アートを通した地域活性化活動
前回の、ARTivismというアートを通した活動②では、ストリートアートを通して環境問題を解決するための活動を行なっている団体であるPangeaSeed Founadtionを例に、ARTivismに関して書いた。
今回は、ストリートアートによる地域活性化の可能性。イタリアでの事例を中心に書いていく。
イタリアの人口400人の町に7000人以上の人々が訪れる
都市部から離れた場所での過疎化が進んでいるのは、日本に限らず他国でも同じだ。仕事を探し都市部に出て行く若者、それにともない町は老いていき、人々に置いていかれる。
イタリアのチヴィタカンポマラーノ(Civitacampomarano)という町も過疎化が進んでいる町のひとつだ。
チヴィタカンポマラーノはローマから東に車で3時間の場所に位置する。人口は約400人という、とても小さな町である。
こんな小さな村で行われたストリートアートのフェスティバルに、人口の約18倍近い7000人以上の人々が訪れた。
CVTà Street Festと名付けられたこのフェスティバルは4日間をかけて行われ、ストリートアートの他にダンスや音楽のイベントも行われた。
村の文化組織の会長であるYlenia Carelli氏がストリートアーティストであるAlice Pasquiniに「ストリートアートで村を盛り上げたい。」と言った事が発端だ。
前述したように、CVTà Street Festは4日間開催され、ライブペイントの他に、ライブ音楽なども行われ、それらを目的とした観光客が7,000人以上も訪れた。
関係者によれば、村の中にあるレストランやホテルは、開催期間に前年比で約1年分の利益を作ったとのこと。また、村には新たにアイスクリーム屋と精肉店ができあがった。
村の人口の約17倍にあたる人間が来たのはスゴイことだが、なぜ新たにアイスクリーム屋に精肉店ができあがったのだろうか?
これこそが、ストリートアートが地域活性化との相性の良さだと思っている。つまり、
ストリートアートはフェスティバルが終了しても残る
ということだ。単に音楽のイベントや、お祭りでは単発で終わってしまい、次のイベントが開催されるまでは人が来ない。しかし、ストリートアートは、その場所に残り、アーティストの手を離れその村のものになるのだ。
結果、CVTà Street Festが終了後も、期間中に完成した作品を見ようと旅行客が訪れるようになったのだ。
旅行客が訪れるために、新しくアイスクリーム屋と精肉店が出来上がった。これらのお店は村の外から来た人間によって作られた。つまり、人口が増えたのである。たった数人ではあるが、人口400人の村からすれば大きなことだ。
CVTà Street Festは今年で3回目を終え、村の立派な年間行事になっている。
このようなストリートアートフェスティバルは、日本の田舎でもできる取り組みなのではないかと考えている。
もちろん、村の中に大きな絵ができあがるわけだから、その村に住む人々とのコミュニケーションは必要だ。しかし、そこさえ解決ができれば、例えば、北海道には炭鉱で使っていた、いまは使われない建物や、廃校になった学校など多くある。これらを再利用するという目的でできる。
ただ、日本の行政というのはやはり、海外の行政に比べて硬く、こことの兼ね合いがうまくいかなければ事を進めるのは難しそうだ、というのがいま現在活動をしていての正直な意見だ。
既存である祭りなどと協力して、その一部のイベントとして進めるのがキーだと考えていて、その方向からのアプローチを現在は行なっている。
分散型ホテル: アルベルゴ・ディフーゾ
イタリアでは、ストリートアートの他にも地域活性化のために分散型のホテルである「アルベルゴ・ディフーゾ」なるものがある。ホテルとは、部屋、レストラン、受付などが1つの建物の中にあるものだが、アルベルゴ・ディフーゾでは、これらの機能が村の中に分散されている。
宿泊場所は村の空き部屋で、朝食はとあるカフェやレストランにてというように、まるでそこの村人であるかのような生活を体験できる仕組みなのだ。
アルベルゴ・ディフーゾも、地域活性化にあたってとてもおもしろい取り組みなので今後もう少し詳しく触れたいが、これに関しては、
って本がとても詳しい上に、海外での地域活性化に関することが載っていておもしろいのでぜひ。
現在の活動
現在、前回の記事で紹介したPangeaSeedと手を組み、日本でアートを通して環境問題を訴えるイベント、そして地域活性化のためのイベントを行う場所(地域や壁など)を探している最中です。ご興味のある団体、市町村の方々からのご連絡をお待ちしております。(ご連絡はこちらのフォームまたはコメントやツイッターからお願い致します。)
次回からは、ストリートアートのアーティストをご紹介していくのと同時に、世界中のイベントについてふれていきます。
イベント参加に当たって、移動費など含めて、ほぼ全て自腹で活動しています。今後の活動のためにもよろしければ、投げ銭お願い致します。
写真提供 - Yoshi