論文紹介:専修学校卒業者の就業実態(濱中 淳子, 2009)

昨日に引き続き専修学校に関する論文を読んでいきます。本日取り上げるのは、専修学校卒業者の就業実態についてまとめた論文です。今から10年以上前の論文ですが、問題意識や分析軸など参考になりそうなので読んでみました。

読んだ文献

専修学校卒業者の就業実態(濱中 淳子, 2009)
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2009/07/pdf/034-043.pdf

要約

この論文は、専門学校卒業生の就業実態を分析し、専門学校教育の効果を検証することを目的としています。特に、専門学校卒業生が従事している職業を「要資格職」と「非資格職」に分け、それぞれのケースにおける所得効果と就業意識高揚効果を比較分析しています。
その結果、要資格職に就く専門学校卒業生は、非資格職に就く卒業生と比べて、所得効果と就業意識高揚効果が顕著に高いことが明らかになりました。論文では、専門学校教育の効果は資格取得に関連した領域に限定される可能性を指摘し、職業教育の強化を求める声に対して、資格に結びつかない職業教育の評価をどのように高めていくのかという課題を提起しています。

特に関心を持った箇所

実際、これまでにも社会的地位達成研究のなかで、あるいは政策提言のための証左を生み出すために、社会学者や経済学者たちは様々な実証分析を繰り返してきた。大卒と高卒の地位達成状況の違い。大学進学がもたらす私的/社会的収益率の算出。すでに多くの示唆が生み出されている。しかしながら同時にこれら研究について1つ指摘されるのは、その大部分が、大学教育の効果に着目したものになっているということである。

たとえば、文部科学省『学校基本調査報告書』からは、専修学校卒業生の就職率、そして関係分野に就職した者の比率を得ることができる。2006年度版の調査報告書によれば、専修学校卒業生の就職率は、男子が77.5%、女子が82.9%。関係分野に就職する者に限定すると、就職率は男子で70.5%、女子で76.9%である。

専修学校は、職業教育を大きな特質としている教育機関である。実際、職業あるいは就職を意識した教育が提供されているが、卒業者の現職を細かくみると、教育と仕事との関連のあり方には2つのケースがあることがうかがえた。1)医療や教育・社会福祉、理容などの教育を受けた後に、要資格職(=原則として、参入するときに資格が必要となる職業)に従事するケース、2)工業関係や商業実務といった教育を受けた後に、非資格職(=参入するときに資格を必要としない職業)に従事するケース、である。とりわけ女性の場合、前者のケースに該当する者が多いという傾向も見出されたが、後者のケースに当てはまる者も少なくない。
仕事に役立つ教育を目指しているという点では、前者も後者も共通しているといえるだろう。ただ、所得と就業意識の2つを指標に教育の効果を分析すると、2つの効果ともにより強く確認できたのは、前者、すなわち要資格職に従事している卒業生であることがわかった。逆に言えば、非資格職に就く卒業生たちについて、目立った効果は確認されない。

自分にとっての学び

分析軸として、要資格職と非資格職という切り口を採用している点が非常に興味深いと感じました。本研究では、所得効果と就業意識の高揚効果について分析を行っていますが、要資格職と非資格職の違いが、どのようなメカニズムでこれらの効果に影響を与えるのか、私自身も仮説を立てて考えてみたいと思いました。
私は学部生時代に教員免許を取得したものの、結局教職に就くことはなく、資格を活用する機会はありませんでした。しかし、当時は教員になるための勉強に多くの時間と労力を費やし、その過程や資格取得時の達成感が就業意識に関連しているようにも思います。
教員免許以外には資格を取得する機会があまりなかった私ですが、これを機にキャリアと資格制度についてもさらに調べ、理解を深めたいと考えています。

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