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「Respect!」#4 CHA YUAN/Atelier ICHIMARU 三浦朋世

刺繍ブランドRyme et Flow.の松澤葉子です。
Noteでのコラムの不定期連載として、様々なジャンルで活躍されているクリエイターとの対談・インタビューを載せていきます。

第4回は、紅茶ブランド「CHA YUAN」の日本総輸入販売元、Atelier ICHIMARUの代表・三浦朋世さんです。
CHA YUANの魅力、店舗や経営についての興味深い話を伺いました。


「CHA YUAN(チャユアン)」について

フランス・リヨンの紅茶

YM:いつもCHA YUANのお茶を美味しく頂いております。まずCHA YUANについて教えていただけますか。

三浦朋世:フランスのリヨンに本店を構えるティーメゾンで、Madame Be’caudという女性が34年前に立ち上げました。1990年創立です。

YM:立ち上げからもう長いんですね。

三浦:でもイギリスの王室御用達のティーメーカーなどは、100年、200年と続いているところも多いので、それに比べるとCHAYUANは新しいブランドと言えます。
フランス紅茶はイギリスの紅茶より歴史は浅いのですが、紅茶でフレーバーを楽しむ趣向が強く、マリアージュフレールや、クスミテなど、皆さんに馴染みのあるブランドも多いです。

YM:CHA YUANならではの特徴はありますか。

三浦:お茶につけられた名前が詩的、ポエティックなものが多いですね。
また、フレーバーが単一ではなく、沢山の香りを多層的に重ねているのも特徴的です。

例えば一番人気の「コンポジション・ドゥ・シエル(空の構成)」というフレーバーは、紅茶をベースに、キャラメルとバラ、オレンジフラワー、すみれ、、、と一言ではその香り全体を表現する事が難しいのですが、全体的にそういうフレーバーが多いです。

特に定番の人気フレーバーは、Madame Be’caudが考案したものが多く、女性がブレンドしたということもあるのか、繊細な日本人の味覚にもマッチしているのかと思います。

コンポジション・ドゥ・シエル
花びらが美しく、見た目にも愉しめます

CHA YUANが日本へ

YM:そのCHA YUANが初めて日本に入ってきたのが宮城県仙台市だったわけですが、取り扱いを始めたきっかけは何でしたか。

三浦:元々私が勤めていたカフェのオーナーである阿部さんが、フランスのリヨンに行ったときに、CHA YUAN本店のサロン・ド・テを見つけて感動し、私がこれを日本でやります!と契約をしてきました。そこから販売をしながら、仙台市泉区にある自分のカフェでもお茶を出す形で始まりました。
阿部さんはご本人も人脈のお友達も素敵な方々で、お友達のお店に取り扱いをしてもらったり、少しずつ日本の中で広がっていきました。

YM:きっかけも広がりも人との繋がりからですね。

フランス・リヨンのCHA YUAN本店

店舗販売と輸入業「Atelier ICHIMARU」

YM:今現在は仙台にCHA YUANの販売店舗、そして法人事業の「Atelier ICHIMARU」を構えていらっしゃいますが、その経緯を教えてください。

三浦:阿部さんのカフェを7,8年前に閉じられることが決まって、でもお茶は卸先もあるし引き継ぐ人が必要だから、やらない?って誘われて。で、CHA YUANの日本の販売の仕事を引き継ぐことになりました。
最初は個人事業主、自営業という形でやっていましたが、だんだんお得意先様が増えてきて、法人化するときに「Atelier ICHIMARU(アトリエイチマル)」という名前にしました。
個人事業主3年、法人化から3年で今は計6年経ったところです。
イチマルは私の実家の屋号なんですよ。祖父から、今は父が継いでいるんですが、実家の事業は父の代で終わるんです。私は長女で、この仕事を継げなかったことに少し引け目があって。じゃあ名前だけでも、ということでアトリエイチマルにしました。

YM:イチとマル、縁起がいいですし記号にもしやすいですね。

仙台市青葉区の実店舗
素敵な内装に茶缶が並びます

地方都市・リヨンと仙台

YM:日本に唯一の代理店って東京や都心にあるイメージですが、ではなく地方都市の仙台。本店がフランスの首都パリではなくリヨンであることとリンクしている気がします。

三浦:ほんとにすごくそれは言われていて。地方で輸入業をしている人はそんなに多くないし、手続きの大変さなどはあるのですが。

YM:地方のメリットはありますか。

三浦:家賃が安い(笑)それに、阿部さんの元で一緒に働いていたカフェスタッフの仲間たちが、仕事を手伝ってくれていて、それはすごく助かっています。

YM:そのうえ女性の経営者、興味を持たれる方も多いのでは。

三浦:そう言っていただけることも多いのですが、私が事業を引き継いだ時点では、割と気軽に、週に数日だけ稼働して、既存の取引先の注文分と、WEBショップの発送をすれば良いかなと思って始めたもので…それが少しずつ、取引先やWEBの注文が増えて、その後実店舗を持つことになり、数年後には法人化して。
気負いなく始めた趣味の延長の様な仕事が、気づいたら今こうなった。最初から強いモチベーションも無かったので、それは本当に恵まれてるというか、ラッキーだったなって思います。

店舗を始めたきっかけ

YM:最初は卸とWeb販売のみだったところに、実店舗をはじめたきっかけはありますか。

三浦:店舗がないと、社会的な信頼の面で難しいことが結構多くて。最初の頃は法人化していなかったので、自営業でしかも食品。店舗があったほうが大きい企業や百貨店への取引もスムーズで、Webショップでも信用して購入していただいたりっていう効果は実感として有ります。

YM:いわゆるお店を始めたいっていう動機は、可愛い内装、お客さんとの楽しい交流などを求めてというイメージをしがちですが、それよりも実務的な理由なんですね。

三浦:女性で起業を目指す方には『カフェをやりたい』『サロンをやりたい』お店という「場」をもつ事自体に夢がある方も多いのかなと思うけど、私はあまりそういう事は考えたことはなくて、実店舗がある事によって、顧客様やお取引様から安心とか信用を得られるという方に大きなメリットを感じました。

コロナ渦とWebショップ

三浦:先に卸やWebショップを何年かやってから、次の段階で店舗持ったのが良かったと思うことがあって。それは、物件を借りて、内装が完成して、店舗をスタートしてすぐ、コロナで休業しなければいけなくなったんです。

YM:店舗開店はいつだったんですか。

三浦:ちょうどコロナの始まり、ダイヤモンドプリンセス号上陸のタイミングです(笑)オープン後すぐ、色々と決まっていた仕事も全部飛んでしまって。でもその時にはすでに、卸売りとWebショップがあったから、何とかそちらで家賃を払いつつ稼働できたんです。

YM:やはりコロナ以降で、Webショップの在り方は変わりましたか。

三浦:全然変わったと思います。仙台がベースだから、全国への発送時の送料を負担していただくのがハードルだったのですが、コロナ以降は皆さんWebで購入することに慣れて、送料やクレジットカード決済に抵抗があった方々も、躊躇なくショッピングを楽しんでくださるようになりました。

お花やお菓子、雑貨とあわせた
季節のイベントや限定セットなど
webショップからでも楽しくお買い物ができます

お茶の仕事がつなぐご縁

パッケージデザインとカリグラフィー

YM:日本のCHA YUANの特徴だと思うのが、パッケージがお洒落で、置いてあっても雑貨として素敵なデザインであるところ。それはやはり三浦さんや日本のスタッフの努力の賜物だと思っているんですが。

三浦:そうなんです、リヨンの本店はお茶専門店、シノワズリーな雰囲気ですが、私が提案したいのはもっと、フランスの余裕のある、ゆったりしたお茶時間。そのためにフランスとは違う、日本に向けたブランディングをしています。
お茶は嗜好品だから、まず手に取ってもらうには素敵なパッケージで、どういうお茶時間の提案かを表現したいと思っています。見た目から入っても、飲んでもらえれば美味しいという自負があるので、そこからリピートしてもらえたらと。パッケージが可愛くないと目にも留めてもらえない、それは残念だと思って。

パッケージや広告を素敵にするこだわり
デザイナーや作家と打ち合わせて作られているそうです

YM:パッケージの大切さは、三浦さん自身が今までアパレルや素敵なカフェで仕事をされてきた経験から感じられたものなのでしょうか。

三浦:そうですね、今までもそれは感じていたとは思いますが、CHA YUANのデザインが全部自分の趣味や好きなものかというと、それはちょっと違って。私はもう少しシンプルなものが好きでも、CHA YUANの世界はこっちだよね、と客観視していて。

YM:自分の好きなものだと、良くも悪くも熱が入りますもんね。

三浦:ブランドの世界観と自分の好きな物との間に少し距離がある事で、逆に冷静にブレずにやれるのではないかと思っています。

YM:毎回ラベルをカリグラフィー、手書きされているのも一つの表現でしょうか。

三浦:そうです、CHA YUANは大きいブランドじゃないから、どこかにクラフト感を残したい、そうなると手作業の部分があると面白いかなと。
印刷にしてしまえば簡単で均一、みんなができるんですが、そこを敢えて手書きにする。
日々のゆとりの時間とか、ちょっと文化的な表現、ヨーロッパにもこういう「西洋書道」という文化があるんですよと、触れてもらえる機会があれば、より世界観に奥行きが出る。
そういうものを大切にしたいと思っていて、これからどんなにお取引量が増えてもそこは一貫して、頑固に守っていきたいと思っています。

茶袋のラベルをひとつひとつ手書きにするこだわり

楽しいこと、大変なこと

YM:仕事をしていて大変だと思うことはありますか。

三浦:スタッフを雇っているので、そのスタッフに対する責任。ちゃんと毎月お給料を払って、家賃もしっかり払わないとという責任があるので、そのために先々の企画をしたりなど常に考えるようになりました。

YM:でも、スタッフに助けられることもあったりと。

三浦:そうなんですよね、今となってはもう一人でできる仕事の量じゃないから、みんなのお陰でやれている感じ。気持ち的にも支えが大きいですね。

人との繋がり、お茶の役割

三浦:結局、仕事をして何がやりたいんだろうって思ったときに、人と繋がりたくてやってるんだと思うことが多くて。もしただ普通の主婦だったら知り合えない人たちが、CHA YUANを通して声をかけてくれて、興味を持ってくれたり、一緒に働きたいと言ってくれる人もいて、それは仕事をしているメリットだと思います。

YM:お茶はとくに、そういう役目が大きいと感じます。私も刺繍教室で毎回お茶をお出ししているのは、刺繍で難しい課題に取り組んだ後でも、美味しいお茶を飲めば、ほっと一息つく。良い香りでその場の空気も和むし、大きな役割があると思っています。

三浦:お茶って本来、無くても全然生きていける。でも、あったらすごくいいもの。
それはやっぱり余裕の時間や楽しみの提案であって、生活必需品を扱っている訳じゃないところの面白さだと思います。それが常に課題でもありますけどね。

今までとこれから

YM:今後の目標や、これからこうありたいという事はありますか。

三浦:今までもあまり『こうなりたい』と志して今ここにいるわけでもなくて。

YM:(笑)

三浦:ただ頂いた縁を繋げていったらここに来たという感じなので。
もちろんもっと沢山の人にCHA YUANの世界観を知って、美味しいお茶を楽しんでもらいたい、とは思うけど具体的に『年商いくらが目標』とか『店舗を増やす』とかはあまり考えていなくて。
もし機会があれば、もちろんそれもいいだろうし、という感じで。
これからも「ご縁」を大切にしていけたらと思います。

YM:いいお話が聞けて良かったです、ありがとうございました!

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