「改正電帳法」について ~①そもそも改正電帳法とは~
(ヘッダの写真はITコンピュータ2022年12月22日号の写真です。)
2022年1月1日より、改正電子帳簿保存法(改正電帳法)が施行され、国税関係の帳簿・書類のデータ保存について、抜本的な見直しが行われました。
しかし、2022年11月25日の日経新聞の記事で「請求書データ管理、対応遅れの企業は紙も容認」と報じられました。
記事によれば、政府・与党はメールで受け取った請求書データを条件付きで紙での保存を容認する方針である旨が書かれており、依然として企業の対応が進んでいない状況のようです。
今回は、記事を2回に分けて、電帳法の改正内容の解説と企業の取り組み状況について解説したいと思います。
リンク集
まずは国税庁の公式サイトです。
国税庁がこの度の改正法をまとめたパンフレット(PDF)です。
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021005-038.pdf
ミロク情報サービスのHPで、わかりやすく解説されています。
インボイス制度についても併せてご参考ください。
電子帳簿保存法とは
2022年1月に施行されたのは、"改正"電子帳簿保存法ですが、そもそも電子帳簿保存法について見ていきます。
電子帳簿保存法とは、各税法で保存が義務付けられている帳簿・書類を電子データで保存するためのルール等を定めた法律です。
法律自体は1998年から施行され、今回の改正を含めて過去数回にわたって改正されています。
従わないとどうなるか・・・
電子帳簿保存法の3つの区分
電子帳簿保存には3つの区分があり、それぞれ電子データの保存要件が異なります。
3つの区分の定義を見た後、それぞれの保存要件について確認していきます。
後述しますが、この度の改正で大きく変わるのは3つ目の"電子取引"に関する保存方法です。
①電子帳簿等保存
「電子的に作成した帳簿・書類をデータのまま保存」することです。
企業が、会計ソフト等を利用して作成した帳簿・書類を電子データで保存することを認めるものです。
作成する過程で一部を手書きで記録するなど、一貫してコンピュータを使用 して作成しない帳簿については、この制度の適用は受けられません。
たとえば、次の帳簿・書類があります。
国税関係帳簿
仕訳帳・現金出納帳・売掛金元帳・固定資産台帳・売上帳・仕入帳・総勘定元帳など
国税関係書類
決算関係書類(貸借対照表・損益計算書など)
取引関係書類(自身で作成・交付した、注文書・請求書・領収書・納品書・検収書などの控え)
②スキャナ保存
「紙で受領・作成した書類を画像データで保存」することです
主に取引先から受け取った請求書などの書類をスキャナーで読み込み、データ化して保存することを認めるものです。
たとえば、次の書類があります。
国税関係書類の取引関係書類(注文書・請求書・領収書・納品書・検収書など)
(自身が手書きで作成している場合)国税関係帳簿、国税関係書類
③電子取引
「電子的に授受した取引情報をデータで保存」することです。
主に事業者が取引先と取引に関する電子データを送付・受領した際には、その電子データを一定の要件を満たした形で保存しなければならないとするものです。
たとえば、次の取引情報があります。
電子的にやりとりされる取引情報(契約書・注文書・請求書・領収書納品書・検収書などの情報)
改正内容について(2022年1月施行)
2022年1月から施行される改正電帳法が大きな関心事となった理由のひとつは、上述の3つの区分のうち"③電子取引"に関するデータ保存の義務化が盛り込まれたことです。
他の区分(①②)も改正があったのですが、要件の緩和が主な内容ですので、現業への影響は少ないかと思います。
気になる方は本ページ上部のリンク集から国税庁のパンフレット(PDF)をご参照ください。
ただし、国税庁から案内されている内容仔細を見ると、必ずしも会計システムの導入や会計ソフトを購入しないと対応できないかというと、そうでもありません。
おすすめのミニマム対応は後述しますが、
じっくりと改正内容の注意点を見ていきましょう。
注意点その1:電子データ保存対象
ネット通販等の電子取引の場合、必ず電子データの保存が必要なのではなく、あくまで領収書などを紙ではなく電子データで受け取った場合等だけが対象です。
電子データで受け取った場合、従来は電子データを出力した紙で保存しても良かったのですが、今後は、オリジナルの電子データの状態で保存しておく必要があります
注意点その2:令和5年12月31日までの特例
令和5年12月31 日までに⾏う電子取引については、電子データを出力した紙で保存し、税務調査等の際に提示・提出できるようにしていれば差し⽀えありません(事前申請等は不要)。
令和6年1月からは電子データの保存が必要です。
注意点その3:電子データ保存要件
「電子データ」として認めらるには、どのような要件を満たさないといけないのでしょうか?
国税庁では以下のような要件が定義されています。
改ざん防止のための措置が取られている。
タイムスタンプが付与されている
履歴が残るシステムでの授受・保存がされている
上記の方法以外にも、「改ざん防⽌のための事務処理規程を定めて守る」でも可
以下の方法で検索できる
日付
金額
取引先
上記の要件が満たされていれば、データが表示されている画面のスクリーンショットが保存による保存も可なのです。
※ちなみに、受け取った場合だけでなく、送った場合についても保存が必要です。
ミニマムな対応方法
会計ソフトを導入したり、会計システムを開発すれば、その上でやり取りされる電子データについては、上記の保存要件を満たした形で保存されるため、最も効率的かと思います。
ただし、そのようなシステム導入が困難な場合は、システム費用をかけない対応例を紹介します。
(さも自分で考えたように申していますが、国税庁でも紹介されている対応例ですので、ご安心ください。)
対応その1:改ざん防止のための事務処理規程を作成し、社内で運用する
事務処理規程のひな型については、国税庁のホームページからダウンロードすることができます。これを参考にしながら、自社のやり方にあわせて規程を作成するのが良いでしょう。
対応その2:索引簿を作成する
表計算ソフト等で電子取引データの索引簿を作成しておくことで、表計算 ソフト等の機能を使って検索する方法です。
索引簿のひな型も国税庁のホームページからダウンロードすることができます。
いかがでしたでしょうか?
電子帳簿保存法の基礎知識と、システム費用をかけない対応方法について紹介しました。
次回は、企業の取り組み状況について紹介したいと思います。