鉄と海の400年

幸田リョウ | チームワークデザイナー

2023年5月6日 21:02

Facebook 4/15 2023 より

世界２位面積の人造湖児島湖の締切堤防から

漫画進撃の巨人では「壁」の存在が物語に「凄み」を出していました。外敵から身を守るためのカナメ。崇められる信仰の対象。実は兵器を格納している貯蔵庫。そして、加害者意識が作り出した殻として。

壁は、ぼくらのリアルな世界にとって何かを突きつけてくるメタファーでした。壁とは、ベンリなもので、時に役に立ち、時により大きな問題を作り出します。進撃の巨人では、そんな壁が崩れる「壁ドン」以降が、さらにリアルすぎる展開でした。

瀬戸内海の児島湾で 1951年に始まった「海の壁」づくり。

8年かけて1500mの海の壁＝締切堤防ができました。それが、児島湖の締切堤防です。

現在は、南海トラフ地震を想定すると壊れるだろうし、その周辺の干拓地や市街地への津波水害想定が高いので急ピッチで「壁」の工事が進められています。

壁のなか、は世界２位の大きな人造湖になり。塩害はなくなり干ばつ害も減り干拓地が広がり営農地区は広がりました。

干拓がさらに加速していく400年

「海の壁」は、この大きな堤防だけでなく。瀬戸内海では、1200年前の奈良時代から「干拓」という形でずっと行われてきました。

この辺りは以前は、ぜんぶ海。20余りの島が浮かぶ「瀬戸の穴海」でした。
同じ頃、中国山地では、タタラ製鉄が始まり海に砂が流れつづけ、400年前くらいからは戦国大名たちによる干拓がさらに加速していきます。

海は「壁」だらけになっていきます。もちろんそれらは、水田を作り治水をし人口を増やし産業を大きくすることに貢献してきました。

私がこども時代から慣れ親しんできた「私にとっての」児島湖は、生活排水による汚染の湖でした。それはいわば壁の外にいる人たちのために、壁の中が背負ってきた業の湖です。

それは今も変わっていません。

人が陸に海に珊瑚礁につくってきた壁。
壁で何かを隔離する。
そのうち壁のおかげと崇拝するようになる。

これ以上、一体どこに壁を作りたいんでしょうか。

何かを壁で隔てたら壁の中はどうなってもいい何をしてもいいというスタイルから「社会をよくする優しい壁ドン」へ。

壁の中のマイナスを受けたものたちを
壁の外が内包して一緒にぐるぐる支えていくルネッサンスへ。

壁を中を、美しく再生させるには
それは浄化し循環させる新たなサイクルが必要です。