ、興味深く読み進めました。

本書の概要

『私のウォルマート商法』は、ウォルマートの創業者サム・ウォルトンが、世界一の小売業を築くまでの経験と経営哲学を語った一冊です。
ウォルマートの成功の鍵として、サム・ウォルトンのさまざまな経営哲学が紹介されています。
本書では、彼の幼少期からの経験がどのようにして経営理念に結びついたのかが詳細に描かれています。また、彼の周囲にいた人々にもインタビューしており、当時のウォルマートやサム・ウォルトンが周囲にどのように映っていたのかも知ることができます。
記載されている内容は、店舗開発、マーケティング、仕入れ、組織運営などの経営に関するものから、家族や地域や社会に対する向き合い方など、多岐にわたっています。そのすべてにおいて、一貫したサム・ウォルトンの哲学が反映されており非常に読み応えのある一冊でした。

印象的な内容

その根底にある考え方は、①すべての努力は客のためであって、企業のためではない。②失敗を恐れず、改善と改革とに挑戦し続ける、という二つの確固たる信念である。

p.11 監訳者まえがき

今考えると、当時のやり方は欠陥だらけだったかもしれない。だが、商品を少しでも安く売ることには徹していた。そして、その後10年間というもの、このやり方で拡大し続けたのである。また、小さな町という市場で顧客とのよい関係を築くこともでき、それが売り上げ上昇につながった。つまり、ウォルマートといえば、お客はすぐに低価格と満足の保証を思い浮かべるようになったのである。ウォルマートがどこよりも安く、万一商品が気に入らない場合はいつでも返品できる、ということが人々の間に定着したのだった。

p.113

こうした重点販売は楽しいものだが、本来の目的は、店長はじめ店のすべての者に、次の教えを浸透させることにあるのだ。つまり、自分の店には、よく目を見開いて観察し、重点販売の工夫さえすれば、爆発的に売れて大きな収益につながる商品がいっぱいある、という教えだ。

p.127

「欠点は探すな、長所を探せ」
ここまでウォルマートの草創期について述べてきたが、この時期、私たちは重点販売という方法で多くの欠陥、仕入体制の不備、理想とはほど遠い品揃え、本部支援機構の不在などを補ってきた。これが逆流を上っていく方法でもあった。商人に徹することで数々の欠陥を補ってきたのである。

p.128

働く意欲を高める法
私はもっと大きな真理を見落としていたのだ。その真理とは、売価を下げれば下げるほど儲かるという、ディスカウンティングの原理と同じ理論である。つまり、給料であれ、ボーナスであれ、割引株であれ、従業員と利益を分かち合えば合うほど、自然に会社に利益がもたらされるという原理である。なぜかというと、経営者側の従業員への対応がそのまま、彼らのお客への対応となるからである。そしてまた、彼らがお客に気持ちのいい応対をすれば、お客は何度でも店に足を運んでくれるからである。

p.220

私たちは顧客の代理だということだ。その役割を十分果たすために、可能な限り商品を効率的に客に届けなければならないのだ。時には、メーカーから直接買うのが最善の方法である場合もあれば、それが効率的でないこともある。その場合は、中小のメーカーと取引のあるブローカーから商品を仕入れるだろう。メーカーから直接仕入れるか、ブローカーを通すか、それを決める私たちの権利は、わが社の顧客第一主義にのっとっているのである。

p.299

自分にとっての学び

顧客第一主義であり、企業のためではなく消費者のために努力すること。それを低価格と満足保証という戦略で表現し、創業者が培ってきた組織文化および組織能力で実現する、という一貫性の高い経営手法は非常に参考になりました。
サム・ウォルトンの徹底した現場視察や競合調査の姿勢は、一種の狂気を感じるほどです。家族旅行の途中でも競合店を見つけると必ず立ち寄り、店員にインタビューをする、という行動はなかなかできるものでありません。
サム・ウォルトンは、さまざまなアイデアを発想しすぐに試し朝令暮改も多かったようですが、それでも組織が壊れずに前に進んでいけたのはブレない経営哲学が基盤となっていたからではないかと想像します。
私はいままでウォルマートのような低価格戦略を実行した経験はありませんが、規模や組織能力を最大限活用して構造的にコストリーダーシップがとれる状況を作ることのインパクトを感じる内容でした。
本質的な哲学を掲げ、リーダーが率先垂範し、成功するまで挑戦と学習を重ねる、というアプローチは、小売業界や低価格戦略採用企業以外にも大いに学びとなると思います。特に草創期のストーリーはビジネスパーソンが勇気づけられる内容になっているので、定期的に読み返したい一冊となりました。

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