TEAM SHACHI 「OVER THE HORIZON〜はちゃめちゃ!パシフィコ」の感想
2021年10月24日(日)にパシフィコ横浜国立大ホールでTEAM SAHCHIによる「OVER THE HORIZON〜はちゃめちゃ!パシフィコ」が行われた。
改名後3年間の全てをぶつけたこのライブに参加して感じたことや考えたことを書いていく。(会場と配信の感想が混ざっています。)
初ライブとパシフィコ横浜公演の発表
2021年2月、豊洲PIT。この日初めてTEAM SHACHIのライブに参加した僕は、メンバーの熱いパフォーマンス、バンド民の凄まじい演奏によって沼へと引きずりこまれた。このライブで発表されたのが今回のパシフィコ横浜公演だ。
このティザー映像を見て最初に感じたのは「これがうまくいかなかったらシャチ解散してしまうのかな。それは嫌だ。」ということだった。
かつて武道館を埋めたグループが、武道館よりもさらに小さなパシフィコ横浜という会場にグループの存続をかけてチャレンジする、それも熱く前向きに。そんな姿に胸を打たれて、ライブ後には自然とFCに入りパシフィコ公演のチケットを取った。
だからパシフィコ公演までのこの8ヶ月間は、楽しみでしょうがないという気持ちの一方、ちょっぴり不安も残る期間だった。だから50%キャパとはいえSOLD OUTを達成し、感染状況も今年で最良、天候にも恵まれて無事ライブが開催できたこと、心から嬉しく思う。
当日までの盛り上がり
パシフィコ横浜公演が発表されてから8ヶ月の間、秋本帆華のフルマラソンチャレンジからのツアー&ビギナーズライブ発表。ライブ制作までの過程を垣間見せてくれるメイキング映像、各メンバーのドキュメンタリー、月一の生配信などパシフィコ公演を盛り上げるためのコンテンツが数多く用意された。
9月には新曲「番狂わせてGODDESS」を含む「浅野EP」のリリースで盛り上がり、ライブ直前の10月にはバンド民の参加発表。さらに、ソールドアウトが発表され、直前にはWEB会報(FC限定のメンバーインタビュー)も公開された。
中でもWEB会報は、ソロ曲のタイトルなど若干のライブ内容のネタバレを含むが、セットリストや演出などの核心的な情報は伏字で隠すという内容になっており、ライブへの想像を掻き立てつつ期待感を高めるものだった。
僕のようなライブ前に「今回のライブのセットリストはどうなるだろうか?」を考えることを楽しみにしている人にとってはとても嬉しい企画だった。(伏せ字に「」や半角スペースは含まれるのかとかめっちゃ考えた。)
この企画はFC限定なのだから、集客にも影響しない、別にやらなくてもいい企画なのに、それをコストをかけて実行し、盛り上げようとしてくれる、運営のこの姿勢にライブ前から熱い気持ちを受け取ったように感じた。
パシフィコ公演は謎解きだった?
それに加えて「柚姫の部屋」での大黒柚姫の匂わせ発言や、タフ民有志による一曲目予想企画やなどが重なり、ライブへの妄想が捗る捗る。まるで謎解きを仕掛けられているようだった。
ちなみに僕が一曲目に予想したのは「番狂わせてGODDESS」。ついでに本編最後は「OVER THE HORIZON」だと予想した。以下、自分のコメントの引用。
ライブ開演前
開演は夕方だったが会場が家から近いということもあり、早めに会場入りして物販列に初めて並んでみた。予想していたよりたくさんの人が並んでおり随分と時間を取られてしまったが、無事Tシャツなどを購入することができた。会場には関係者や関係企業からのメッセージや祝い花に加え、公演ロゴの原画なども展示されていた。
また、開演までの間にはSNSで繋がっている数名の方に、ご挨拶することができた。こういうのがインターネットの素敵なところ。
予定より少し遅れて開場する。席は二階の指定席(スタンディング可)。着席指定席のすぐ後ろのエリアでステージからは遠いが、全体が見やすい席ではあった。
セットリスト
ライブ本編の感想へ進む。セットリストは以下だ。
オープニング
ライブの開始前は会場にBGMが流れる。ここで流れる曲もちょっとしたライブの楽しみだ。今回はSHAKALABBITSの「MONSTER TREE」が流れていて懐かしい気持ちになった。
BGMの音量が上がりTHE HIVES「Tick Tick Boom」が流れるのがいつものライブ開始の合図だ。いよいよだと腰を上げて戦闘体制に入る。
たった3曲で盛り上がりのピークをつくった最初のブロック
まずは「OVERTURE~ORCA~」だ。ギターのメロディとともにスクリーンにはオープニングムービーが流れる。白いつなぎを着たメンバーが、ストレッチする様子を見て僕も伸びをする。重要な試合を控えるスポーツ選手のような真剣な表情で前を見据えるメンバーの頬に絵の具が塗られると、画面は色鮮やかなアートワークで塗りつぶされ、メンバーはコミカルな動きや表情を見せる。はちゃめちゃな感出てていいね。
今回はそれだけじゃない、2021年のツアーでも披露された壮大なブラスブリッジとともに旗を持ったダンサーたちが行進を始める。パシフィコ公演の発表からここまでの道のりを表しているようだ。
旗手が階段を登り終えると鳥籠のような衣装に身を包んだメンバーが登場し、ギター音を皮切りに初披露の「番狂わせてGODDESS」が始まる。ブラスのファンファーレ、「火蓋は切って落とした」という歌詞、1曲目にはこれ以上ない選曲だ。
以前のブログでも書いたが、この曲は坂本遥奈による歌い出しがとても気持ち良い。ライブでも同様にバチッと決まっていて曲への没入を促してくれた。ブラス・ギター・ベース・ドラムがそれぞれ暴れ1曲目からフロアは熱狂の渦。すでに泣き笑い状態なんだがこれからどうなってしまうのか。
なお、「猪突もちもちもちもち」としか聞こえないと話題になっていた「猪猛進猛進猛進猛進」の秋本帆華のパートは、ライブでは案外普通に「もうしん」と聞こえた。「もちもち」はディレクションの産物なのね笑。
会場全体をガツンと盛り上げた後の2曲目は、会場に楽しく優しい一体感を生み出す「わたしフィーバー」。ダンサー民とブラス民を合わせた大所帯でステージは実に賑やかだ。サビで手をくるくる回せば、ほら楽しい。間奏ではライブならではのメンバーの自己紹介の演出。その後の「われらが〜ブラス民!」の掛け声からのブラスパートがもう最高。多幸感に溢れている。
3曲目は「抱きしめてアンセム」だ。ライブでよく終盤に披露されるこの曲が序盤に披露されることで、ライブは早くも一つのピークを迎える。この曲は、右に左にとフリコピが楽しいのが特徴だが、同時に両隣を刺さないように気をつけなければならない。しかし、キャパの50%を上限とした本公演では両隣を気にすることなく、ここぞとばかりにフリコピを楽しんだ。
レア曲が披露された二つ目のブロック
一旦メンバーが退場するとパーカッショニストnotchのソロが始まる。サンバ調のリズムを奏でるnotchに合わせて踊るダンサーの中から、金色の衣装に身を包んだ大黒柚姫が登場すると4曲目「One-One-Love(大黒柚姫ソロ曲)」が始まった。大黒柚姫の声質が映える曲線的なメロディー。愛で溢れている歌詞。この曲は大黒柚姫にしかできない。
5曲目は「ケモノノハナミチ」だ。WEB会報に「曲名が8文字のサブスクにないレア曲」をやると書いてあったので、事前に8文字の曲を必死で探し、心の準備はできていた笑。初めてのこの曲はとても楽しい曲だったけど、2階席で見るのと同じくらい、配信で見るのが楽しい曲でもあった。秋本さんはいくつになってもガオガオできるんだろうな。
なお「ケモノノハナミチ」から衣装の鳥籠のようなパーツがなくなっていた。鳥籠がなくなるということは、何かからの開放を意味しているのだろうか。今のところその演出意図はわからない。
6曲目は「ラリラリホー」。これは予想外で面食らった。イントロを聞いても曲名が思い出せない!ゆったりしたAメロとアップテンポのサビの緩急が強い曲でドラムの手数がとんでもないことになっている。裏拍が強調されるビートにメロディーをのせるのはかなり難しそうだったが、きっちりやってのけていた。
▼ドラムTatsuya視点のラリラリホー(Tatsuya AmanoのInstagramより)
https://www.instagram.com/tv/CV7lsjlhdXr/?utm_source=ig_web_copy_link
メンバーカラーのジャージを着ると始まったのが7曲目の「BASYAUMA ROCK」。個人的には改名前後を問わず最もロックンロールだと感じる曲。Masaの前奏ギターリフを筆頭にバンド民の演奏が際立つ。ラウド方面とはまた違ったパフォーマンスと演奏が嬉しい。
なお、咲良菜緒がインスタで言及していたのでこれも期待通りだった。
自然と体が揺れるの三つ目のブロック
「BASYAUMA ROCK」が終わると月の映像が浮かび上がり幻想的な音が流れる。この時点では月→兎で坂本遥奈のソロ曲かと思ったが、メンバーの動きに呼応して木が生えてくる。ということは…8曲目は「こだま」だ!森がステージをはみ出して拡がると冒頭のスキャットが始まる。
「こだま」が大好きな僕はもう跳ね上がった。しかも今回はブラス民・バンド民がいる。唸るMIYAのベースがひたすらにカッコ良い!最高だ〜踊れ踊れ!
9曲目は「Survivor Survivor」だ。TEAM SHACHIの上げ曲といえば、BPM高めの激しい曲が多い中で、体が自然と揺れるミディアムテンポのナンバー。セトリに「Survivor Survivor」があるから、緩急のある上げブロックが成立する。個人的にはライブでいつもやってほしい曲だ。
10曲目は「アイドンケア」だ。相変わらずフリコピがわからない。すまん、ももクロもエビ中もよく知らないんだ。けれどもリズムに乗せて適当に体を揺らすとひたすら楽しい。だって「アイドンケア」だから。生バンドがバチバチに決まっている。
ドラムロールからスポットライトが客席のMCUを照らすと、11曲目の「Rocket Queen feat. MCU(マーチングバンドver.)」が始まる。ライブでは必ずといっていいほど披露される、たくさんの人に届くTEAM SHACHIの最も優しい上げ曲だ。客席からさりげなく緑色のパーカーをアピールしつつ、ステージに向かうMCUカッコよすぎる。
この曲は僕がTEAM SHACHIを知るきっかけになった曲。初めてMVを見たときは、出演者のどこまでがTEAM SHACHIかわからなかった。後で考えるとその感覚こそTEAMというコンセプトが作品に体現されたということだと感じた。長岡中越高校の生徒が映像で参加しているのを見てそんなことを思い出した。
やや落ち着いた四つ目のブロック
「Rocket Queen feat. MCU」が終わるとMCUを交えたMCをはさむ。11曲が終わったところで「始まりました〜。」というが「もう11曲やっとるよ!」とツッコミを入れたくなる。MCの途中で坂本遥奈がステージを離れソロ曲の準備に入る。
12曲目は坂本遥奈のソロ曲「Bunny」。私服風衣装に、鏡台やソファを使用したパフォーマンス。最後のウィンクと直後の顎をクイっとあげる仕草がプロ。
「Bunny」はサビで坂本遥奈が普段担当することの少ない高音にチャレンジしていたのが印象的だった。グループでは低音やラップを担当することが多く、高音は咲良菜緒や大黒柚姫が担うことが多い。パシフィコ公演に向けてのドキュメンタリーの中では、高音が苦しそうに聞こえるということが話題になっていた。
実際、僕がTEAM SHACHIを聴き始めた頃 - 2020年の夏から秋にかけて- は坂本遥奈の高音にやや苦しそうな印象を持つこともあった。しかし、2021年の2月以降、ライブ会場ではそのような印象を持つことはほとんどなかった。
高音パートについての話題をあえてドキュメンタリーに収録し、高音が目立つ曲を作るくらいだから、高音がバチッと歌えることをソロ曲で証明したかったのではないか。そんな心意気を感じた。
「Bunny」が終わると雨の映像が映される。会場の多くは「雨天決行」を期待しただろう。もちろん僕もその一人だ。しかし期待は裏切られ始まった13曲目は咲良菜緒のソロ曲「One-Way-LOVE…?」だった。キラキラしたテクノポップにエフェクトの効いた歌声が響く。傘を使用したパフォーマンスも新鮮だ。
(率直な感想を書けば、もちろん今回のソロ曲も良かったのだが、当初言及されていたピアノロック方面の曲を聴きたいという気持ちもある。)
14曲目は「JIBUNGOTO」だ。イントロのブラスからワクワクする。音数の少ないメロディからサビのラウドなサウンドへの展開が気持ち良い。2020年12月に開催予定だった豊洲PIT公演が延期したことにより実現しなかったブラス民とバンド民が合わさった「JIBUNGOTO」の完全体だ。
ゆったりしたテンポのイントロの15曲目は「HONEY」。この曲の個人的に最も好きなところは咲良菜緒の歌い出しだ。後の「HORIZON」のサビにも通じることだが、直線的なヴォーカルがカツーンと入ってきて最高に気持ち良い。
16曲目は「colors」。改名前の「colors」を生で見たことはないが、そんな僕でも階段でのパフォーマンスにはグッときた。昔からのファンの方は尚更だろう。振り付けや光の演出によって会場に「チームしゃちほこ」の記憶が呼び起こされた。
ダンスとともに舞う光がスクリーンに集まると17曲目のタイトル「まってるね」が映し出された。
「まってるね」は90年代を感じさせるサウンドに、2021年3月にフルマラソンを完走した経験をもとに自ら作詞した歌詞がのる秋本帆華のソロ曲だ。パシフィコ横浜公演へ向けての取り組みであるビギナーズライブの告知を成立させるために、グループを背負ってフルマラソンに挑んだ日を思い出すと涙せざるを得ない。
ゴール会場で待っているメンバーへ向けて語った「まっててね」そして「まってるね」という歌詞は、そのまま武道館、そしてその先へ向かうTEAM SHACHIからタフ民への「まっててね」それに答える「まってるね」と重なる。ソロ曲でなおセンターの務めを果たすことを忘れない秋本帆華。
これぞTEAM SHACHIの上げパート、五つ目のブロック
しっとりとした雰囲気からキラキラしたイントロが鳴る。18曲目は「パレードは夜空を翔ける」だ。秋本帆華がソロ曲の余韻を保ちながら歌い始めると、各メンバーにバトンが渡されていき、イントロが終わると疾走感の強いバンドサウンドへと変貌する。しっとりした雰囲気からナチュラルにアゲパートへ接続するにはこれしかない。最高のセトリだ。
このあたりから、ツインギターの本領が発揮されていく。1番の「ザザザザザザザザ」というギターに加え、2番ではアルペジオのようギターリフが加わって爽やかな疾走感がさらに増す。(この日限りのアレンジかと思ったが後で音源を聴いてみると実は音源通りだった。)パフォーマンスも人数が多く非常にステージ映えする。
原曲(というか元ネタといったらよいか)とは異なる素晴らしいパフォーマンスだった。Welcome to the TEAM SHACHI Parade!!!
「パレードは夜空を翔ける」が終わるとメンバーは退場しステージにはバンド民のみが残る。やや不穏な雰囲気のギターリフが始まるとTatsuyaがクラップを煽り、暴れるドラムソロへ。続いてMIYAのベースが唸る。スラップも披露してくれた。さらにMasaとヨティのギターが呼応しながら奏でられる。最後は全員でセッション。最高だよ!バンド民カメラくれ。
バンドブリッジのフィニッシュと同時に2017年の和風衣装をリメイクした衣裳でメンバーが登場すると間髪入れず19曲目の「We are…」が始まる。もともとカッコ良い曲だった「We are…」に乾いたバスドラ、エッジィなギターが加わり、さらにカッコ良く進化してしまった!
「We are…」間奏のギターリフは直前に見せたものだったのかと早速答え合わせをさせてくれる細かい演出も嬉しい。バンドの演奏に呼応するように、坂本遥奈バンドとぴったり息のあったのラップで魅せてくれる。「Shout it out loud !」と咲良菜緒のシャウトが響き渡る。
1曲目で新曲かつ上げ曲を披露したのに、さらにその上をいく興奮を与えてくれるTEAM SHACHIさん最高だ。今日一番アガったよ!
「We are…」が終わり印象的なギターリフが鳴ると始まるのは20曲目の「超 ULTRA SUPER MIRACLE VERY POWER BALL(通称パワボ)」だ。坂本遥奈が「パシフィコ、こっからもっともっとはちゃめちゃにしていくぞ!頭触れ!」と叫び会場を煽る。直後にはヘドバンをしながら「ウォイ!ウォイ!」と煽る。ひとつひとつの言葉のリズムが演奏と見事に合っていて気持ちいい。煽りに合わせて頭を振っていたらあっという間に終わってしまった。
照明が減りオレンジ色の光が見えると21曲目「AWAKE」のイントロがなる。坂本遥奈がまたもや「ウォイ!ウォイ!パシフィコ!」と煽る。攻撃力が高すぎだ。この曲もまた、2020年12月に開催予定だった豊洲PIT公演の延期により実現しなかった完全態のパフォーマンス。TEAM SHACHIの掲げるラウドポップ、そしてロックバンド的ではありながら、より広い射程のパフォーマンスを目指すTEAM SHACHIの全てが詰まった渾身の一曲だ。
儀式としての「STRAT」
「AWAKE」が終わりメンバーが後ろを向くと、徐々にギターのイントロが聞こえてくる。22曲目は「START」だ!咲良菜緒が「パシフィコー!まだまだこんなもんじゃないよねー!はちゃめちゃになろうぜ!」と、大黒柚姫が「拳あげろ!」と煽る。
後で聞いた話では、今回の「START」はフリを入れずに歌だけで聴かせるということに挑戦していたらしい。正直、序盤から曲に没入しすぎていて、会場にいた時はフリがどうとか全く気づかず、ただ拳を振っていた「START」はストレートなロックソングではあるけれど、歌詞を聴かせる曲でもある。ロックの皮を被ったバラードだ。
「START」もまた、ツインギターの威力が発揮されていた。1番Bメロの「ソラシドレファッソ」というギターリフ。2番Aメロの「シシシシシシシシシシシシシラソファ、ソソソソソソソソソソソソソソファレド、レレレレレレレレドーレーファシシシシシシシシシシシシシシシシ」とギターがよく聞こえる。(これもまた会場で聴いた時はアレンジだと思っていたが、後で音源を聞き返してみると原曲通りだった。)
そして、間奏では咲良菜緒の「みんな届けて!」の声を合図にメンバーがステージの階段前に集まって「ヴォイ!ヴォイ!」と叫ぶと、観客は呼応して拳を振り、心の中で叫ぶ。当然聴こえるはずのない観客の声が、この瞬間は確かに聞こえる。熱気が会場を包み一つになる。
そして、6色の光が輝く中(後で配信で確認すると5色だったのだけれども、ライブ中の僕の目には6色に見えたのでそのまま6色と書く)、咲良菜緒が「あの日の別れあの日の悔しさ 乗り越えてここにいる」と歌い上げる。特に<悔しさ>の一言は綺麗な歌唱を志向したものではなく、これまでの悔しさをぶつけるような、魂の叫びのような声だった。
この時、僕が感じたことは言葉を選ばずに言うと「供養」だった。もちろんこの言葉にネガティブな意味はない。ポジティブな「供養」だ。「チームしゃちほこ」時代、そして「TEAM SHACHI」に改名してからのあらゆるものに対して敬意と祈りを捧げ、それらを引き継いで先に進んでいくための「供養」。「colors」を披露した光る階段のセットは祭壇、「ヴォイ!ヴォイ!」という叫びは祈りの言葉だった。
「START」は成功も失敗も出会いも別れも全てを継承し、どこまでも強くなれる、無敵の曲なのだ。
「START」が終わると間髪入れず23曲目の「DREAMER」が始まる。秋本帆華の「いくよー!」がいつもより高らかに響く。「START」と同様に「DREAMER」もまた時が経てば経つほど強くなる曲だ。
「どんなときもこの瞬間は二度とない」「燃え尽きるまでこのままで」という歌詞の通り、この瞬間この場所を全力で楽しむ。
ちなみに「DREAMER」の冒頭で「これが最後の曲になります。」とは言わなかったことで、次が「OVER THE HORIZON」要素のある新曲だいうことへの期待感を密かに強めていた。
新曲「HORIZON」
特報でアニメ「ドールズフロントライン」のタイアップが発表されるとミリタリー風の新衣装に身を包んだメンバーが登場し24曲目の「HORIZON」が始まった。音数の少ない前奏から壮大な物語の始まる雰囲気へ展開していく。曲の雰囲気は違うが「JIBUNGOTO」や「MAMA」を経て得たものを活かしつつ、アニメの世界観に合わせてアップグレードした歌唱を魅せるための曲のようにも感じた。
各メンバーの特性を活かしたディレクションがなされており、咲良菜緒と坂本遥奈の低音の入り、大黒柚姫のBメロ、秋本帆華のセリフ、咲良菜緒と大黒柚姫のサビ、坂本遥奈のラップとそれぞれのパートが綺麗にハマっている。
特に、咲良菜緒のサビの歌声には痺れた。咲良菜緒の直線的でよく通る強い声は、メロディの冒頭から高音が必要なパートで本領を発揮する。「HORIZON」のサビや先にも述べた「HONEY」の歌い出しがそうだ。
アンコール
アンコールでは、カラーの衣装に着替えた上で、パシフィコ横浜公演のTシャツを着たメンバーが登場した。
告知を終えると、秋本帆華が「こっからもはちゃめちゃしていく元気ありますか〜?もっともっといけんでしょ。いけんのか〜?」と明るく楽しく煽る。この人体力ありすぎでしょ。
25曲目は「乙女受験戦争」。生で聴くのは2回目だが、バンドセットとなるとまた新鮮な響きだ。先へ進むにつれて盛り上がりが増していく尻上がりの曲。落ちサビ前のRemi民のトランペットソロ最高だった!
多幸感のあるギターリフとともに始まるのは26曲目は「エンジョイ人生」だ。初期の人気曲だが、もともと個人的には特に好きな曲ではなかった。しかし、なぜかわからないけれどアンコールで披露された「エンジョイ人生」ははちゃめちゃに楽しかった。これでもかとたくさんの要素を詰め込んだライブの最後はなんて幸福な終わり方なんだろうと思った。
こんなふうにライブで聴いたとき、その時の状況や感情次第で曲の受け取り方が変わり、好きでなかった曲が好きになる。これもまたライブの醍醐味だ。
メンバーごとのMC
最後の曲の前に各メンバーから一言ずつパシフィコ公演に対する想いが述べられた。
坂本遥奈からは、パシフィコ公演に向けては「超ポジティブグループを謳う」TEAM SHACHIとはいえ、実は不安があり、強がってきた部分があるということが語られた。
「超ポジティブ人間なんだけど、その中でも不安みたいなのはあって。」「いろんなことを乗り越えてきたメンバーなので、みんな強いんだけど、やっぱ強がってる部分もどこかある。」
僕の知る限り坂本遥奈はステージ上で演者としてきちんと振る舞うことに最もこだわりのある人物だ。2013年に咲良菜緒が「6人で」と言ったときも、2018年にメンバーの卒業が発表された次の日も、2021年に秋本帆華がフルマラソン完走を成し遂げたときも、常に涙を堪え、明るく振る舞い、場をまとめようとしてくれていた。
そんな坂本遥奈がパシフィコ公演までの道のりを思い出して、涙を浮かべながら、少し遠回しに自身の弱い部分を見せている。そんな姿を見てこちらが頬を濡らさないわけがなかった。他のメンバーが「今はハルの時間だから大丈夫。」と声をかけていたのもチームとしてのあたたかさを感じた。
咲良菜緒からは最初に改名してから3年間の悔やしさが語られた。
「3年やってみて本当に悔しくて、思ったようにできたことがなかった。私たちの3年ってこんななずじゃなかったのに。」
「ここを成功させるっていうのが悔しさを乗りこえる何か。」
この言葉を聞いてから、配信で改めてSTARTの落ちサビを聴いてみた。「悔しさ」という言葉にどれだけのものが込められていたのか、僕には到底推し量ることができない。
その後「ずっと、こういうライブがやりたかった。」と言っていた通り、ライブ全体を通じて咲良菜緒の表情は自然体の清々しい笑顔で溢れていたように思う。
大黒柚姫はパシフィコ公演の大成功を宣言した。
「シャチは自分が思っていたよりすごいグループだったんだと思いました。」
「まさか歌であんな空間を作れるなんて思ってなかった。」
こんなふうにライブの後に自画自賛しているTEAM SHACHIは見ていてとても気持ちが良い。
大黒柚姫らしさも忘れない。「私もメンバーの一員だという気持ちで生きていってください。」という大変重い言葉も残した。
最後のMCはいつも秋本帆華が務める。自身の魅力を発揮しつつ、センターとしての役割もこなす素晴らしいMCだった。
このMCを聞いて一つ思うことがあった。
僕がTEAM SHACHIのライブを見始めた2021年2月以降、MCでの秋本帆華はセンターとしてグループにとって大切な言葉をグループを代表してずっと伝え続けてきた。2月の豊洲PITでの挨拶も感動的だった
しかし、なんとなく秋本帆華が本来持っているものが影に潜んでいるんじゃないかと感じる部分もあった。
それを確信したのはDINERシャチで物販紹介をする姿を見たときだ。自由に言葉を発し、会場を支配しながら楽しい雰囲気をつくる。あーこれは秋本さんの本来の姿で知らなかった魅力だ!と思った。
今回のパシフィコ横浜公演はもともと、2020年12月のライブで発表されるはずだった。それが、自身のコロナウィルス感染の影響によって2021年2月に延期されることになった。大きな覚悟でパシフィコ横浜にチャレンジするTEAM SHACHIにとってこの4ヶ月は大きい。もしパシフィコ横浜公演が成功しなかったら「この4ヶ月のせいで」と悔やむことになっていたかもしれない。そう考えると、発表からパシフィコ横浜公演までの期間に秋本帆華個人にかかったプレッシャーは相当なものだったのではないだろうか。
「大きいステージに立ちたい。今十分幸せなんだけどみんなが私たちを欲張りにさせてんの。言霊ってあると思うから。私たちが皆さんを武道館につれて行きます。」
この言葉を聞いたとき僕は、リミッターのようなものが取れたんだなと思った。2020年の12月以来、いやもしかしたら2014年以来、秋本帆華についていたリミッターが、パシフィコ横浜でのライブパフォーマンスを経ることで。
ダブルアンコールのToday
ブラスから始まるToday。この曲で本当に終わりだ。これまで26曲のタフなパフォーマンスをしてきたが、最後までタフな歌声を聴かせてくれる。ミラーボールの光がライブの成功を祝ってキラキラ輝いている。
率直にいうと、コーラス音源の音量はもう少し大きくしたほうがシンガロング感がでるのかなとも思った。けれどもそれは声が出せるようになってからでもいいのかもしれない。おそらく、会場で声を出してのシンガロングをしたら観客から出る声はあんなもんじゃあるまい。メンバーの声が聞こえないくらいありったけの声で「Hey Hey Say Yeah !」してやる。
ライブにおける生演奏のあるなし
冒頭で述べたように、僕の初めてのTEAM SHACHIのライブは2021年2月の豊洲PIT、全編バンド編成・コールなしだった。「アイドル」のライブに行ったのも初めてだったが、むしろ「ロックバンド」のようなパフォーマンスだと感じた。
もともとロック好きだったからこそ、「ロックバンド」的なTEAM SHACHIのパフォーマンスに魅了されたわけだが、同時にバンド編成でないライブでも楽しめるのだろうかという疑念もあった。パシフィコ横浜公演のタイトルが「はちゃめちゃ」キービジュアルが「チームしゃちほこ回帰」を思わせるカラー衣装だったのもそれを加速した。
実際、5月に行われたゼップ羽田のライブは楽しかった一方で、ちょっとモヤモヤした思いもあった。だから、自分を納得させるために、この路線はTEAM SHACHIから離れていった人を取り戻すための戦略だという解釈をした。
しかし、東名阪でオトすツアーでの新木場公演、さらにダイナーシャチを通じてその心配は杞憂に終わった。それぞれの公演では、「TEAM SHACHI」の良いところを活かしつつ、「チームしゃちほこ」時代のレガシーも活かしていく、そんな構成だった。特にダイナーシャチ(2日目)はブラス民も不在の生演奏ゼロのライブだったにも関わらずめちゃくちゃ楽しかった。
これはライブの規模、編成に応じてセットリストや演出を調整し最適解を出すTEAM SHACHIのメンバー、スタッフの努力と経験の賜物なのだと思う。
このように僕の場合はバンド民がいないライブでも楽しむことができた。(いや、バンド民いるとテンション爆上がりするけれども。)じゃあTEAM SHACHIのライブの音楽的な面以外での楽しさってなんだ?
体育祭/運動会的な楽しさ
自分がTEAM SHACHIのライブを言語化するとしたら。まず浮かぶのが「体育祭(運動会)みたいな楽しさ」ということだ。
時代錯誤的だと思う人もいるかもしれない。でもそれなりに多くの人が「体育祭(運動会)」(あるいは文化祭や部活など)のようなチームやグループで一体になって何かをつくり上げる経験を、ちょっとくらい楽しいと思ったことがあるのではないか。
TEAM SHACHIのライブはそんな爽やかな感覚を思い出させてくれる。
武道館、そしてその先へ…。
パシフィコ横浜公演のチケットは公演日の2週間ほど前にSOLD OUTした。とはいえ、今回はパシフィコ横浜国立大ホールのフルキャパ5000の半分ほどの動員だ。8000~10000がフルキャパと言われている武道館を埋めるとなると今回の3倍以上の動員が求められる。
そのために、より普遍的なTEAM SHACHIのライブの楽しさを言語化したくて前章を書いてみた。いつかもっと掘り下げることができたらと思う。
さて、このブログもここで筆を置きたい。今回もまた勝手な感想を長々と述べてしまった。ここまでお付き合い頂いてありがとうございます。
最後に、パシフィコ横浜公演のアンコールラストの「エンジョイ人生」の歌詞の落ちサビの一節を紹介する。
僕はこれをTEAM SHACHIはまだまだこれからも続いていくということを、歌に込めてファンに伝えようとしてくれたのではないかと受け取った。
漫画「ドラゴンボール」の17巻で亀仙人が「もうちっとだけ続くんじゃ」というと「ドラゴンボール」は42巻まで続いた。同じようにTEAM SHACHIも長く続いてくれたら嬉しい。