見出し画像

【執筆途中、随時更新】 誰でもジャズピアノが弾けるようになる講座

この記事は、ジャズピアノのレッスンをしている山田亮による記事です。誰でもジャズピアノを弾けるようになるための方法を少しずつ文章でまとめていきます。内容が膨大になるので、少しずつ更新しながら増やしていく予定です。

執筆開始日:2024年11月22日
最終更新日:2025年1月29日


00. はじめに

この講座は音楽理論的な内容が中心になります。非常に地味な内容になるはずです。しかしこの記事だけで基本的なところをカバーできるようにするつもりです。少しずつ読んでいくと、他の本での説明も理解しやすくなると思います。
とはいえ文法だけを覚えても外国語を話せるようにならないのと同じように、音楽理論だけを覚えても良い演奏はできません。ぜひ、いろいろなジャズを聴きましょう。そのために大事なのは、まず音楽家の名前を覚えることです。ほんの少しずつで良いので、ジャズの音楽家の名前を覚えていってください。

誰から聴いたらいいか分からない場合は、まず Red Garland (レッド・ガーランド)というピアニストを聴いてみてください。明朗な演奏です。ジャズに慣れていない方でも聴きやすいのではないでしょうか。

上の動画の演奏では、Paul Chambers (ポール・チェンバース)というベーシストと、Art Taylor(アート・テイラー)というドラマーが共演しています。彼らもまたいろいろな音楽家と共演しています。別の音楽家と共演している演奏を聴くと、また新しい音楽家と出会うことができます。このように少しずつ世界を広げていけるのがジャズの面白さの一つです。

01. ピアノを観察する

ではピアノに向かいましょう。まずは音を出す前にピアノの鍵盤を観察します。左から右までたくさんの鍵盤が並んでいます。左の方を低い音、右の方を高い音といいます
鍵盤には白い鍵盤と黒い鍵盤があります。白い鍵盤を白鍵といいます。黒い鍵盤を黒鍵といいます。黒鍵は2つ並んでいるところと3つ並んでいるところがあります。黒鍵の配置を利用して音の位置を探すことが多いです。

02. ドの位置を覚える

まず最初に鍵盤のドの位置を覚えましょう。
ドの位置を探すためには、黒鍵が2つ並んでいる場所を探してください。2つ並んでいる黒鍵のうち、左側の黒鍵のさらに左側にある白鍵がドの音です。そして実際は一番右側にある白鍵もドです。88鍵の標準的なピアノの場合7ヶ所にドがありますが、探せますか?


03. ドレミファソラシドを覚える

次に、ピアノの真ん中のドから白い鍵盤だけを右に向かって弾いていってください。これが、ドレミファソラシドとなっています。
「ドレミファソラシド」という言葉を呪文のように覚えて口で言えるようになってください。下りも覚えましょう。下りは「ドシラソファミレド」です。
ファの音を探すには、ドの場所からドレミファという風に白い鍵盤だけを順番に上がっていくとファの場所を探すことができます。
ラの音を探すには、ドの場所からドシラという風に白い鍵盤だけを左に順番に下がっていくとラの場所を探すことができます。

04. 半音

ピアノの鍵盤は手前だけを見ると白い鍵盤だけが並んでいるようにみえます。一方、奥の方をみると 白黒白黒白白黒白黒白黒白白 と並んでいます。この奥の方を見た時に隣同士にある鍵盤との距離を半音といいます。
半音について考える時は、必ず鍵盤の奥の方をみてください。
ドの半音上の音は黒鍵です。その黒鍵からさらに半音上の音はレです。
ミの半音上の音はファです。ファの半音上の音は黒鍵です。
ドの半音下の音はシです。シの半音下の音は黒鍵です。

05. 全音

半音2つ分の距離を全音といいます。
ドの全音上の音はレです。
レの全音上の音はミです。
ミの全音上の音は黒鍵です。
ドの全音下の音は黒鍵です。

06. シャープ

シャープという記号は「♯」と書きます。「半音上げる」という意味です。
ドのすぐ右上にある黒鍵は「ドのシャープ」ということができます。
ミのすぐ右にある白鍵は「ミのシャープ」ということができます。

07. フラット

フラットという記号は「♭」と書きます。「半音下げる」という意味です。
レのすぐ左上にある黒鍵は「レのフラット」ということができます。
ドのすぐ左にある白鍵は「ドのフラット」ということができます。

08. 異名同音

上に例としてあげた2つの音、「ドのシャープ」と「レのフラット」はピアノの鍵盤では同じ鍵盤です。あるピアノの鍵盤は複数の方法で呼ぶことができます。
「ドのシャープ」と「レのフラット」は同じ鍵盤を弾く。
「レのシャープ」と「ミのフラット」は同じ鍵盤を弾く。
「ミのシャープ」と「ファ」は同じ鍵盤を弾く。
「シ」と「ドのフラット」は同じ鍵盤を弾く。
このように違う名前だけど同じ鍵盤を弾くもののことを異名同音といいます。「なる前だけどじ鍵盤を弾くだよ」ということです。なぜこんな複雑なことをするのか不思議ですよね。実はこれにはちゃんと意味があります。その理由はまた後の方で説明することになります。

09. 英語で音の名前を覚える

ジャズはアメリカ合衆国で生まれた音楽です。なので、英語の用語がたくさん出てきます。まずは英語の音の名前を覚えましょう。とても大切です。
ラ = A というのを覚えてください。そうすれば後は順番です。
A:ラ
B:シ
C:ド
D:レ
E:ミ
F:ファ
G:ソ

ピアノの場合は、1番低い鍵盤がラの音です。そこから英語の音名がABCDEFGとはじまります。

10. ピアノの弾き方

実際のところ、ピアニストや実現したい音楽によっていろいろな弾き方があります。可能性は無限です。一応、基本的な原則は次のような感じです。
・なるべく肩と肘をリラックスさせておく。
・指の関節は全て軽く曲げておく
・手首の下の部分と白鍵の上の部分が同じぐらいの高さになるようにする。
・どんな時でも全ての指が鍵盤の表面を触っておくようにする。宙に浮いている指は緊張してしまっているのであまり良くない。
・1つの音を弾いたらきちんとリラックスした手の形に戻す
・手の場所を移動したらまた指が鍵盤を触った状態にする。それから鍵盤を押さえる。

11. 指番号

右の手も左の手も、親指が1です。後は順番に以下のようになります。
1:親指
2:人差し指
3:中指
4:薬指
5:小指

12. 1つの音を弾いてみよう。

では実際にピアノを弾いていきます。
まず右手の親指をドの上に置きます。他の4本の指も白鍵の上にあるようにしてください。そうするとドレミファソの鍵盤の上に指が置かれます。
それからドの鍵盤をゆっくり押し下げます。そして少しの時間音を保ちます。そしてゆっくり上げます。
ピアノの音を弾くには3つの工程があることが分かります。
1 鍵盤を下げる
2 鍵盤を保つ
3 鍵盤を上げる
このうち、2番と3番に対する意識がなくなることが多いです。しかし、リズムをかっこよく表現するためにはこの2つの工程に対する意識も非常に大切です。今のうちから意識しておきましょう。そうすると、いろいろな音の長さを自由に表現できます。

13. 2つの音を弾いてみよう。

では次にド・レと弾いてみます。指番号は1・2です。右手の親指と人差し指を使います。1つの音を弾く時は、3つの工程がありました。今回の場合は以下のような順番になります。
1 親指でドの鍵盤を下げる
2 ドの鍵盤を保つ
3 ドの鍵盤を上げる
4ドの鍵盤が上がったすぐ後に、レの鍵盤を人差し指で下げる
5レの鍵盤を保つ
6レの鍵盤を上げる
ここでポイントなのは、ドの鍵盤が上がってからレの鍵盤を下げていることです。そうすると、ドの音とレの音の間に少しだけ隙間が出来ます。このような奏法をノンレガートといいます。基本的には、このノンレガートがジャズで一番基本になる弾き方です。

14. Cメジャースケールを弾いてみよう

次はドレミの音を順番に弾きます。指番号は123です。
その後手をゆっくり右側に移動して、ファソラシドの上に5本の指を置きます。移動する時は手首が斜めにならないように、鍵盤に対して平行に移動します。また、移動中も指はずっと鍵盤を触っているようにしましょう。鍵盤を撫でながら移動する感じです。
それからファソラシドの音を弾きます。
これでドレミファソラシドの音を弾くことができました。
ドレミファソラシドを弾く時に親指をくぐる、と教わった方も多いと思います。それを意識しすぎると手首の角度が変わってしまうことが多いです。今の段階では手をただ右側に平行移動するようにしましょう。ミとファの間に少し隙間ができますが、ノンレガートなので問題ないです。
このようにドレミファソラシドと音が並んでいるもののことを、Cメジャースケールといいます。

15. メジャースケールとは何か?

先ほどCメジャースケールを弾きました。これは「Cの音からはじまるメジャースケール」という意味です。ではメジャースケールとはなんでしょうか?それは以下のように音が並んでいるもののことです。

1番目の音と2番目の音の距離が全音
2番目の音と3番目の音の距離が全音
3番目の音と4番目の音の距離が半音
4番目の音と5番目の音の距離が全音
5番目の音と6番目の音の距離が全音
6番目の音と7番目の音の距離が全音
7番目の音と8番目の音の距離が半音

1番目の音と8番目の音は同じ名前の音になります。Cメジャースケールの場合は、どちらもCの音です。7種類の音でできていることになります。ほとんどが全音で並んでいますが、2ヶ所だけ半音で並んでいる場所があります。このルールで音を並べれば、どこの音からはじめてもメジャースケールを作ることができます。

たとえば、Dメジャースケールは以下のように作ります。最初の音はレです。

1番目のレと2番目のミの距離が全音
2番目のミと3番目のファ#の距離が全音
3番目のファ#と4番目のソの距離が半音
4番目のソと5番目のラの距離が全音
5番目のラと6番目のシの距離が全音
6番目のシと7番目のド#の距離が全音
7番目のド#と8番目のレの距離が半音

「レ・ミ・ファ#・ソ・ラ・シ・ド#・レ」となります。

メジャースケールは非常に大事です。特にジャズの理論ではメジャースケールを全ての土台とすることが多いです。

16. [ 1 2 3 1 2 3 4 5 ] の指番号で弾けるメジャースケール

ではいろいろなメジャースケールを弾いていきましょう。
右手で弾く場合、以下のメジャースケールはCメジャースケールと同じ 1 2 3 1 2 3 4 5 という指番号で弾くことができます。

Cメジャー・スケール
ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド

Dメジャー・スケール
レ・ミ・ファ#・ソ・ラ・シ・ド#・レ

Eメジャー・スケール
ミ・ファ#・ソ#・ラ・シ・ド#・レ#・ミ

Gメジャー・スケール
ソ・ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ#・ソ

Aメジャー・スケール
ラ・シ・ド#・レ・ミ・ファ#・ソ#・ラ

Bメジャー・スケール
シ・ド#・レ#・ミ・ファ#・ソ#・ラ#・シ

17. [ 1 2 3 4 1 2 3 4 ] の指番号で弾けるメジャースケール

Fメジャースケールは 1 2 3 4 1 2 3 4 という指番号で弾くことができます。

Fメジャースケール
ファ・ソ・ラ・シb・ド・レ・ミ・ファ

なぜCメジャースケールの時と同じ指番号を使わないのかというと、黒鍵を親指で弾くのを避けるためです。原則として黒鍵を弾く時になるべく親指や小指を使わないようにします。この2本の指は他の指より短いため、黒鍵が遠いからです。

18. 黒鍵からはじまるメジャースケール

次に、黒鍵からはじまるメジャースケールの音と指番号をまとめて書きます。

Dbメジャースケール
レb・ミb・ファ・ソb・ラb・シb・ド・レb
2 3 1 2 3 4 1 2

Ebメジャースケール
ミb・ファ・ソ・ラb・シb・ド・レ・ミb
3 1 2 3 4 1 2 3

Gbメジャースケール
ソb・ラb・シb・ドb・レb・ミb・ファ・ソb
2 3 4 1 2 3 1 2

F#メジャースケール
ファ#・ソ#・ラ#・シ・ド#・レ#・ミ#・ファ#
2 3 4 1 2 3 1 2

Abメジャースケール
ラb・シb・ド・レb・ミb・ファ・ソ・ラb
3 4 1 2 3 1 2 3

Bbメジャースケール
シb・ド・レ・ミb・ファ・ソ・ラ・シb
2 1 2 3 1 2 3 4

19. ゆっくり練習することの大切さ

まずは上のメジャースケールを弾く練習をしてください。とてもたくさんあるので大変ですが、ノルマをこなすような気持ちで演奏しないほうがいいです。楽器を練習する時は、最初にゆっくり弾きましょう。最初は良い「」を作るのが大事です。「型」には筋肉の動かし方、指や手の形、運動の道筋などが含まれます。指を動かす前にしっかり考えて、美しく無駄のない経路で指や手を動かします。型を作るときは本当にスローモーションのような動きがいいです。
型をしっかり作ったら少しずつテンポをはやくしていきます。もし型が破綻したら一度立ち止まります。そして少しだけテンポを遅くして、また少し新しい型を作るといいです。いつでも自分の体の動きと鳴っている音を丁寧に観察してよく味わいます。そうすると結果的に早く上達することができます。練習をゴールに向かうための通過点だと考えるのは損です。練習の過程自体を、楽しみ慈しむことが大切です。

20. コード

コードとは和音のことです。和音とは音を同時に演奏したもののことです。ジャズやポップスではコードを元にアドリブや伴奏で使う音を考えたりします。コードには三和音四和音があります。三和音は3つの音でできていて、四和音は4つの音でできています。4つ以上の音を使うこともできますが、それらはテンションといって特別な扱いをします。
三和音の3つの音は以下のものが基本です。
・ルート
・3rd
・5th
四和音の4つの音は以下のものが基本です。
・ルート
・3rd
・5th
・7th
それぞれの音についてはこれから少しずつ説明していきます。

21. コードネーム

では、これからコードネームを少しずつ読んでいきます。コードネームとはコードを示すための記号です。たとえば、Cm7・F#7・Bb7sus4(9) など。いろいろなものがあります。慣れないと複雑に感じると思いますが、明確なルールがあるのでそれをしっかり理解していきましょう。

22. コードネームと音名

ドのことを英語音名では「C」と表現します。また、ドミソというコードのことも「C」と表現します。見た目は全く同じなのでとても混乱しやすいです。アルファベットが出てきたら、音名のことを指しているのかコードのことを指しているのか確認するようにしてください。

23. コードネームを読む:ルート

コードにとって一番大事な音がルートです。コードは複数の音で出来ています。一方、ルートは1つの音を指します。ルートはコードネームの中に必ず英語音名で書いてあります。ただし、ルートの英語音名にはシャープやフラットがつく場合もあるので注意が必要です。いくつか例をあげます。
C#7 のルートは ドの#
Fm7(b5) のルートは ファ
Dbm6 のルートは レのb
E7sus4 のルートは ミ
コードは基本的に、ルートに上に音を積むように出来ています。 バンドで一番低い音を担当する楽器はベースですが、ベースの一番基本的な演奏はコードのルートを弾くことです。ピアノでも、低い音域で左手を使ってコードのルートを弾くのが基本的な弾き方になります。

24. コードネームを弾く:ルート

ではこちらの楽譜を実際に弾いていきましょう。

まずはコードのルートだけ左手で弾きます。左手で鍵盤のかなり低い方で弾きましょう。以下の音がルートになります。

Bm7:シ
Em7:ミ
A7:ラ
DM7:レ
F#dim7:ファ#
GM7:ソ
C#m7(-5):ド#
F#7sus4:ファ#
Bm7:シ

DM7 と F#dim7 だけは2拍で、ほかは4拍伸ばします。

25. コードネームを読む:3rd

コードでルートの次に大切な音が 3rd です。「3rd」というのは「三番目」という意味の英語です。何の三番目なのかというと、スケールの三番目の音です。

一番基本的な 3rd は メジャー3rd といいます。メジャー3rd はメジャースケールの3番目の音です。いくつか例をあげます。
Cの音(ド)にとっての メジャー3rd は Cメジャースケール の3番目の音だから ミ。
Dの音(レ)にとっての メジャー3rd は Dメジャースケール の3番目の音だから ファの#。

メジャー3rd よりも半音低い音を マイナー3rd といいます。
Cの音(ド)にとっての マイナー3rd は Cメジャースケール の3番目の音の半音下だから ミb。
Dの音(レ)にとっての マイナー3rd は Dメジャースケール の3番目の音の半音下だから ファ。

コードネームに「m」「dim」の記号がついている場合はルートからみたマイナー3rd がコードに含まれます。それ以外の場合はメジャー3rdがコードに含まれます。
Cm7 はマイナー 3rdが含まれる。
Ddim はマイナー 3rdが含まれる。
C7 はメジャー3rdが含まれる。
EbM7 はメジャー3rdが含まれる。

ほとんどのコードは メジャー3rd もしくは マイナー3rd のどちらかが含まれます。ただし、sus4 という記号がついているコードは違います。sus4 は「サスフォー」と読みます。この時は 3rd を使わず、代わりにルートからはじまるメジャースケールの4番目の音を使います。
C7sus4 は3rdを使わず、Cメジャースケールの4番目のファを使う。
Ebsus4 は3rdを使わず、Ebメジャースケールの4番目のラbを使う。
G#sus4 は3rdを使わず、G#メジャースケールの4番目のド#を使う。

26. コードネームを弾く:3rd

再びこちらの楽譜を使います。

左手はコードのルートを弾きつつ、右手でコードの 3rd を弾きます。右手はまるべく鍵盤の真ん中あたりの音を弾きます。左手はかなり低い場所で弾きます。以下の音が 3rd (4th) になります。

Bm7:レ
Em7:ソ
A7:ド#
DM7:ファ#
F#dim7:ラ
GM7:シ
C#m7(-5):ミ
F#7sus4:シ
Bm7:レ

DM7 と F#dim7 だけは2拍で、ほかは4拍伸ばします。

27. コードネームを読む:5th

次は 5th です。「5th」というのは「五番目」という意味の英語です。何の五番目なのかというと、スケールの五番目の音です。

一番基本的な 5th は パーフェクト5th といいます。パーフェクト5th はメジャースケールの5番目の音です。いくつか例をあげます。
Cの音(ド)にとっての パーフェクト5th は Cメジャースケール の5番目の音だから ソ。
Dの音(レ)にとっての パーフェクト5th は Dメジャースケール の5番目の音だから ラ。

普通、コードではパーフェクト5thが使われます。ただし、たまに 5th はパーフェクト5thより半音上がったり半音下がったりします。そのための記号はこちらです。

・パーフェクト5thより半音上の音を使うための記号
「+5」「#5」「aug」

・パーフェクト5thより半音下の音を使うための記号
「-5」「b5」「dim」

いくつか例をあげます。
C#7:パーフェクト5thを使う。
AmM7:パーフェクト5thを使う。
EbM7:パーフェクト5thを使う。
B7(+5):パーフェクト5thを半音上げたものを使う。
G7(#5):パーフェクト5thを半音上げたものを使う。
Ebaug7:パーフェクト5thを半音上げたものを使う。
Fm7-5:パーフェクト5thを半音下げたものを使う。
Dm7(b5):パーフェクト5thを半音下げたものを使う。
F#dim:パーフェクト5thを半音下げたものを使う。

28. コードネームを弾く:5th

再びこちらの楽譜を使います。

左手はコードのルートを弾きつつ、右手でコードの 5th を弾きます。右手はまるべく鍵盤の真ん中あたりの音を弾きます。左手はかなり低い場所で弾きます。以下の音が 5th になります。

Bm7:ファ#
Em7:シ
A7:ミ
DM7:ラ
F#dim7:ド
GM7:レ
C#m7(-5):ソ
F#7sus4:ド#
Bm7:ファ#

DM7 と F#dim7 だけは2拍で、ほかは4拍伸ばします。

29. コードネームを読む:7th

次は 7th です。「7th」というのは「七番目」という意味の英語です。何の七番目なのかというと、スケールの七番目の音です。また、7th の仲間のようなものとして 6th もあります。6th ではメジャースケールの6番目の音を使います。

・ルートからはじまるメジャースケールの7番目の音を使う時の記号
「M7」「△7」

・ルートからはじまるメジャースケールの7番目の音の半音下の音を使う時の記号
「7」

・ルートからはじまるメジャースケールの6番目の音を使う時の記号
「6」

いくつか例をあげます。
CM7:Cメジャースケールの7番目の音を使う
DmM7:Dメジャースケールの7番目の音を使う
Eb7:Ebメジャースケールの7番目の半音下の音を使う
F#m7:F#メジャースケールの7番目の半音下の音を使う
G6:Gメジャースケールの6番目の音を使う
Ab6:Abメジャースケールの6番目の音を使う

また、「dim」という記号がある時はメジャースケールの7番目の全音下の音を使います。

30. コードネームを弾く:7th

再びこちらの楽譜を使います。

左手はコードのルートを弾きつつ、右手でコードの 7th を弾きます。右手はまるべく鍵盤の真ん中あたりの音を弾きます。左手はかなり低い場所で弾きます。以下の音が 7th になります。

Bm7:ラ
Em7:レ
A7:ソ
DM7:ド#
F#dim7:ミb
GM7:ファ#
C#m7(-5):シ
F#7sus4:ミ
Bm7:ラ

DM7 と F#dim7 だけは2拍で、ほかは4拍伸ばします。

31. 音程の表現方法

コードネームの読み方では非常にたくさんのルールが出てきました。一回まとめたいですが、その前にジャズのコードにおける音程の表現方法について説明します。音程とは音と音の距離です。コードのそれぞれの音にとって、ルートとの音程がとても大事です。その音程を、アラビア数字(1・2・3・4など)を使って表現することがあります。これはルートからはじまるメジャースケールの何番目の音に当たるのかを表現しています。さらにそこから半音上げたり下げたりするには、フラットやシャープを使います。
Dにとって「3」はDメジャー・スケールの3番目の音なので、ファ#。
Eにとって「b3」はEメジャー・スケールの3番目の音を半音下げたものなので、ソ。
Fにとって「#4」はFメジャー・スケールの4番目の音を半音上げたものなので、シ。

32. コードネームを読む:まとめ

ルートは英語音名で書いてある。

3rd は指定がない場合 3 
「m」「dim」「○」がある場合は b3
「sus4」がある場合は 4

5th は指定がない場合 5 
「+5」「#5」「aug」がある場合 #5
「-5」「b5」「dim」「○」がある場合 b5

「M7」「△7」がある場合 7
「7」があって「M」や「△」がない場合 b7
「6」がある場合 6
「dim」「○」がある場合 bb7

具体例
Cm7(b5):1・b3・b5・b7 = ド・bミ・bソ・bシ
DmM7:1・b3・5・7 = レ・ファ・ラ・ド#
E7aug:1・3・#5・b7 = ミ・ソ#・シ#・レ
F#dim:1・b3・b5・bb7 = ファ#・ラ・ド・ミb

30. コードネームを弾く:まとめ

再びこちらの楽譜を使います。

左手はコードのルートを弾きつつ、右手でコードのルート・3rd・5th・7th を弾きます。右手はまるべく鍵盤の真ん中あたりの音を弾きます。左手はかなり低い場所で弾きます。以下の音が右手で弾く音になります。

Bm7:シ・レ・ファ#・ラ
Em7:ミ・ソ・シ・レ
A7:ラ・ド#・ミ・ソ
DM7:レ・ファ#・ラ・ド#
F#dim7:ファ#・ラ・ド・ミb
GM7:ソ・シ・レ・ファ#
C#m7(-5):ド#・ミ・ソ・シ
F#7sus4:ファ#・シ・ド#・ミ
Bm7:シ・レ・ファ#・ラ

DM7 と F#dim7 だけは2拍で、ほかは4拍伸ばします。

31. 転回形について

低い方から順番に 1・3・5・7 とコードの音を積んだ形を基本形とします。
CM7の基本形:ド・ミ・ソ・シ
この時、一番低い音を1オクターブ上げ別の形を作ることができます。このことを転回といいます。転回してもコードネームは変わりません。転回してできた形を転回形といいます。

CM7を転回する:
ド・ミ・ソ・シ → ミ・ソ・シ・ド

今の例をさらに転回していくと、いくつか転回形を作ることができます。
以下のようにコードを転回して上っていく練習をいろいろなコードでやってみてください。

CM7を転回して上っていく:
ド・ミ・ソ・シ →
ミ・ソ・シ・ド →
ソ・シ・ド・ミ →
シ・ド・ミ・ソ →
ド・ミ・ソ・シ

一番低い音を1オクターブ上げる形を作るだけでなく、1番高い音を1オクターブ下げても転回することができます。以下のようにコードを転回して下りていく練習もいろいろなコードでやってみてください。

CM7を転回して下りていく:
ド・ミ・ソ・シ →
シ・ド・ミ・ソ →
ソ・シ・ド・ミ →
ミ・ソ・シ・ド →
ド・ミ・ソ・シ

32.3つのパートとコードネームの関係

音楽を形づくっている音は、役割の違いで分類をすることができます。
たとえば、こちらの3種類に分類する方法もあります。

・メロディパート
そのときに中心になっている旋律を担当するパートです。ロックバンドだと、ボーカルがメロディパートを担当します。ただし、ギターソロのときはギターがメロディパートになります。

・コードパート
主にコードの響きを担当するパートです。同時に複数の音を出す場合もあるし、アルペジオといって順番にコードの音を鳴らす場合もあります。

・ベースパート
低音で単音です。低い方の音域で同時に1つの音しか出しません。バンドだとベーシストが担当していることが多いです。

この3つのパートは違う人が担当する場合もあるし、一人の人が担当する場合もあります。ピアノソロの曲の場合は一人で全てのパートを担当することが多いです。普通に耳にする音楽はこの3つのパート全てが含まれていることが多いですが、どれかが省略されていることもあります。

コードネームはこの3つのパート全てに関わりがあります。メロディパートはコードの響きに対してあまりぶつからないように音が選ばれます。コードパートはコードネームが示す音を演奏します。ベースパートはコードが変わったときにまずコードのルートを演奏するのが基本です。


33.オンコード

コードには、オンコードと呼ばれるものがあります。CM7onD もしくは CM7/D という風に書かれます。ConD と C/D は同じ意味です。
これは上に書いた「パート」の考え方を使った記号です。
CM7onD:コードパートが CM7というコード でベースパートが D(レ) という1つの音。
C/D:コードパートが Cのコード でベースパートが D(レ) という1つの音。

ちなみに、普通のコードはこういう感じです。
FM7:コードパートが FM7というコード でベースパートが F(ファ) という1つの音。

オンコードには二種類あります。
1.上に乗っているコードの 3rd・5th・7th のいずれかがベースの音になっている。
例:ConE, D7/F#, EbonBb

2.上に乗っているコードの 3rd・5th・7th がベースの音になっていない。
例:ConD, D7/B, EbonC

34.オンコードと転回形の関係

「転回形」という言葉には2つの異なる使われ方があります。人によって違う意味で使っているので注意が必要です。ベースパートの音に着目しているのか、コードパートの音に着目しているのかという違いがあります。

1.「ベースパートがコードパートの3rd・5th・7thのいずれかになっていること」を転回形と言う。この使い方だと、たとえば「CM7onE や Dm7/A は転回形である」という言い方をします。

2.「コードパートの一番下の音がルートでない弾き方のこと」を転回形と言う。この使い方の場合はベースパートは気にしていません。コードパートだけを見ています。たとえば Dm7 というコードのコードパートが以下の時に転回形だと言います。
ファ・ラ・ド・レ
ラ・ド・レ・ファ
ド・レ・ファ・ラ

どちらも見かける使い方なので、その言葉を使っている人がベースパートに注目しているのかコードパートの一番下の音に注目しているのか気をつけておきましょう。この記事では転回形という言葉を2番の意味で使います。つまり、コードパートの音の形に注目するときに使います。

35.転回形を近い位置でつないでいく

コードが進行する時、基本的な弾き方だけだと移動が多くなってしまいます。
CM7:ド・ミ・ソ・シ

FM7:ファ・ラ・ド・ミ

転回形を使うと近い位置でコードを弾くことができます。
CM7:ド・ミ・ソ・シ

FM7:ド・ミ・ファ・ラ

四和音を続けて弾いていくとき、近い位置の転回形を探すにはどうしたらいいでしょうか?
最初は共通する音を探します。上の例だと、ドとミが共通の音です。それらの音が下から何番目にあるかを考えます。CM7 の時はドが1番下、ミが下から2番目になっています。なので次に続く FM7 でも同じようにドが1番下、ミが下から2番目にしました。

もしCM7が違う転回形だった場合はFM7も違う転回形になります。
CM7:ミ・ソ・シ・ド

FM7:ミ・ファ・ラ・ド

さきほどの楽譜の場合はたとえばこちらのような転回形で弾くと近い位置で弾くことができます。
Bm7:ラ・シ・レ・ファ#
Em7:ソ・シ・レ・ミ
A7:ソ・ラ・ド#・ミ
DM7:ファ#・ラ・ド・#レ
F#dim7:ファ#・ラ・ド・ミb
GM7:ファ#・ソ・シ・レ
C#m7(-5):ミ・ソ・シ・ド#
F#7sus4:ミ・ファ#・シ・ド#
Bm7:レ・ファ#・ラ・シ

36.転回形を使った合いの手

たとえば上の楽譜では、2小節目・4小節目・8小節目はメロディの音が伸びています。4小節目はコードが途中で変わっているので変化がありますが、2小節目や8小節目は小節の中で何も起きません。このような場所を「スペースがある」と表現することができます。
バンドなどで演奏する時、スペースがあるところでメロディ以外のパートが何かをすることが多いです。合いの手・おかず・フィルインなどと呼ばれたりします。管楽器、ピアノ、ギター、ベース、ドラムなどいろいろな楽器が行うことができます。
ピアノでこのように合いの手を入れる時、転回形を使うこともできます。同じコードネームが続く間に、違う転回形を使って弾き直す弾します。
例えば、8小節目で以下のように弾くことができます。
シ・レ・ファ#・ラ →
レ ・ファ#・ラ・シ
こうすると、歌が伸びているスペースで動きを作ることができます。

37.パートごとの音域について

ピアノの鍵盤はとても広いです。非常に低い音から非常に高い音まで出すことができます。ただし、パートによってよく使う音の高さの範囲が決まっています。これは厳密な決まりでなく、だいたいこのぐらいという感じです。

ベースパートの最低音:一番低いミ。
コードパートの最低音:真ん中のドよりも1オクターブ下にあるド。
メロディパートの最低音:真ん中のドの少し下にあるソ。

どのパートも上に書いた音から2オクターブ上ぐらいまでの範囲内にある音をよく使います。

38.アドリブ

ここからアドリブソロについて触れていきます。ジャズではとても大切なものです。アドリブは、基本的にある1人の演奏者の見せ場になっています。ピアノソロであればピアニストの見せ場、サックスソロはサックス奏者の見せ場です。アドリブは曲のコードに基づき、その場で音を決めて演奏していきます。

39.アドリブで音の選ぶ時の基本的な考え方

アドリブについてのよくある質問で「このコードの時にこの音は使えますか?」というものがあります。しかし、実はどのコードの時でも全ての音を使うことができます。全然高度な話ではなく、基本的な音楽理論だけでもそうなります。ただし、「この音をこの曲のこういう場面でこういう風に使うとこういう感じがする」ということはいえます。使えるか使えないかではなく、音の使い方が大切です。難しく感じるかもしれませんが、この先の説明を読んでいけばその意味がわかっていただけると思います。

40.コードが変わった時にコードトーンを1つ弾く

では実際にアドリブを弾いていきましょう。まずはコードトーンという言葉を覚えてください。これはコードネームで示される音のことです。たとえばCM7のコードトーンはドミソシの4つになります。

コード進行はこちらを使っていきます。

まずはコードが変わった時に4分音符で1つコードトーン弾いてみましょう。そうすると例えば以下のような演奏になります。

左手でコードを弾きながら弾くと良いです。左手をみると何がコードトーンなのか分かります。上にあげた以外にもいろいろな音が選べるのでゆっくり弾いてみてください。

41.コードが変わった時とその直前にコードトーンを弾く

前回の演奏に1つだけ音を加えてみます。コードが変わる直前にもコードトーンを入れます。
ただし、新しく加えるコードトーンは次に来るコードトーンとなるべく近いコードトーンを選びます。上の楽譜では2小節目にソの音を使っています。なのでその直前の1小節目4拍目では Bm7 の4つのコードトーンの中からソに近い音を選びます。今回はファ#にしましょう。他の部分も同じように選んでいきます。

今回の弾き方はただ音が2つ並んでいるというより、音に方向があるようなイメージを持つといいです。上の楽譜だと2小節目の レ から 次の小節の ド# に向かって矢印があるようなイメージを持ってください。この音に方向があるというイメージは今後も重要になってきます。

42.もう一つコードトーンを増やす。

上の楽譜にもう一つコードトーンを増やします。今はコードが変わったところとその1つ前に音がありますが、そのさらに1つ前に音を増やします。コードトーンの中から自由に音を選びます。だいぶメロディらしい感じになってきました。

43.フレーズ

アドリブを弾いていくときにはフレーズについて考えることが大事です。フレーズが何なのかについてはいろいろな言い方が出来ますが、今の段階では「音が並んでいって休符に出会うまでの集まり」としておきましょう。例えば、上の楽譜では1小節目3拍目からの「ラ・ファ#・ソ」を1つのフレーズとします。次のフレーズは「シ・レ・ド#」です。フレーズを言葉で例えるなら、休符は句読点のような役割になります。休符によってフレーズが切り分けられます。
「今日は、晴れている。」
「ラ・ファ#・ソ (休符) シ・レ・ド# (休符)」

44.スケール

この講座ではメジャースケールというものが出てきました。メジャースケールはスケールの1つです。スケールは日本語で「音階」といいます。スケールは音が階段状に並んでいるもののことです。アドリブを弾くときにこのスケールがかなり重要になってきます。

45.キー

スケールと混同されやすいものとしてキーがあります。キーは日本語で「調
」といいます。(Cメジャーキーは日本語でハ長調といいます。)
キーは2つのことを示しています。
・中心になる音
・中心になるスケール
たとえばCメジャーキーは「Cが中心の音で、Cメジャースケールが中心になるキー」という意味です。
ジャズスタンダードでは1つの曲の中でキーが何度も変わることが多いです。曲の中でキーが変わることを転調といいます。

45.ソロの中でスケールを利用する

例えば以下のようなコード進行のとき、それぞれのコードの最初にコードトーンを置きます。


※今後追加していく予定の内容

一つのスケールでアドリブソロをとる
スイングについて
アクセントについて
移調について
メジャースケールによるダイアトニックコード
2つのマイナー・スケール
マイナースケールによるダイアトニックコード
キーとスケールとテンションの関係
曲の中でツーファイブを見つける
ツーファイブ以外の場所のキーを考える
スケールを考える
ナチュラル9th について
ナチュラル9th を曲の中で適用していく
b9th について
b9th を曲の中で適用していく
#9th について
#9th を曲の中で適用していく
ナチュラル13th について
9th と 13th を使ったボイシング
ナチュラル13th を曲の中で適用していく
b13th について
b13th を曲の中で適用していく
ナチュラ11th について
ナチュラル11th を曲の中で適用していく
#11th について
#11th を曲の中で適用していく
メジャーキーの V7 で他のスケールを使う
マイナーキーの V7 で他のスケールを使う

いいなと思ったら応援しよう!

Yamada Ryo
記事が役に立ったと思った方や心が動いた方、もしよろしければサポートお願いいたします。記事を書いていく励みになります。