論文紹介:Work careers and serious leisure: The effects of non‐work commitment on career commitment(Fiona A. E. McQuarrie, 1999)

読んだ文献

McQuarrie, F. A. E. (1999). Work careers and serious leisure: The effects of non‐work commitment on career commitment. Leisure/Loisir, 24(1–2), 115–138. https://doi.org/10.1080/14927713.1999.9651261

要約

この論文は、仕事と余暇の時間の関係、特に「シリアスレジャー」と呼ばれる、時間と労力を費やして取り組む余暇活動が、個人の仕事へのコミットメントにどのような影響を与えるかを調査しています。
著者は、真剣な余暇活動に多くの時間を割くことが、必ずしも仕事へのコミットメントを低下させるわけではなく、むしろ仕事に良い影響を与える可能性があることを示唆しています。
具体的には、真剣な余暇活動への参加年数が長いほど、仕事へのコミットメントが高くなる傾向がある一方、現在の雇用主との在職期間や余暇活動に費やす時間が長くなると、仕事へのコミットメントが低下する傾向が見られることを指摘しています。
さらに、上司や同僚からの余暇活動へのサポートは、仕事へのコミットメントに直接的な影響を与えないものの、職場が余暇活動を制限したり、妨げたりすることで、仕事へのコミットメントを間接的に左右することが示唆されています。
本論文は、真剣な余暇活動の重要性と、組織が従業員をサポートする必要性を強調しています。

仮説

  • 仮説1:余暇活動に対する上司の支援が高い対象者は、より高いキャリア・コミットメントを示す。

  • 仮説2:余暇活動に対する同僚の支援が高い対象者は、より高いキャリア・コミットメントを示す。

  • 仮説3:余暇に費やす時間が長い対象者は、より高いキャリア・コミットメントを示す。

  • 仮説4:仕事中に余暇について考えることが多い対象者は、キャリア・コミットメントが低い。

方法

  • シリアスレジャーへの参加者であり、かつ有給の仕事を持っている人々を対象とした。レジャーは「参加者のコミットメントとスキルアップを必要とする」という観点で、フィギュアスケート、ラグビー、アルペンスキーの参加者を対象とした。

  • フィギュアスケートの参加者は、インターネットを通じて募集されました。アルペンスキーとラグビーの選手は、州のスポーツ協会を通じて募集されました。

  • 仕事生活とシリアスレジャーのキャリアに関する情報を収集するために、アンケートを実施した。アンケートには対象者のシリアスレジャーのキャリア、仕事、キャリアへのコミットメント、上司や同僚からのサポートの認識レベル、仕事中やスポーツ中に考えることなどに関する質問が含まれていた。

  • アンケートで収集されたデータは、収集されたデータは、記述統計、相関分析、重回帰分析を用いて分析された。

結果

  • 仮説1:余暇活動に対する上司の支援が高い対象者は、より高いキャリア・コミットメントを示す。

    • 仮説は支持されなかった。上司のサポートレベルとキャリアコミットメントの間には有意な関連性は見られなかった。

  • 仮説2:余暇活動に対する同僚の支援が高い対象者は、より高いキャリア・コミットメントを示す。

    • 仮説は支持されなかった。同僚のサポートレベルとキャリアコミットメントの間にも有意な関連性は見られなかった。

  • 仮説3:余暇に費やす時間が長い対象者は、より高いキャリア・コミットメントを示す。

    • 仮説は支持されなかった。余暇活動に費やす時間(スポーツ時間)はキャリアコミットメントと有意な関連性がありましたが、その関係は正ではなく負でした。つまり、スポーツに費やす時間が長いほど、キャリアコミットメントは低くなった。

  • 仮説4:仕事中に余暇について考えることが多い対象者は、キャリア・コミットメントが低い。

    • 仮説は支持されなかった。仕事中に余暇活動について考える頻度とキャリアコミットメントの間には負の関連性は見られましたが、統計的に有意なものではなかった。

自分にとっての学び

私が注目したのは、余暇活動に費やす時間がキャリアコミットメントと負の相関にある、という結果でした。仕事でもレジャーでも、真剣に取り組む対象が複数あると、一つの対象に対するコミットメントが低下するのは、経験則として納得のいくところです。
人が真剣に取り組むための資源は有限であり、それを分散させるか集中させるかは大きなテーマだと感じます。本業と副業のバランスが注目される近年の動向にも、同様の構造が見られるのではないでしょうか。
また、キャリア理論では、仕事だけでなく余暇や地域活動もキャリアとして捉える考え方があります。長い人生の中で、何にどれだけ真剣に取り組むかをどのようにマネジメントしていくかは、今後ますます重要なテーマになると感じました。

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