2021年邦画Top10

あけましておめでとうございます。
本日記念すべき2回目のブログになりますパチパチ

2021年を振り返ると、多くの良い邦画にめぐり合ったなあという1年でした。
どの作品も素敵でしたが、個人的に面白かった10作品を紹介していきたいと思います。


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10位「草の響き」
心を病んで仕事を辞めた男が函館に帰郷して毎日ひたすらランニングをするストーリー。
これだけだと退屈そうだけど、主人公の周りのキャラクターが良い。
特に、主人公の和雄(東出昌大)を思いやる妻・純子(奈緒)が凄い。
劇中で和雄が何度も病んで危うい行動を繰り返すのに、純子は文句ひとつ言わない。
夫を献身的に支え続ける純子が人間として強すぎて、違和感すら抱いてしまう。
そんな純子の本音がクライマックスで垣間見えるんだけど、素晴らしいから見てほしい。
原作は「きみの鳥はうたえる」「そこのみにて光輝く」の佐藤泰士。


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9位「ベイビーわるきゅーれ」
可愛い女の子がキレッキレのアクションやってるだけでも観たくなるよね!
社会不適合な女子高校生殺し屋2人組が社会に馴染もうと奮闘するゆるいコメディー。
ラバーガール演じる店長とか冗談が通じなさすぎるヤクザ組長とか、変わったキャラクターが面白すぎてめっちゃ笑った。
一方で、現役スタントウーマンの伊澤彩織さんが演じるまひろのアクションが本格的すぎて惚れる。アクション俳優の三元雅芸さん演じる最強の男との対決シーンとか格好良すぎるんだよなあ。


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8位「偶然と想像」
「寝ても覚めても」「ハッピーアワー」の濱口竜介監督の「偶然」をテーマに描いた物語の短編集。
親友同士の恋バナから物語が発展する「魔法(よりもっと不確か)」、教授にハニートラップを仕掛けようとする「扉は開けたままで」、40代女性の再会を描いた「もう一度」。
3編ともに上質な脚本で面白い。
濱口監督の世界観が詰まっていて、なんて豪華な3本建てなんだろう。
どの作品も他者にとても寛容で寄り添っていることが感じられるのが素敵だった。


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7位「空白」
娘を失った父親が事故の原因となった店長をはじめとする関係者を追い詰めていくヒューマンサスペンス。「ヒメアノール」の吉田恵輔監督作品。
まず、古田新太さん演じる父親・添田充の怪演がすごい。
娘が亡くなってからの怒りのパワーが凄くて、観ているこっちもヒリヒリする。
添田は娘が生きている間は無関心だったし粗暴で理不尽なキャラクターではあるんだけども、不器用にしか生きられないだけで実は人間的で良い面もあると描かれている点が良かった。
この映画の好きなところは、添田だけではなく店長の青柳(松坂桃李)や草加部(寺島しのぶ)等のキャラクターの善性も悪性(暴力性)もしっかりと描かれているところ。
良い人間であろうとするキャラクターが実は嘘をついているかもと匂わせていてリアル。
事件を契機として、誰もが弱さをみせるなか、一人だけそれでも強く気高くあろうとする人物が登場する。
ここから改めて人間の可能性を信じてみようと救いになっていた。


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6位「花束みたいな恋をした」
2021年、自分の周辺も含めてめちゃくちゃ話題になった。
恋愛映画だけど、観ている人を抉る破壊力がすごい。
公開当時、この映画を観て別れたカップルが続出したという話もうなずける。
「東京ラブストーリー」「カルテット」の坂元裕二さんの脚本ということで、刺さるシーンや台詞の数々。
20代のサブカル好きカップルの物語だが、よくここまで詳細に描けたなと驚くくらいリアル。坂元先生は50歳超えているのに……。
この作品が単なる恋愛映画で終わらないのは、主人公の麦も絹は実はこういう良くない一面もあるかもねと匂わせているところ。
甘酸っぱい恋愛映画を観たい人も楽しめるし、物語に肥えている層も楽しめるように描いている。
とにかく、多くのカップルにとっての歴史となり予言となり福音となるだろう作品。


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5位「かそけきサンカヨウ」
母親はいないけれども父親との満ち足りた生活。
高校生の陽(志田彩良)は母親代わりとして毎日夕食を作る。
最初の10分で陽が素敵な娘であること、父親想いであること(最愛の妻であるかのように見えてしまった)が伝わってくる。
だから、父親が再婚の意志を伝えて、新しい妻、そして義理の妹を迎えた際の少女の動揺がつらいんだよね。
でも、この映画の素晴らしいところは、家族やクラスメイト等の陽を取り巻く人々がみんな優しくて思いやりにあふれている。
新しい家族の可能性を感じさせてくれる作品。
そして、主演の志田彩良さんの表情の演技が素晴らしすぎて魅了されてしまった。


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4位「すばらしき世界」
社会では、適応するのに必要なずるさのほうが人物の善性より評価されてしまう。
元殺人犯の三上(役所広司)は短期で粗暴な面もあるが、不器用なだけで根は優しい男だ。
経歴と短気な性格から周りからなかなか受け入れてもらえない。
しかし、そんななかでも三上の良さを理解してくれる人々が少しずつ現れる。
劇中で三上は一貫して自分の正義を守り続ける。
そんな三上が選ぶ結末は、我々が生きている「すばらしき世界」というものを改めて問いてくる。
西川美和監督の作品は、わかりやすいんだけど本質的な社会の問題を抉ってくるから凄いと思う。


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3位「ドライブ・マイ・カー」
愛する人をどこまで信じ続けられますか。
村上春樹原作×濱口竜介監督×西島秀俊主演という豪華な組み合わせ。
ドライブに込められた意味、シェヘラザードの語る物語、チェーホフの「ワーニャおじさん」、家福(西島秀俊)の独特な演出方法、etc。
3時間の長尺なんだけど、様々な要素が詰め込まれているからお腹いっぱいになる。
自分自身も信頼できる友人を失って、それどころか友人自体のことをどこまで信頼できるか、自分自身に落胆していた時期でもあったから刺さった。
家福に対する高槻(岡田将生)、そしてみさき(三浦透子)の言葉は、自分自身に届いた。
日本アカデミー賞、米国アカデミー賞も見込める作品だと思っているので、受賞式が楽しみである。


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2位「あのこは貴族」
「みんなの憧れでつくられていく、幻の東京」
東京のお嬢様の華子(門脇麦)と地方上京者の美紀(水原希子)の2人を主人公に、東京―田舎、上流―下流、女性―男性というものを非常に丁寧に描いている。
女性監督の作品だからかはわからないけれど、ひとつひとつのシーンがとても美しい。
華子がタクシーから見つめる東京の景色とか、華子と幸一郎(高良健吾)が初めて出会うシーンとか、あげたらキリはないけれど、どのシーンも耽美的
登場人物のファッションもとてもお洒落。
華子と美紀が生きている世界は昔の日本らしく窮屈なんだけど、2人は新しい生き方を模索していて素敵だった。
新たな未来の可能性を期待させてくれるシスターフッド映画。
『ここは退屈迎えに来て』の山内マリ子原作の同名小説の映画化。
静かなんだけど、とても良い映画。


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1位「君は永遠にそいつらより若い」
 邦画史上こんなに魅力的な女性主人公たちはいただろうか。
高身長処女のホリガイさんとどこか闇が垣間見える猪乃木さんが好きだ。
「取っ散らかったことしか言えないやつなんですよ」が口癖のホリガイさんはどこまでも純粋でまっすぐ。
若者だからこその悩みや苦しみを抱えているんだけど、若者だからこそ純潔な心を抱いている。
2人のクライマックスのシーンは、演技も台詞もカメラワークも絶妙で心震えた。
結末は、別ジャンルだけどアニメの「少女革命ウテナ」を彷彿とさせて、尊いという感情しか出てこなかった。

最後に、好きな日常シーンを。
深夜ゲームに集中している猪乃木さんの横顔を見て、ホリガイさんが「ぷよぷよに親殺された人、みたいな顔してるよ」と言うと、2人で顔を見合わせて笑い出す。
映画を通して、本当の友達同士の日常のやり取りを見ているようで、面白おかしくて微笑ましくて、丁寧に作りこまれているんだなあと感じる。


他にも、「由宇子の天秤」とか「エッシャー通りの赤いポスト」とか「サマーフィルムにのって」とか、紹介したい作品は多かったけど、10作品ということで厳選したつもり。
それくらい2021年は素敵な作品が多かった。

昨年は様々な出来事があって、つらかったことも多かったけど、その度に自分と同じ悩みを抱えているんじゃないかと疑うくらい刺さる作品に出会って、時に示唆を与えてくれたり苦しみを共有してくれた。
邦画が一番の理解者だったといっても過言ではない。(こんなこというと、話を聞いてくれた友人たちに怒られてしまうけど。いつもありがとうございます。)

まあ、何はともあれ、今年もよろしくお願いいたします。

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