2023年8月21~23日委員会視察③ 二日目午後
視察二日目の午後は福岡市でデジタル化についてお訊ねしました。
デジタル化について聞くのに、直接行って紙資料をもらうというのもなんだか皮肉なものですね…。
概要
・福岡市はコロナ禍でデジタル化の遅れを認識
・外部アドバイザーに著名人を取り入れ全庁を挙げてDX化に取り組む機運を醸成
・市の方針を理解してもらうための取り組みを官民連携で進めてきた
・目標は「誰でも使えるデジタル」と「人のぬくもり」の両立
・モデル都市並以上のアナログ規制撤廃推進で業務の無駄も削減
・遠隔相談業務などこれからも新しい取り組みを進める
・強力なリーダーがあってこそ進められる
記録と感想
福岡市といえば何よりデジタル化先進都市として地方自治に関わる者の間では有名です。ほんの数年前まではあまりそうした印象はなかったですが、近年課題となっている人口減少に対し、なにがしかの対策を打たねば…といったところに、デジタル技術の革新やコロナ禍などが合わさり、全市を挙げて取り組もうという流れになった、ということでした。
そもそもDX化ってなんやねん?
DX化は「デジタルトランスフォーメーション」の略称で、「デジタル技術を用いてビジネスや事務作業に変革をもたらし、組織と社会の質を上げていこう!」という取り組みです。単純に作業やシステムをデジタル化するだけではなく、デジタルを取り入れた結果、どんな価値を生むのかが重要になってきます。
福岡市のDX化背景
福岡市でDX化が急速に進んだ背景には、前例にとらわれない外部との連携と市の執行部がバックについたプロジェクトチームが結成されたことが大きいと感じました。
こういった新しい取り組みは往々にして役所の独りよがりかつ一方的な啓発に終わるわけですが、福岡市においては外部アドバイザー(DXデザイナーと命名したそうです)の助言をよく聞き、従来のお役所的な考え方にとらわれず、どのようなサービスがあれば、はたまたどのようなボタンの配置、画像、ページ割り、文言にすれば市民が親しみを持って便利だと思ってくれるかを、徹底的に研究したそうです。
DXデザイナーには「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏を含む専門家4名だそうです。こうした人選にも前例にとらわれない姿勢が見えてきますね。ちなみに、京都市のデジタル化推進には弁護士の方1名がアドバイザーをされているそうです。
DX化取り組み例
・親しみやすく、必要な情報に到達しやすいホームページ
・窓口に行かずとも申請等手続きが簡単に完了するノンストップ行政
・全世代が抵抗なく使えるアプリの開発と利用
・事務作業の効率化で手が空いた職員の再配置
こうしてみると、単純に「デジタル化」しただけでなく、なんらかの付加価値が生まれていることが分かります。
特徴的なのが「使いやすく、簡単で、わかりやすい」こと。
京都市にだってHPはありますが、どこに何が書いてあるのかがいまいちわかりにくいページがあります。大切なことがPDFになっていて探しにくいなんてことも。
その点、福岡市のHPや電子申請フォーム、アプリはスマートフォンやパソコンに不慣れな方でもなじみやすい配置や配色になっていますね。
もちろん京都市も以前に比べればトップページはずいぶん改善しましたが、個別のページではまだまだといった印象です。
(あと本当に個人的な感想なんですが、「京都市情報館」っていうページ名だと一瞬公式HPなのか分からないので普通に「京都市公式ホームページ」とかいう名前にしてほしいです。)
他にも、福岡市にも敬老パスがあるのですが、この申し込みがスマートフォンで「わかりやすく簡単なボタンで」できたり(電子申請の利用者は従来の3倍増)、お仕事で関わる方も必要書類を電子化して送ることができたりなど、書ききれませんがとにかく分かりやすさにこだわっているように感じました。
アナログ規制の撤廃も先進的
アナログ規制とは、これまで国が地方自治体に対して「これは必ず対面でやりなさい」「必ず書面を交付しなさい」と規制していた手続きや項目のことで、現在これらを撤廃し、よりデジタル化、DX化を推進していこうとする動きが活発になっています。
既に国はガイドラインを発表し、アナログ規制撤廃のモデル都市を指定して基準のブラッシュアップを図っているそうですが、福岡市はこちらについてもモデル都市と同等それ以上に先駆けて取り組んでおり、その結果現場の業務が随分と圧縮されていくと予想されます。
https://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/100150/1/anarogu.pdf?20220817114627
↑見直された条例の例が挙げられています。
また、国のガイドラインだけでなく、デジタル目安箱を設置し、市民の皆様からの意見も広く募集しているそうです。
LINEアカウントも便利
福岡市自前の取り組みの他、スマホプリのlineを利用したサービスも便利です。友達登録するだけで、わざわざHPに飛ばなくてもその場で手続きが完了するサービスもあります。
登録者は180万人で福岡市の人口よりも多いとか…
こちらにも「わかりやすい」が徹底されていて、放っておいても重要な情報が手元に届くような「プッシュ型」通知となっています。
京都市も随分頑張ってくれていますが、登録者は20万人ほど。
これに関してはここ数年で随分便利になりました。福岡市に負けないくらいわかりやすい表示になっていますが、とんだ先のHPがいまいちなこともあり、もう一息といった印象です。頑張れ!京都市!!
結局のところ…
視察で学んだことを書くつもりが、福岡市の紹介みたいになってしまいました。
話を京都市に戻しまして、なぜ、京都市ではDX化が進んでいかないのか。どうすればこのような先進事例を生み出していけるのか。
これについての福岡市さんの返答は「市長のリーダーシップと従来にとらわれない考え方が大きな要因であった」とのことでした。うーむ…。
もちろん僕も一人の議員として委員会や個別の要請、会派での予算要望に福岡で得た情報や経験を盛り込んでいくつもりです。
しかし、やはりDX化のような新しい考え方を急速に進めていくには、絶大な決定権がある市長が市民目線を持ち、行政目線ではなく市民の皆様が何を求めているかを正確に把握し、限られた予算と人員を適切な部署に送れるかどうかがカギを握っているのです。
少し寂しいお話ですが、改めて来年2月に控える首長選挙に腰を据えて取り組まなければならないな、と思った視察2日目になりました。